旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

形式、経験、自由

2016年07月28日 | ライフスタイル
 料理は自分の楽しみの一つで、先月の”旅行好きの夕べ”ではその一部を披露させていただきました。ご参加いただいた皆さんに楽しんでいただけたのかどうか少し不安ではありますが、一応、私の友人達のほとんどの間では好評です。

 大学生の頃に一人暮らしを始めた時から料理はしていますし、ツーリング中や登山の際にも料理はします。だから、料理をする事には慣れていたのですが、確か10年ほど前、”もっとちゃんと料理を覚えよう”と思い立って料理をする度にレシピ本やインターネット上の情報を確認して、必ず計量しながら料理をするようになりました。それからしばらくはインスタントラーメンの水の量も計量カップで図るほどの徹底振りで、私が料理するときには計量カップ、デジタルスケール、計量スプーンをフルに活用しながらレシピ本の料理を再現するようになりました。

 自分が”美味しいな”と思った料理は情報カードにレシピを書き写してキッチンに常備。同じ料理の新しい調理法を試して、そちらのほうが美味しければ取り入れてカードの内容を書き換えたり、そんな事も自分の楽しみのうちの一つになりました。

 ただ、あまりにも計量依存の調理方法に慣れてしまったため、同じだけの設備が無い出先で料理をすることになると戸惑う事もままああって、”全てを計量する”調理方法から離れることができなくなった事に時々不安を覚えたものです。おまけにデータが無いと料理が作れないため、名前のついた本格的な料理は作れても、ありあわせの材料をうまく使って何かを作るような料理には不安を覚える様になりました。自己流で料理をしていただけの頃はありあわせの材料を料理してばかりいたのですが....。

 自由度を失ったような不安を覚えるようにもなりました。

 ところが、いつの頃からか、”確信を持てる”感覚を味わえるようになりました、今まで使っていた材料の一部を”手元にあるもの”に変えたり、新しい調味料の組み合わせを思いついたり、どの鍋を使って火を通すべきかとか、そんな事に確信を持って料理を作れる事が多くなったのです。

 完全に自己流で料理をしていたのを、完全に型にはまった料理方法にしばらく軌道修正した結果、自由と確信を手に入れたというイメージです。

 ある日突然この事に気がついた際に武道の”型”に思い至りました。私は武道には無知なのですが、昔から、”型”についてすごく不思議に思っていました。型通りに相手が攻撃してくることは絶対ありえないのに、熱心に”型”を練習する事の意味が理解できなかったのです。ところが、ここに至って、”型”の意味が理解できた気がします。

 レシピに忠実に料理することも、武道の”型”も”正しい経験を積む”点に重大な意味があるのだと思い至りました。

 自己流で料理をしていたうちは、毎回調味料の量も違いますから美味しい時もまずい時もありました。レシピに忠実に作ればそれは間違いなく美味しい料理ができるようになります。データに忠実に作業すれば間違いないものが作れて、ある意味誰だって美味しい料理が作れるわけなのですが、実はこれを繰り返していく事で積む”正しい経験”が食材の特徴や調味料の組み合わせの法則性を身につけることにつながり、最終的には自由に料理ができるようになるのだと思うわけです。

 型に嵌まった事を繰り返すことが自由に繋がる事もあるわけです。

 受け売りの知識ではなくて経験から手に入れた自分の確信が自由な発想につながっていくのだと思います。
 この事から考えると、”良い確信”を得るためには”正しい経験”を積む事が大切であるとも言えると思います。


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