橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

1日遅れですが、原爆の日に寄せて「もう、核の『平和利用』という言い方やめませんか」

2010-08-10 22:48:23 | 国内情勢
昨日9日は「長崎原爆の日」だった。
6日の広島の慰霊式典には、アメリカの駐日大使や国連事務総長が65年目にして初めて出席するという記念すべき年となった。
アメリカでオバマ大統領の支持率は低下しているというし、日本の民主党も語るべくもないが、両国で政権交代が起こった事は、今現在がどうあろうと、やはり意味があったのだと思う。
ただ、当の日本政府はまた「非核三原則」を法制化するのしないのでガタガタしてるように報じられているが、実際のところどうなのだろう。
これまでの教訓を生かして、しっかり法制化にむけて動いて欲しい。

「非核三原則」をしっかり法制化することは当然の事だが、それよりも今現在、私が気になっているのは、昨日の「長崎平和宣言」で田上市長も批判をした、日本が核保有国インドと原子力協定の交渉を始めたことだ。

「核兵器」はあれだけ声高に廃絶を訴えるのに、政府は「核の平和利用」つまり「原子力発電」は推進する立場をとり、海外への輸出も奨励している。温暖化対策という大義名分のもと、原発輸出を現在の行き詰まった日本経済の成長戦略の一つに据えているからだ。

しかし、原子力発電の輸出は「核の平和利用」に抵触しないのだろうか。

NPT(核拡散防止条約)に加盟し、世界の核を監視するIAEA(国際原子力機関)に監視を受け入れれば、「核の平和利用の権利」は認められる。

しかし、日本が原発輸出の協定交渉を始めたインドは、核兵器の拡散を防止するNPT(核拡散防止条約)に加盟せず、核兵器を保有している。こうした新興国や途上国への原発技術売り込みは過熱してきており、3年前に既に協定を結んでいるアメリカを筆頭に、韓国もインドとの交渉を開始した。
そんな中、中国はインドと対立する隣国パキスタンへの協力を決めている。
パキスタンもNPTに加盟していない核兵器保有国だ。

NPTを脱退し核保有宣言をした北朝鮮にはいざしらず、NPTに加盟している上に、自らが行っている核開発は「平和利用だ」と主張し続けている(真実はわからないが)イランに対し、あれだけの制裁を加えておいて、なぜインドには原子力技術を供与するのか。
このダブルスタンダードに国内からももっと大きな批判の声が上がらない事に私は疑問を感じる。

それよりも何よりも、唯一の被爆国としてNPT体制の遵守を訴えている日本が、NPTに加盟していな核保有国と原子力の分野で協力するようなことがあっていいのか。こうした行動や姿勢が、NPT体制をなしくずしに崩壊させかねないのではないだろうか。

現在、世界の核を監視するIAEA(国際原子力機関)の事務局長は日本人である。それこそ、日本は核の平和利用をたてに核物質を持とうとする国に付け入る隙を与えるような行動を慎むべきではないかと思うのだが、岡田外相はこのインドとの原子力協定について「(インドを)国際的な核不拡散体制に関与させ、一定の範囲内で責任ある行動を取らせる」と、日本がインドの原子力発電に関わる事を逆手に取って、彼らをNPT体制に引き込む役割を果たすような趣旨のことを語り、インドとの交渉開始を正当化している。

詭弁だ。

私は、この核の平和利用という言い方にも懐疑的だ。
原子力発電は、本当に核の平和な利用法なのだろうか。

自前の資源を持たない日本は「核の平和利用大国」であり、
IAEAのお墨付きをもらい、核の平和利用をやりまくっている。
おのずと使用済み核燃料は大量に生まれ、さらにそれの再処理にも手を染める。
六ヶ所村の再処理工場は試験運転中の不具合で本格稼働が延び延びになっているが、政府はいまだに本格稼働を諦めていない。
核兵器保有国以外でこの再処理工場を持つ国は日本だけである。
昔から稼働している東海村の再処理工場などで再処理して抽出されたプルトニウムの量は核弾頭数発分になるともいわれ、海外には日本が核兵器保有の野望を持っているのではないかと懸念する国もあるという。
当然、日本政府はそんな野望はないというだろうが、例えば北朝鮮が勝手にそう思ったとしても仕方ない状況ではあるのだ。

また、軍事的に平和か否かだけが、平和の尺度ではない。

当然すぎてここまで書かなかったけど、原子力発電によって生まれる放射性廃棄物の問題を、為政者たちはどう考えているのだろうか。原発事故の懸念だってゼロではない。原発稼働による被爆や温排水の問題もある。
もちろん政府は、人体や環境に影響はないと言ってはいる。
しかし、先日東京都が、築地移転予定地における土壌のベンゼン汚染の浄化実験の調査データを大幅に偽って安全宣言を出していた事が発覚したが、それを考えると、政府の言っている「人体に影響が無い」だってにわかには信じがたいのだ。

地球温暖化問題が浮上し、化石燃料にかわる代替エネルギーに注目が集まる中、世界各国で太陽光や太陽熱発電、風力発電、バイオマスなどが普及し始めている。
私だって、温暖化対策のために、原発以外の方法が全くないというのなら、まだ理解を示したかもしれないが、今や上記のような代替エネルギーが生まれてきているのだ。すぐに全ての原発を無くす事はできないかもしれないが、人口が減りつつある日本においては、少なくとも国内の新たな原発建設予定はすべて凍結し、その分、グリーンエネルギー施設の建設に回すことはできるはずだ。

そしてさらに、中国やインドにも原発ではなく自然エネルギーによる発電で協力できないものか?
スマートグリッドの共同開発はできないものなのか?

