季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

むかし話

2015年06月15日 | 動物
ある所に男がおった。その男は音楽を生業にしておった。といってこれという仕事もなく、昼日中からあっちの店こっちの店を覗いては散歩と称しておった。

ある日、当然目的もないまま、ペットコーナーに立ち寄った。そこにはピーターラビットのモデルになったといわれるドアーフというウサギが多数並んでいるのだった。

男に買えるはずのない値が貼られていたが、ふと気づくと、子ウサギたちが並んでいる台の下に真っ黒な、もう子ウサギとは言えなくなったウサギが丸まっている。

店員に訊ねたところ、もう1年近く売れないのだという。性質は良いのに、ねぇクロちゃん、と話しかけるところをみると店ではクロちゃんと名を付けて可愛がっているようではある。

しかし店が売れ残りをずっと飼うことはできない相談だ。男は足りない頭をひねった挙句、自分が飼うことにした。彼はウサギが好きだったのである。

好きだっただけで買える道理もない。クロちゃんには値札がついておらず、不思議に思った男が値を訊ねたところ、引き取って頂けるなら代金はいりませんとのことであった。そこで男は買うことにした。こういう買い物もある、と男は満足であった。

店員は店員で大喜びで「クロちゃん良かったね」を連発した。中古のゲージに申し訳程度を支払って男は帰宅した。

クロちゃんはポチと名を代え、男の暇つぶしの相手をして暮らしましたとさ。

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