旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

旅の持ち物

2013年04月15日 | 旅行一般
 旅の持ち物。このテーマは過去にも書いたことがあると思いますが、それでも、これから旅に出る人から最も多く寄せられる質問なのでもう一度書いてみましょう。

 単純な話、ツアーでもない限り(E&G以外でのツアーの事)旅行中は身軽であるに越したことありません。バイクや車で動いているなら比較的荷物に対するシビアさは薄れますが、バスや鉄道で移動する旅の場合、乗り継ぐ予定のバスが遅れて、バス停に着いたら次のバスが今まさに出ようとしているなんて状況もありますし、道路を歩いていて、流しているミニバスやリキシャをサッと止めて、渋滞の中を縫って行って飛び乗る時など、スーツケースはおろか、60lを超えるようなバックパックは大いに足かせになります。

 とはいえ、旅の目的によってはそれなりの荷物が必要になります。たとえば”スーパーカブで旅するタイ北部”以外のバイクツアーは私もしっかりしたライディングウェアをお持ちいただくようにお願いしていますし、それ以外でも海外トレッキングをお考えの場合やキャンプのツアーなどの場合、欠かせない装備、現地で調達できない可能性の高い装備が必ず加わってきます。

 もう一つ荷物が増えるタイプの旅は、普通の観光旅行。○○が見たいとか、XXレストランに行きたいとか、あるいは人よりたくさんの世界遺産を訪れたいとか、傍観者として、客人として渡航する人の中には、現地での快適さを求めて、日本とは習慣が違う事などを細かく調べて、日本での自分の生活を維持する上で必要で、現地では手に入らないかもしれない物をみんな持っていきたくなるようですね。そういう人向けの旅行グッズが沢山販売されていることを考えるとある程度の人口比率はあるのだと思います。

 ここで、一つ考えてみてほしいのです。
 
 旅をするというのは、その国を”見に”行くのとはちょっと違うと思うのです、たとえば、ニュージーランドに行ってマウントクックを眺めたいというのと、ニュージーランドのマウントクックが見たいというのは違うのがわかるでしょうか。マウントクックが見たいだけなら、写真集を見るなり、DVDを探すなりすればよい事で高いお金をかけて、時間をかけて現地へ行く必要はないわけです。わざわざ現地へ行くのは”肌で感じたい”という気持ちがあるからだと思いますし、その違いを知っている人が旅人なのだとも思います。

 肌で感じるということには日本との違いを感じるという事も含まれていると思うのです。そういう意味で、日本での日常を現地で再現するための装備を持ち込んで自分を隔離してしまうのはもったいないのではないかと思うわけです。

 人が暮らしているところを旅する限り、そこがどのくらい日本とかけ離れた環境であっても、そこで生まれ、生活している人がいるわけで、赤ん坊でも暮らしていけるだけの環境もあるし、必要物資もあるという事です。だから、現地の人たちと同じ生活を送る分には現地で手に入る物だけで賄えるわけです。だからと言って”手ぶら”で行けとは言いませんが、旅行のためにわざわざ何かを揃える必要は無いといえるのではないでしょうか。

 どうしても持っていかねばならない物は、パスポートと、お金と、日本の生活を一旦捨てて、現地の生活に合わせて過ごせる柔軟性の3つだと思います。日本での生活を何とか守ろうとする悪あがきは捨てて、現地の人たちの生活方法を日々観察して、自分の中にその国の生活様式を取り込んでいければ身も心ももっと軽々と旅することができるはずです。


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