「福島県耶麻郡誌」中の怪異伝説 その2
2023.5
6.三把菅(さんばすげ?)
猪苗代湖の釜子浜は、上戸浜(じょうこはま)より西の湖辺である。
ここより西北の方、沖に出れば三把菅と言って湖中第一の深い所がある。
三把の菅(すげ)を結んで下ろしても、水底に届かない。それで、この名があると言う。
訳者注:この三把のスゲの意味が解りません。
猪苗代湖には、何々浜というのがあちこちにあります。まるで、海の浜辺のような感じがする所もあります。しかし、潮のにおいがしないのが、海の浜との違いです。
7.苧紡(おつむぎ)坂
長瀬村字(あざ)上内野(今は、猪苗代町の一部)の北一町(109m)にあり、十五間(一間ケンは、180cm)ばかりの小さい坂である。
道の傍に昔、松の樹があった。
山姥が住んでいたと言われていた。
昔は、夜毎に絲をひく紡ぎ車の音が、聞こえた、と言う。
今は、松も枯れてしまった。
8.天狗相撲取山
吾妻村(今は、猪苗代町の一部)字(あざ)小田の東南方二里ばかりにある。
東は安達郡中山村と峰を境界としている高山であって、登る者は稀である。
何者のしわざか、はるか遙か山奥に木を伐採する音が、聞こえることがある。
村民は、天狗のしわざである、と言い伝えている。
9.岩弓
吾妻村(猪苗代町)字(あざ)酸川野(すかわの)の東北方に二里ばかり(約4km余り)にある。
このようなことが、伝えられている。
昔、源義家(みなもとのよしいえ)が東征の時、この地に至って軍の勝利を祈って、矢を放った。
そして岩の上に立ったが、その弓より枝葉が生じたので、岩弓と名づけた、とのことである。
今に至っても、なお箭竹(やだけ)が多い。
里の人々は、は、八幡太郎箭竹と言っている。
10.鬼屋敷
磐梯村(今は磐梯町)字(あざ)渋谷の東南八町(一町チョウは、109m)にあり。
東西八町(870m)、南北十八町(約2km)の中に屋敷跡がある。
昔、桧木谷地(ひのきやち:ヤチとは湿地帯)に山賊が多くいて、人を悩ました。
それは、この地であると伝えられている。