「福島県耶麻郡誌」中の怪異伝説 その7
2023.6
31.雲海の墓
上江の東北三四町(3・400m)にあり。
高さ五尺ばかりの塚であって、上に五輪がある。
雲海は、いずれの時の人と言う事は、伝わっていない。
並びなき大力の者であって、世を遁れて上江に住んだ。
村の端の堰(せき)に石橋があった。
雲海という大力の者がいた。
彼は、或る夜、戯れに
「あの橋が、なくなった時には、年貢を納めてやろう」と言った。
その時、突然、橋が消えてしまった。
年貢を納めるために、数十人の百姓が、橋のあったはずの場所に来た。
しかし、橋がないので、どうしようか、と困っていた。
それを見て、それでは、堰を渡してやろうと、堰堀に跨がった。
米を背負っている馬の足をとって、すべて対岸に渡し終えたそうである。
それで、力が強くなりたいと願って、橋のある所に詣でて祈ると、効験があると、言い伝えられている。
32.竹屋観昔
姥堂村(うばどうむら:今は喜多方市の一部)字(あざ)竹屋の村の東の高い所にあり。
運慶作の如意輪観音の坐像を安置している。
妊娠した婦人がこの観音に祈れば、難産の憂いなしとして參詣の者が多い、と伝えられている。
世俗は、相呼んで子安観音と言う。
33.赤井戸
磐梯村(磐梯町)字(あざ)赤枝の村の中にあり。
四尺四方の小池である。
村に災難があろうとする時は、水の色が紅に変じて、その予兆を告げたそうである。
34.栃沢山の清水
磐梯村字下西連村の東北の沢山の中に清水がある。
湧き出る勢いは、強く、かつまた清冽であった。
旱魃の時ここに詣でて、雨を祈れば霊験があって、降るそうだ、との亊。
35.目洗清水
磐梯村字上西連村の町屋に在り。
眼疾の者が、この水を以って目を洗えば、治ると言う。