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旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

旅することが教えてくれたこと

2013年04月22日 | 旅行一般
 私はもともと、あまり社交的な人間ではないので、旅するのに向いているタイプとはいえません。人とかかわるのは苦手ですし、引っ込み思案で、初めて入るお店では正直なところ入口で激しく躊躇してしまいます。と書くと、特に友人たちからは”嘘つき”と言われそうですが、この歳になれば自分の苦手をよく知っているし、苦手との付き合い方も心得ているから”ばれない”程度に頑張っているというのが実情。

 考えてみればこれらは程度の差こそあれ、誰にだって当てはまる事なのだとも思います。人とかかわるのが得意という人でも、それじゃあ、今目の前を歩いている人に関わってみてと言われたら躊躇するでしょうし、知らないお店に入るのが好きという人でも見るからに怪しい店構えを何とも思わず入っていける人はほとんどいないのではないでしょうか。ガイドブックやフリーペーパー、インターネットでお店の情報を調べてから出かける人が多い事がその証拠と言えます。

 ところが旅に出かけると、食事をしようにも馴染みのないお店に馴染みのない料理。海外ともなれば周囲の人もお店の人も得体のしれない言語を話しているわけですから、日本ですら躊躇している事どもが現地ではもう腰が引けっぱなしという事になります。

 実のところ、私は初めての一人旅の時には屋台街の人々の圧倒的なパワーの中に入り込むことがどうしてもできず、数日間食事をとることができなかったのでありました。屋台街の外れの道端に並べられて売られていた月餅をおずおずと指差して購入し、それを数日間のエネルギー源としたのでした。ちょっと恥ずかしいけれど懐かしい思い出です。

 日本にいれば、自分の生活パターンを調整することで避けて通ることができる人との関わりも旅に出ると絶対必要な毎日のTASKとして発生してきます。交通機関の切符を買うのも食事をするのも泊まるところを確保するのもすべて他人との関わりなくしては達成できませんし、毎日移動を重ねていれば毎日これらをこなさねばなりません。旅を始めたころはこんな単純なことがとても自分にとって勇気が必要な作業でした。いや、今でもそれなりに勇気が必要ですが...。

 でも、一人旅に出てしまえば結局、この苦手なことを自分で何とかしなければなりません。自分にとって人とかかわるのが苦手だという事を痛感した後の私は、旅する事が自分のそういう非社交的な面に対する矯正装置として働くのではないかと期待もしましたし、もしかすると他の人にとっては何気ない旅先での作業に過ぎないこういう事が私にとっては大きな達成感をもたらす重大任務であったと考えるとあながち損したわけでもないとも思います。一夜の宿が確保できただけで”やったー”と思えたり、屋台で食事できただけで”俺ってスゴイ”と自分をほめてあげたくなったり。そんな事を積み重ねて、もっとやってみようと考えて旅を続けてきたのかもしれません。

 例えば、宿に宿泊代を聞きに入ろうとした際に躊躇している自分の背中を押すために思い浮かべたことは、昔の人が言った”旅の恥はかき捨て”という言葉そのもの。”旅人なんだから、少々間違っても仕方がない”、という事と、”少々間違ったからといって、笑われて恥をかく程度”という事でした。特に海外ですから、今後100年その村で自分の事が”ある旅行者の笑い話”として語り続けられたとしても、次に訪れた際にそれが自分の事だと特定される心配はほとんどありません。だから旅先は気が楽です。海外でさんざん恥をかいてきた経験が自分の苦手を上手くいなして周囲にばれない程度に頑張れる自分を作ってくれたのだと思います。


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