小豆が天より降って来たこと 筆のすさび
2024.5
小豆の降たる事
文化乙亥(ぶんか きのとい;文化十二年:1815年)の夏に、長崎、筑前、筑後の辺(あたり)に豆が降ったそうである。
丹波では竹に火がつくことが多いそうである。
備後にも、このようなことがある。
思うに、寛政の前二年(1787年)、備後深津郡(岡山県福山市など)に麦菽蕎麦(ムギマメソバ)など降ったことがあった。それを拾った人が私に見せてくれたが、本物のによく似ていた。しかし、その翌年は大飢饉であった。
日本書記等にもこのような事が記載されている。
豆などが降った後は、かならず凶年であった。
唐土(もろこし:中国)の史類にも、このような記載が多い。
天地の気が変わって、異気異物をひきおこしたものであろうか?
丁亥(ひのと い)(文政10年:1827年)の今年は、豊作であるが、明年はいかがであろうか?
丙子(ひのえ ね)(文化13年:1816年)四月十五日豊前中津(ぶぜん なかつ:大分県中津市)に大豆や小豆が降って、城下にて夜に出かけた人の傘に、はらはらと当たる音がするほどであった。
その種の二豆を、保存していたのを見たが、前年備後(備後:広島県)に降った物よりはしっかりしているように見え、小豆は、色が赤くなかった。
菅茶山「筆のすさび」より