12月5日(日)、劇団民藝の『十二月ー下宿屋「四丁目ハウス」ー』を観に、三越劇場へ出掛けました。劇団民藝は創立60周年記念を迎え、記念公演の掉尾を飾るにふさわしい舞台です。「十二月」は小山祐士の処女作で28年ぶりの再演。演出は高橋清祐。 新聞でこの公演を知ったとき、まず惹かれたのが出演者。奈良岡朋子・梅野泰靖・樫山文枝・日色ともゑの4名の名があがっていました。いずれも、かって新劇の、それも民藝の芝居を観に出掛けた頃の懐かしい名前だったからです。その中でも特に奈良岡朋子の舞台は是非見ておきたいと思い、慌てて予約の電話を入れました。
近年名優たちが次々と”世の中”という舞台から姿を消して行きました。緒形拳しかり、佐藤慶しかり、池内淳子またしかりです。更に遡れば宇野重吉・滝沢修などなど。後であの舞台を観ておけば良かったと無念の思いに駆られたこともしばしば。奈良岡さんには失礼ながら、同じ轍は踏みたくないの思いから、即電話予約をしたのですが・・・。殆ど満席で、辛うじて取れた5日(日)の席は、なんと2階の最後尾でした。
時は昭和5・6年。処は本郷。昭和初頭の大恐慌により、主人公九城間弓(梅野)は大会社を辞め、妻扶可子(奈良岡)とともに上京、本郷で学生相手の素人下宿屋「四丁目ハウス」を始めます。ところが、エリート官僚の弟九城次郎は財閥令嬢との縁談をまとめるために、兄夫婦に下宿屋廃業を迫ります。大学は出たけれど職のない扶可子の弟道樹や、橋梁工事の現場監督に追いやられる鞆浦、ストの先導者、道樹との仲が怪しい有閑マダム(樫山)などが、「四丁目ハウス」を舞台に、人間模様を展開していきます。
不況の色濃い時代背景が現代とダブります。幕切れの号外の声が、ひたひたと迫る戦争の足音、暗い時代へ向かう予兆を感じさせます・・・。(パンフレット表紙) しかし内容より奈良岡朋子です。劇場最後尾にも、ツヤのある声がはっきり届きます。元気溌剌とした役どころではありませんが、81歳とは思えないシャンとした姿勢が見て取れます。奈良岡朋子健在なりです!
パンフレットでは、聞き手木村隆との対談で「若い頃は1、2回読んだらぱっと覚えた台詞を今では10回、20回読まないと不安が残る」と語ります。芝居にかける情熱はいまだ枯れず。その役者根性は民藝の後輩達にしっかりと伝えられていると思えます。大滝秀治と共にに民藝の代表を務める彼女にとって、これが劇団公演出演100本目という記念碑でした。(写真:パンフレットより)
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