東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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作業療法勉強会『山本直史先生が来た!』

2018年03月28日 | リハ科勉強会
2月22日木曜日、吉野神経内科医院の言語聴覚士 山本直史先生が来院されました。山本先生は筆者が尊敬し、目指してきた方です。先生の「難病コミュニケーション支援」を皆に知ってほしくて、勉強会講師をお願いしました。全部をお伝えすること残念ながら叶わないので、筆者がとても大事にしている話をここでご紹介します。

【闇から光へ】
その方は筋萎縮性側索硬化症(ALS)で1年間、誰にも自分の言葉を伝えることが叶いませんでした。目を閉じてベッドに横たわり、表情も変わらず、からだも動かないその方は、周囲の人々の言葉を聞いて感じて話したかったけれども、それを伝える術はなく周囲の人々もその方の言葉をひろう術をもたなかった。山本先生が口述文字盤という方法で1年ぶりにその方の言葉をひろいあげたとき、その方は「さみしかった」と言ったそうです。
山本先生は特別な道具や技術を用いたわけではありません。多くの時間をかけて観察し、評価して、ほんとうにほんのわずかに動く身体の部分を見出して、その動きが随意的な運動かそうでないかをさらに評価して。山本先生が「あ行?か行?さ行?・・・」「さ?し?す?・・・」と一文字ずつ尋ね、そのほんのわずかな動きをサインとして言葉をひろう。どれも一度でうまくいく過程はありません。だからこれは美しい奇跡のような話ではなく、その方も山本先生も言葉通り全身全霊をかけて向き合う時間のなかからひろいあげた言葉です。先生は「信じる」「あきらめない」と言います。よく聞くこの言葉がどれほどに成し難いか、その重さと心許なさを筆者は初めて身をもって感じたように思います。
「さみしかった」と伝えたその方は、お見舞いに来るご家族に「きてくれてありがとう」とやっと伝えることができました。そして「おはかまいりにいきたい」と自分の望みを周囲に伝え、バイタルや呼吸状態などをみながら少しずつ身体を起こし車いすに乗る訓練を始め、着ていく洋服を選び、念願をかなえたそうです。お墓参りのあと感想を尋ねたら「もっとゆっくりしたかった」と。



筆者が山本先生に来て頂いたのは、私たちが「ここまでやってだめなら無理」と思うその先にもっと力を尽くせる手段があることを知っておかなければいけないと思ったからです。コミュニケーション支援を担うセラピストとしての在り方を改めて各々のなかで問う機会にしたかった。

最後に山本先生から私たちへのメッセージ。
「話をしてもらえる支援者になろう!」
諦めさせないために、諦めない。
「お花見したいなあ」と言ってもらえるようなセラピストになりたい。先生、ほんとうにありがとうございました。
皆様へ、ここまで読んで頂いてありがとうございました。

C2(OT)

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