「しかし」、と一部の人は言うだろう。「それでは間に合わないんだ」と。
中国とインドに急速に経済発展してもらい、ものを買ってもらわない事には、日本だって、そのほかの先進国だってもうこれまでのような生活レベルは維持できない。だから中国やインドに原発を建設し、急速な経済成長を促すのだ。太陽光じゃコストの問題や技術開発のスピードの問題などを考えると間に合わないんだ、とね。

時間がかかりすぎて新興国の成長に間に合わない・・・かあ。
しかし、それは次世代エネルギーの技術は持ちながら、それを実用拡大に向けて本気で準備してなかった怠慢が、今になって自らの首を絞めているに過ぎないのではないだろうか。
日本はやろうと思えば太陽光発電なんてもっと普及させられたはずだ。先が読めなかったか、目の前の安寧に胡座をかいただけだと思う。
自分が怠慢だったのだから、そのつけは、更なる努力で補うしかないのだ。
その努力をしないで、問題だらけの原発輸出で一時しのぎをしていては、日本にも地球にも未来は無いと思う。

結局、これまでの生活様式やレベルをそのままの形で維持するという考えはもう成り立たないと言う事だ。
しかし、一旦、無限のエネルギーを持つ太陽光などによる自然エネルギーの発電が普及してしまえば、今とはまた違った形の比較的高いレベルの生活が戻ってくるのではないかと思う。
そこには発電施設の建設反対運動もないだろうし、事故の恐怖も少ない。
建設をめぐって人々がいがみ合う事も無い世界だ。

これまで原発という既得権を持ち続けてきた人たちに言いたい。
世界のために、日本のために、既得権を手放し、新しい自然エネルギー普及のために、これまでの利益やつちかった技術や人的パワーをそこに投資して欲しい。それは、とてもめんどくさいことだろうし、労力のいることだろうけれど、それが実現した時には、再び尊敬もされれば、利益も大きいはずだ。
一時的な厳しさを受け入れて欲しいのだ。

日本は高度成長期を経験し、いろんな利益を先取りしすぎたのかもしれない。
これまで経済的にいい思いをした既得権益を得た人たちは、富を先取りしたにすぎず、これからは、その先取り分を使って、次世代のインフラを作っていかねばならないのではないかという気がする。
次世代のインフラとは当然、自然エネルギー施設である。

去年、まだニュースの仕事をしていたときに、こんなデータに出会って放送で紹介したことがある。
国税庁が調べた業種別の男女平均年収ランキングだ。
パートや正社員も含めて平均したデータだということだが、
トップは「電気・ガス・熱供給・水道業」で平均675万円
最下位は「宿泊業・飲食サービス業」で平均250万円だった。

他の業種も見たい方はこちらのPDFファイルの表紙と目次を除く15ページ目の「業種別の平均給与」の項目をどうぞ
「国税庁 平成20年分 民間給与実態統計調査」

なんとなく世界中が原発推進に立ち戻っているように見えるけれど、意外に欧米は自然エネルギー開発も行っている。そうこうしているうちに日本は太陽光発電においてのセルの製造シェアも導入量もどんどん世界での順位を落としてしまった。
あのグーグルがスマートグリッドに参入するのも、将来の発電が原発などの巨大プラントから一方向的に供給されるものから、各家庭の太陽光パネルなどから供給し合うような双方向的な仕組みになっていくことを示しているのだと思う。
原発輸出に燃えているうちに気がついたら世界から取り残されていたということにはならないようにして欲しい。


最後になったが、
広島原爆の日の前日の国会中継を見ていたら、政治家たちがみな、原子力発電技術の輸出や外国人留学生に教育する事を推進しようとしていた。それを受けて私はツイッターにこうつぶやいた。

<ここからつぶやき>
国会中継続き 原子力を世界に広めるのは「儲かるから」だろう。海外留学生に技術を伝達なんてきれいごとで化粧しないで欲しい。 地球温暖化対策という体のいい隠れ蓑にシメシメと「儲け話」を進めている。原子力は決して核の「平和」利用ではない。なぜなら、コストはかかれど他に代替案はあるから 11:38 AM Aug 5th webから

もう原子力は「核の平和利用」といういい方はやめたほうがいいと思う。そりゃ、核兵器にくらべれば「平和」だが、絶対的な平和でないことは明らかだ。人を殺す兵器と比較してどうすんだ。ほかにもっと平和な発電設備が発明されている時代に、この国会は何を遅れた話をしてるんだろう。 11:41 AM Aug 5th webから

We should stop using the words 'the peaceful use of nuclear power. Nuclear Power is not peaceful. It's NO WAY to compare NP to the nuclear weapons! 11:51 AM Aug 5th webから
<つぶやきここまで>

意外と、核兵器廃絶などという巨大な目標を達成するための意識改革は、こうした生活の中の核「原子力発電」についての考え方の変化から起こったりするんじゃないかなと思う。

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1 コメント

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原子力って何でダメなの? (haru)
2010-08-11 16:24:34
原子力発電所が良いか悪いか以前に、何で原子力を使っちゃいけないのかよく分かりません。
人体に危険なものは他に多々あるのに。。。。
風力、太陽光そんなに環境に良いのでしょうか?
風車作るために山を切り開いたり海にコンクリートを流したり。。。。
世の中のSiを掘りつくしていったり。。。
(バイオマスは利点しか思いつきませんが)
原子力爆弾と他の爆弾と何が違うのか??
放射能が出て危ない人類に悪影響がでるということでしょうが、逆に人間のやっている事はこんな自分勝手なことだと分かりやすいと思います。

また、
日本が手を出そうが出すまいが結局、原子力発電所を持ってしまうなら、金儲けに積極的に乗り出すべきだと思います。資本主義をよしとするのなら。
(個人的には民主主義と資本主義は好きではありません)
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