旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

想定して対策すること、アドリブで対応すること

2017年07月25日 | 旅行一般
先日、E&Gの課外活動、E&Gやまあるき部の事で数人の友人と雑談していた時に話した話題。

 とりあえず起動したところですし、活動範囲が低山なので装備だって"普段着にデイパックでも大丈夫。"という方針なのですが、私自身はもっとずっと多くの装備を持っています。前回触れたファーストエイドキットはもちろん、歩くエリアの地図と、それのもう少し広域をカバーする地図の2種、それから小型のタープ、サバイバルブランケット、非常食、ヘッドランプなどです。

 これは私個人が低山の山歩きを再開した時点から持っている装備で、想定しているのはうっかり足を踏み外して沢に転落。装備が全て水に落ちてしまった上、怪我をしてその日の下山が無理になってしまうという事故です。

 実は子供の頃に散々近所の山を荒らし回っていた頃、2度、その日に下山できなくなりそうになった経験があるのです。1度は悪天候、1度は道迷いです。だから、低山でもこの程度の事故は簡単に起こると想定しています。

 こんな感じで、どこまで想定して視野に入れているかは自分の旅のスタイルに大いに影響してきます。

 スーパーカブで旅するタイ北部の場合、レインウェアは”必要ない”と案内しています。基本的に乾季に開催している事が理由の一つですが、同時に、自分達で移動手段を持っているお陰で、雨が降ったら雨宿りして、やり過ごすという想定。実際には小雨の中を走ったこともありますが、暑い中なので目的地に着く頃には乾いている程度です。
 
 タイ&ラオス路線バスの旅は同じ東南アジアの企画ですが、折り畳み傘を持ってきていただくようおすすめしています。こちらは雨季の開催であることと、自分の移動手段を持たないため、雨が降っていてもバス停へ向かわなければならないなど、雨宿りしていられない場合もあるからです。

 先日のファーストエイドキットについても同じような影響があります。私の場合はファーストエイドキットを”病院へ行くまでのつなぎ”として考えていますが、”数日頑張って旅を続けるための装備”にするのであれば抗生物質などの薬がもっと欲しくなるかもしれません。どちらが正解というのではなくてどう想定するかの違いで装備の仕方も変わるというわけです。

 自分に起こり得るとイメージできることについては、それが起こった時にどう対応するかを決めておく事で装備も決まってくるわけです。

 行き先や旅のスタイルでどんな事が起こりえるかイメージする際にはそれぞれの旅の経験が影響してきます。とはいえ、実際にはこれらの想定や対策がとても重要なのかというと、正直皆さんが思うほどの事ではないと思います。思い違いをしていても、旅程を変えなければならなくなる程度で、自由旅行ならそれも旅のうちでしょう。

 一方、イメージしていなかったのに起こる事だって旅先では沢山あります。

 お客様からの質問や相談を見ていて感じるのは、何もイメージできないまま、単になんとなく不安。そしてその不安材料自体を懸命に検索しているのだろうという印象です。
 
 延々と旅先で”起こり得る”様々な事態を検索し、その対策を検索し.....旅に出るまで不安をどんどん増幅させ続ける作業を”旅の情報収集”と誤解してしまう人が増えたのは、インターネットというツールを人があまりうまく使いこなせない事の証明なのかなとも思います。

 なんとなく不安というのは、よほど鈍感な人でない限り旅に出る際に誰もが感じるものですし、それが”なんとなく”である限り対策はしようがありません。

 私はこれらは"対策する必要の無い事"なのだと思います。起こり得ること全てに対策する事は絶対にできませんし、予想外の事が起こった時はアドリブで対応するのも旅の面白さの一部です。

 ”何だか不安、そして何だか楽しみ”
 それが旅する皆の共通の気持ちではないでしょうか。

 旅先では自分がイメージしていなかった事は当たり前のように起こります。イメージしていなかったマズい事も起これば、イメージしていなかった楽しいことや良いことも起こります。だからこそ旅は面白いのではないですか。


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