江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「天草島民俗誌」河童記事  その6からその10

2021-12-01 22:35:29 | カッパ

「天草島民俗誌」河童記事  その6からその10


                         2021.12

河童と相撲をした子供   「天草島民俗誌」河童記事  その6

大江村の桑津留での話。
赤崎という少年が、桑津留の淵の傍を通っていると、河童から声をかけられた。
それで、水中でしきりに相撲を取って、泡を吹いてしまった。
そのところを、村の人が折よく発見して、救い上げて、連れ帰った。
家へ帰って来ても、絶えず「河童と相撲をとりに行く」と言って、仕方がなかった。
それで、神官を呼んで祈祷をしてもらったら、次第次第によくなった。

大江では、河童の腕は、ちょうど蕎麦稈を束(たば)ねた様で、頭に皿の様なものを載せていると云う。(木田円作君談話)
         
 
河童に礼をさせて、皿の水をこぼさせる  「天草島民俗誌」河童記事  その7
今から百年も昔の話。
今の牛の首、農学佼の門前から二十間ばかり奥の方から、谷まぎった(谷を横ぎった)ところに、山下金三という勇士があったと云う事である。
その人は、相撲が強くて百姓であった。
或る日、今の山口村の奥の方の山に薪とりに行き、夕方家へ帰って来ようとした。
その途中、荷の上に一羽の鷹が来て止った。
そしてそのまま家の戸口まで来て、それから飛んで行ったので、不思議に思った。
ふりかえって見ると、龍神様の松の木に行ってとまった。
その木を、今でも龍神様といって拝している。
また、この人がある時、何時ものように広瀬の白岩に行って田の中で働くいていると、どこからか、
「金三、相撲とろう」と言う声がした。
顔をあげて見ると、河童があぜに、腰かけていた。
金三も一緒に腰を下して、
「おー、わる(汝)が田ん草ば取って、加勢したらとろうだ」と言った。
すると、「ほんとうか?そんなら。」と言った。
見ている中に、じゃぶじゃぶと田の草をとってしまった。
そして又「相撲をとろう」と申し出た。
ところが金三は、
「昔から、相撲をとる時には、両方から頭下げて、礼をしてからとるごて(事に)なっとるけん(なっているから)。礼ばしてから、むかって来い。」と言った。
すると、河童はペコペコ頭をさげて向かって来た。
二人は、投げたり投げられたりして、日の暮れるまで遊んでいたと云う話であった。
河童は、頭に皿があって、その中に水が入っていると、力が限りなしに出て来る。
それで、相手に先づ礼をさせ、皿の水をこぼさせてから、取り組むのである。
(金沢国吉氏談。金沢国彦君報)
        

河童の頭に小便をした話  「天草島民俗誌」河童記事  その8
或る時、一人の相撲の強い人が、どこかに相撲に行くのに、途中に川があって、そこは、飛び石になっていた。
家を出る時に、母親が仏飯を食べさせて送り出した。そして、その川を渡るとき、小便がしたくなったので、その川の中にした。
すると、川の中から「誰だ?おれの頭の上に、小便をするのは!」と言う声がした。
「何だ。おれだ」と言い返した。
すると、水の中から、一匹の河童がポカリと浮き上って来た。
そして、互に口論をはじめた。
河童は、
「お前は相撲取の様だが、おれと相撲をとって勝てば向うへ行ってもよい」と言い出した。
そこで相撲をとると、河童は又「あなたは、眼が光って、恐ろしい。」と言って、遂に降参した。
眼が光るのは、仏飯を食っているからである。
(池田瑞穂君の報告)


         
河童を見た   「天草島民俗誌」河童記事  その9
或る百娃が、朝、田を見に行くと、向うの川で、小さな子供がジヤブジャブやっていた。
それで、近づいて見ると、驚いたのか、川の中ヘドブンと入ってしまった。
河童であった。
(池田瑞穂君の報告)        

 

