橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

朝日新聞「がん おひとりさま3 入院の保証人、自ら代筆」を読む

2016-01-08 03:11:52 | がん徒然草

朝日新聞の「がんおひとりさま」のシリーズも3回目。乳がん治療後、再就職した矢先に子宮体がんが見つかって手術することになった女性。今回の職場の上司は「体調を見ながら、復帰できるときに復帰してくれればいい」と理解を示してくれたが、術後、がんは子宮頸部まで広がるステージ3の状態である事がわかる。抗がん剤治療を勧められるが、治療費もかかり、仕事ができなければ、生きて行けないと、一旦は治療を断るも、上司がつらいときは休んでもいいと、仕事継続を認めてくれたため、抗がん剤治療を選択した。タイトルの「保証人自ら代筆」というのは、この入院治療の為の保証人として、遠隔地にいる妹の名前の代筆をしたということだ。

朝日新聞「がん おひとりさま3 入院の保証人、自ら代筆」

この記事の患者さんの場合、子宮体がんが頸部まで広がってステージ3ということは、半年前、ステージ1の乳がんが見つかった時に、すでに子宮にもがんはあった可能性が高い。だとすると、乳がんのために使った抗がん剤は子宮体がんに効くわけではないから、その抗がん剤によって体力や免疫力も下がり、子宮体がんが増殖した事は十分に考えられる。彼女が乳がんで使った薬の種類はわからないが、ホルモン剤のタモキシフェンを使っていたとすると、これは子宮体がんリスクを上げることが一般的に分かっている。もともと乳がんのある人は子宮体がんも出来る可能性が高いらしいから、手術のみで済ませる人も多いステージ1の乳がんで、術後の再発予防措置として抗がん剤を使うことは、私からすれば非常識に思える。

このシリーズでは、おひとりさまという境遇の患者を取材し、がん患者の社会的な困難をとり上げようとしているが、この状況を見ていると、やはり問題の根本は治療の選択にあるとしか思えない。彼女を担当した医師の治療選択は間違いではなかったのか…。この場合、そこをこそ指摘するべきでないのかとの疑問が残る。社会的な困難があるとしたら、看病してくれる人がおらず、保証人の署名も代筆せねばならないというおひとりさまの寂しさよりも、「がん治療とはこういうものだ」とか「医師の言う事は絶対である」いう社会の先入観なのではないだろうか。

治療費がかかるからと、彼女が抗がん剤治療を断った時には、希望の光が指したと思った。しかし、悲しいかな、それを上司の「善意」が阻んでしまった。医師の言う治療をさせてあげたいというのは上司の善意だ。けれど、これまでの彼女の抗がん剤への感受性を考えると、化学療法を続けながら働く事はどれほど辛いだろうと想像される。また、休む日が続けば、職場に申し訳なくて、ストレスも溜まるだろう。それで、本当に彼女のがんは治るのか…? 「医師の言う事は絶対だ」という先入観が、善意の上司に、無批判に抗がん剤治療を勧めさせる。これはこの上司のせいというより、それが常識となってしまっている社会のせいだ。

しかし、社会のせいとはいえ、その社会というのは、人、一人一人が集まってできている。結局、一人一人が自分で考える力を養い、自分の身体に責任を持ち、医師の話しにさえもちゃんと批判的態度で臨めるようにならねばならないのだろう。

もちろん、抗がん剤治療をやらないほうが良いというのは私の考え。やらないことのほうが怖くて私にはストレスになるという人もいるだろう。そうなったら本末転倒なので、私は自分の方法を絶対にいいと勧めたいわけではない。私はやらないというだけだ。それは私が分かる範囲でいろいろ調べて考えた末の結論で、多分、がんというものは自分で調べ、考え、納得して決めた治療の方が、効果がある気がするのである。

明日は連載4回目です。


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