ザリガニの石はオランダの薬
「黄華堂医話」より
2021.12
「黄華堂医話」は、医学随筆であるので、面白い生薬も記載されています。
著者の橘南渓は、「東西遊記」がその著作として知られているが、本業は、医者です。
医学的な著書があっても、不思議ではありません。その中で、少し、面白いのがあります。
オクリカンキリ(ヲクリカンキリが、原文)
ヲクリカンキリ(オクリカンキリ)というのは、利水に不思議によく効き、世間では珍重されている。
(利水とは、小便の出にくいもの、浮腫のある時に、水=小便の出をよくして、治癒させる事を言う。)
外国に産して、オランダ船が持ち来たったものである。
近年は、はなはだ稀で、非常に高価である。
私が、東北に旅行したときに、奥羽にヲクリカンキリが産出するという事を聞いて、かの地で、あちこちさがした。
すると、出羽の国の秋田領の大館という所に、ザリ蟹(ザリカニ)というものがいた。
その蟹の形は、海老に似ていた。
谷川あるいは、沢辺などに住むものである。
蟹という名がついているが、海老に近いものである。
このザリ蟹(ザリカニ)の頭にある石を外国でヲクリカンキリと言う。
この大館の谷川に産するヲクリカンキリは、外国より輸入された物よりは、非常に小さい。
しかし、同じ物であることは、疑いようもない。
また、津軽領の岩木山の東あたりの高志貴と言う所の谷川にも、ザリ蟹(ざりかに)を産する。
大館よりは、はなはだ多いと言う。
くわしく調べれば、外国より輸入された程の大きさのヲクリカンキリもあるだろう。