モンゴル出身の17歳の少女トゥルンフ・ムンフゾルさんが、女流タイトル棋戦の一つ女流王座戦の一次予選に登場し、5月11日に渡辺弥生初段と対戦した。
私は大学時代将棋部に所属し、卒業後は通信教育でチェスを学んだことがあった。将棋とチェスはルール上細かい違いはあるがそのルーツは一緒、ということもあり、日本では将棋とチェスの両方を楽しむ人が多い。将棋のプロにしてチェス界で活躍する棋士もいる。羽生九段などその最たる例だろう。 NHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治人工知能を探る』で羽生九段が天才科学者と呼ばれるデミス・ハサビス氏とチェス対戦をする場面を観た人も多いだろう。その羽生九段は1999年~2000年代中盤頃には積極的に海外の大会へ参加し、FIDE(国際チェス連盟)マスターを獲得していた。2014年には元世界チャンピオンガルリ・カスパロフ氏と対戦したこともあった。(写真:左ハサビス氏、右羽生九段)
この対局を見たのがきっかけでチェスに興味を持ち、僅か1年でチェス全日本快速選手権で優勝した将棋棋士が青嶋未来四段。1年間で選手権優勝と言う快挙に、将棋プロの天才振りが窺える。
逆にチェスを始めてから将棋に興味を持ったり、チェス界で活躍中にも拘わらず将棋を始めたという外国人もいる。
2017/9/2のブログに登場させた、ポーランドからの外国人女流棋士カロリーナ・ステチェンスカさんは漫画『NARUTO-ナルト』の登場人物が将棋を指し、取った駒を使えることに興味を抱いたのが切っ掛けで将棋にのめり込み、2012年日本にやってきた。大変な修行の後2017年2月に晴れて日本将棋連盟の女流棋士となったのだ。 さて、お待たせしました。これから書こうとするのが、モンゴル生まれの17歳の少女のこと。名前はトゥルムンフ・ムンフゾル。チェスではウーマンFIDEマスターの称号を持っている。その少女、父が読んでいたロシア語の本から将棋に興味を抱いた。彼女はインターネット将棋対戦サイト・81Dojoで行われた海外招待選手選抜大会で優勝し、たった一つ用意されていた女流王座戦参加の枠に滑り込んだ。(写真:右北尾まどか二段、左ムンフゾルさん)
私はその一戦をライブ中継で観戦していた。振り駒の結果先手となったトゥルムンフさんは積極的に攻めていき大乱戦となったが、渡辺初段の巧妙な受けの前に108手で投了。無念の敗退となった。
井出四段の解説「ムンフドルさんの工夫が凄かった。プロも感心する指し回しで、これはもしやと思わせましたが、最後には渡辺女流初段が勝ちきりプロの貫禄を見せました」。(写真:ムンフゾルさん投了の場面)
終了後にインタビューを受け、彼女は「将棋を覚えたのは12歳です。チェスと違って取った駒を使えるのが楽しいです。81Dojo(ここの4段)や本で学んでいます。来年も参加したいです。チェスではグランドマスター、将棋ではプロになりたいです」と語っていた。新星現るの観がする。
かって日本のお家芸と言われていた囲碁・相撲・柔道などで日本は後れを取ってしまった。将棋でも外国人が活躍する時代がやって来ないとは限らない。ステチェンスカさんやムンフドルさんの登場が初めの一歩となるか否か。こちらからも目が離せない。