橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

平和構築とは 伊勢崎賢治ジャズライブ

2009-11-10 11:33:26 | Weblog
7日、新宿のネイキッドロフトで紛争解決人・伊勢崎賢治氏の
jazz&トークセッションがあった。
トークのテーマは平和構築・紛争予防。


詳しくはこちら
http://hikeshi.org/index.html

伊勢崎さんはトランペット、ピアノとベースとの競演。
紛争解決人といってもご存じない方のために簡単に説明すると、
これまで東ティモールやシエラレオネで紛争解決にたずさわり、
タリバン政権崩壊後のアフガニスタンで武装解除を行った人だ。
現在はその経験をもとに、東京外国語大学で平和構築講座を持っている。
紛争当事国の若者も留学生としてやってきて平和構築を学んでいる。

そんな人がなぜに、ジャズライブなのか?

アフガニスタンに行っているとき、いつ死ぬか分からないと思って
一念発起、ずっとやりたいと思っていたジャズトランペッターを
目指すことにしたのだそうだ。
それから5年。自分より年下の先生の指導のもと、
血と汗と涙のにじむ猛特訓の末、ライブをやるまでの腕前に上達。
まずは、その演奏をご覧下さい。Iphoneで撮ったのでずいぶん揺れてますが・・。


伊勢崎賢治ジャズライブ in新宿


5年でここまで上手くなれるんだ~と感激しました。
いつ死ぬかもしれないからとはよく言うけれど、
それでもなかなか毎日努力するって難しい。
これは私もやらねば!という元気をいただきました。
とまあ、自分のことは置いといて・・。
Jazzの演奏以外で印象に残ったトークの内容を紹介しときます。

伊勢崎さんは、マエキタミヤコさん(ググって調べてね)と組んで、
「HIKESHI」という紛争予防のプロジェクトを立ち上げていて、
「ピースアド」というものに力を入れている。
「ピースアド」とは文字通り平和のアドバタイズ=宣伝かと思ったら、
そう単純でもないらしく、
伊勢崎さん曰く、「平和は宣伝しちゃいけないんですよ」。
どういうこと???
曰く、「平和というのはきわめて政治的なことだから」。

例えば、パレスチナで「平和を!」「武力は良くない」と言ったところで、
それは空虚だ。戦闘というものが、日常の中にある地域の人々に、
『ピース』と胸を張り、武器を捨てろと言えるのか?
欧米では武装組織として過激派の扱いを受けるパレスチナのハマスは、
実は正当な選挙で多数派を勝ち取った政権政党でもあったわけで、
社会福祉も担っていたりする。
イスラエルとの関係の中で、彼らは武器が必要だと判断したから持っている。
どっちが善か悪かなんて、そう簡単には決められない。

そんな状況の中で、武器を捨ててもらうには、
『ピース!』と訴えることでは無理だ。極めて政治的な駆け引きを要する。
だから、ピースアドは「平和」の宣伝ではない。

伊勢崎、マエキタ両氏は、
ピースアドとは「平和」の宣伝ではなく、
戦争の「虚しさ」や「ばかばかしさ」を分かってもらうために
宣伝を行うことだと語る。

トークの中では、かつて、戦争に人々を導いたプロパガンダの数々
(主にポスター)もプロジェクターで紹介された。

「ピースアド」を行う目的は、
そうしたプロパガンダがいかにアホ臭いかということを看破する知性を
養うことなのだろう。

「王様、もしかしてそれ裸っすか?」と言えたり、
「ほしがりません勝つまでは」に対し、
「でも、ちょっとくらいは欲しがってもいいんじゃね?」と言えたりね。
知性に裏打ちされたユーモアの感覚を養うことだと
私は勝手に解釈した。

「大義を疑え」。
これは戦争に限ったことではない。
多くの人が集まる所に生まれがちな「大義」を
笑い飛ばせる強さが平和に繋がると信じたい。

今回のトークではほかにも興味深い話がいろいろあった。

伊勢崎さんが出演したNHKの「課外授業ようこそ先輩」。
http://www.nhk.or.jp/kagaijugyou/archives/archives313.html
(実は、もう放送は終わっている。再放送予定はないが、
 今後、NHKオンデマンドで見られるようになるかもしれないとのこと。
 ちょっとググったら、この回の「ようこそ先輩」を見てまとめてる方が!
 http://blogs.yahoo.co.jp/givingtree/49507368.html )

出身小学校の6年生に対し、平和構築の授業。
仮に隣町に、武装しさらに軍拡をめざし、
自分たちの国に攻めてきそうな勢いの国があったら、
あなたは自国も武装して闘った方がいいと思うか
(現時点で自国は武装していない)というお題で、
子供達が国会議員になって徹底討論。
なぜ賛成なのか反対なのかを訴える宣伝コピーやポスターも作らせたそうだ。
この時の小学生の反応が相当興味深いものだったらしい。

今回のトークでは、この「ようこそ先輩」の話に先立って、
アンヌ・モレリの『戦争プロパガンダ10の法則』という本を紹介して、
権力が民衆を戦争に駆り立てる時には必ず決まった10の法則が
成り立つという話をしたのだが、
「ようこそ先輩」における、子供達の議論の中でも、
武装すべきだと主張する側は、
この10の法則にぴったり当てはまったのだそうだ。

<戦争プロパガンダ10の法則>byアンヌ・モレリ
(1)「われわれは戦争をしたくはない」
(2)「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
(3)「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
(4)「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
(5)「われわれも誤って犠牲を出すことがある。
    だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
(6)「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
(7)「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
(8)「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
(9)「われわれの大義は神聖なものである」
(10)「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

つい最近にもこんな言葉を聞いた覚えがありますねえ・・・・。
なんと、我々人間は愚かな存在なのでしょうか。

さらに、この10の法則が世間に浸透するために最も大きな役割を果たすのが
マスメディアであることを肝に命じなきゃダメですね。
「王様ってよーく見ると、実はそれ裸じゃないっす?」と言える
しなやかな知性が一番必要なのはマスコミなのに、
ものすごく心もとない。

最後に、11月9日から世界銀行ロビーで「ピースアド展」やってるそうです。
http://hikeshi.org/top.html