馬が河童を引きずって来た話     「天草島民俗誌」河童記事  その10

ある時、一人の百娃が、馬を田の中で働かせたので、泥で大へん汚れてしまった。
それで、川に連れて行って、洗って、岸の木に繋いでおいた。
すると、馬のたづなを、誰か牽いて海の中へ引っぱって行こうとした。
馬は驚いて、一目散に、家へ逃げ帰った。
よく見ると、たづなの先には、一匹の河童が巻きついていた。
それで、捕らえて、縄で縛って馬小屋の天井につるしておいた。

翌日、下男が馬の「はむ}にかける水を持って行って見ると、昨日のカッパは、しなびていた。
その水を頭からさっとかけてやったら、たちまち勢いづいて縄を振り切って逃げて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 


新説百物語巻之三  1、深見幸之丞 化物屋敷へ移る事 

2021-12-01 21:45:40 | 新説百物語

新説百物語巻之三  1、深見幸之丞 化物屋敷へ移る事 
                       2021.12
備前岡山の近所に、中頃に、深見幸之丞(こうのじょう)と言う武士がいた。


常には詩文を好み、華奢風流の男であって、軟弱な男である、と若いものは評判していた。

その辺に、五六十年このかた、人の住んでいない化け物屋敷があった。
どんな剛毅(ごうき)なものも、二夜とは泊まらず、逃げ帰る所であった。

若い人々が寄会い、
「どんな、剛毅な者でさえ、一宿もしない化け物屋敷であるから、幸之丞などは、門の内へも入れないだろう。」
と言った。
幸之丞(こうのじょう)は、聞かない顔をして、その座を立ち去った。

それから家に帰って、家族にもかくして、独りで弁当や酒などを用意して、かの化け物屋敷におもむいた。
誰も住んでいない事であるので、門には錠もかかっていなかった。
すこし開けて、薄い月あかりにすかして見れば、草はぼうぼうと生えて、茂っていた。
屋根なども荒れ果てていて、縁(えん)もかたむき、畳もなかったので、用意の尻敷を取り出して、台所とおもわれる所に敷き、そこで、たばこを吸った。

秋の末の頃であったので、荒れた庭に吹く風も身にしみ、鳴く虫の声がうるさく、心細く思う頃、奥の方から、メリメリと言う音が聞こえてきた。
これは、と思って、刀を引きよせ、油断せずに、奥の方を見た。

すると、なにかはわからないが、
「たすけてたすけて」
と、泣きながら来る女の声がした。
姿を見れば、顔は青ざめて、髪はぼさぼさで、拾貫目の銀箱と見える物を手に持っていた。
そして、くゎっくゎっと打って、火がもえ出てきた。
しばらくすると、又台所の釜の下から、これも色が青ざめた男が、髪をぼさぼさにし、縄を帯にして、手に鍵とおぼしき物を持ち、
「ここへ来い来い」と言った。
幸之丞は刀を抜く用意をし、
「何ものだ。
この屋敷に住んで人々を迷わして、こんな事をするのか?
狐や狸であるならば、正体をあらわせ。」
と、ハタとにらんだ。

すると、二人の者は、少しもさわがず、そろそろとそばへ来た。
「わたくしどもは、この家につとめていた男女の下人でございます。
主人の目をかすめて、仲良くなりました。
その上に、土蔵にあった銀子(ぎんす)の箱を盗み出して、かけおちをしようと思う所を、主人に見付られてしまいました。
二人とも手打ちにあい、別々に埋められました。
しかし、我が身の罪は思わず、主人の家内を皆々取り殺しました。
こうして、この家は断絶いたしました。
その罪により、二人とも今にいたるまで、成仏出来ておりません。
かわいそうだと、また御慈悲と覚しめして、御とむらい下されば、ありがたく存じます。」と。
このように、熱心に頼んだ。
それで、幸之丞はしっかりと聞きとどけて、仏事を丁寧に行った。

その後は、何も怪異なことはなかった。

藩主が、そのことを聞いて、その屋敷を幸之丞に与えた。

幸之丞がいつもの軟弱な様子とは違って、この度の働き、皆皆が、この度の武勇をほめたたえた。