邪馬台詩:江戸時代に流行した予言の詩 その3
2020.6
以下は、編者の、預言としてではなく、文字からの解釈です。
東海姫氏國。 東海の姫氏の国
東海に姫氏の國あり。東海は、日本の事。
姫氏国は、二つの意味にとれる。姫氏の國といえば、中国古代の周王朝の王姓は「姫」氏である。
もう一つは、女帝の国ともとれる。天皇家は、天照大御神という女神の子孫である。それで、東海姫氏國は、日本であるとも解釈できる。
百世代天工。 百世(ひゃくせい)にして天工に代わる
これを文字通り解釈すれば、建国100目の王=天皇、まで、系統が続き、その後は、天命によって、誰かに変わられる、となる。
もう一つの解釈は、百世代までは、天命によって、国を統治する、とも解釈できる。
右司為輔翼。 右司(ゆうし)は輔翼(ほよく)と為(な)る。
(または、)右司を輔翼と為す。
右司為輔翼の右司は、補佐する者の意。建国後は、臣下の補佐で、国を運営する、との意。
衡主建元功。 衡を主さどり、元功を建つ。
何かの基準を制定して、功績を挙げる。
衡は、重さのこと。度量衡を定めることは、国内の取引を正しく行わせる事を意味する。社会を安定化させる。これは、権力者の統治能力の高さを現す。
初興治法事。 初めて治法の事を興す。
初興治法事は、法を定めて、国家運営を行うの意。
・・・これは、実は、大変重要な事で、21世紀の今でも、法を無視して、国家を運営、私物化している国がある。哀哉!
終成祭祖宗。 終には、祖宗の祭りを成す。
祖先を祭る。古代にあっては、重要な事。・・・特に誰が誰を祭るかは、どうにでも解釈できるでしょう。
本枝周天壌。 本枝は天壌に周(あまね)し。
樹木の大本から枝が分かれていくように、一族が増えて、別れて広がる、とも解釈できる。王の一族が、分かれて、国土全体に広がり、繁栄した。
君臣定始終。 君臣 始終を定む。
君臣の身分を固定化した。王の、権力基盤が確立した。
谷填田孫走。 谷は田を填(うず)め、孫は走る。
谷填田孫走は、谷が崩れて田畑が埋まり、民が四散する。・・・天変地異により、凶作、飢饉が起こり、人民は、死んだり、逃げたりする。
・・・しかし、この解釈は少し難がある。というのは、このように、読むと、前後の句の読み方と違ってくる。しかし、この様に解釈するしか、出来ない。
魚膾生羽翔。 魚膾(ギョカイ:さかなのなます)は、羽を生じて翔ぶ。
魚膾(ぎょかい)は、魚の生の切り身のこと。当然、死んでいる魚である。しかし、死んだ魚に羽が生え、どこかへ飛んでいった。がの意。・・・あり得ないことが起こる、との寓意。
葛後干戈動。 葛(かつ)の後、干戈(かんか)動く。
誰かの支配の後、または何かが起こった後、戦争、戦乱が起こる。葛後干戈動の干戈は、タテとホコ。それで、干戈カンカは、戦争や争乱の意。
葛後の葛の意味は、不明だが、どのような解釈、こじつけも可能であろう。
中微子孫昌。 中ごろ微子(びし)の孫 昌(さか)んなり。
中頃、つまり時代が下ると、微賤な者がのし上がり、国を支配し、その子孫が繁昌するであろう。
白龍游失水。 白龍 游んで水を失う。
この場合の白龍は、正当な、高位者、権力者を指す。龍が水を失うとは、力を失うこと。龍は、水の生き物。時の権力者が、力を失う、失脚するとの意。
窘急寄胡城。 窘急(くんきゅう)にして胡城に寄る。
窘急寄胡、城。胡城の胡は野蛮人の意。胡城は、野蛮人の城ではなく、僻地の城、根拠地と解釈できる。
窘急は、緊急の意。
黄鶏代人食。 黄鶏 人に代わって食す。
黄鶏代人食の解釈は、難しい。解らない。
字義通りに解釈すると、黄色い鶏が、人に代わって何かを食べる。
黒鼠喰牛腸。 黒鼠 牛腸を喰らう。
黒いネズミが、牛のハラワタを食べる。あまり起こらないような事が起きる。
丹水流盡後。 丹水 流れ盡きての後。
丹(たん)は、水銀の化合物で、赤い色。丹水(たんすい)は、血を象徴している。
戦乱などによって、大量の血が流れ尽きた後。
天命在三公。 天命は、三公に在り。
天命が変わり、三公に移った。権力、実権が三公に移った。この三公は、三人の実力者、反逆者とも考えられるし、三公という一人の人物かもしれない。
天命が変わる事は、すなわち革命(天命が変革)である。
百王流畢竭。 (ひゃくおう ながれ ことごとく つきて)
百王は、百代続いた王家(または天皇家)がおわった後。または、百王とは、多くの実力者、軍人、夜盗のたぐいを指す。多分、後者が正しいであろう。
打ち続いた戦乱、争乱が終わった後。
猿犬稱英雄。 猿犬(えんけん) 英雄を称す。
猿や犬のようにつまらない人物が、英雄気取りで、互いに戦う。
星流飛野外。 星は流れて、野外に飛ぶ。
流れ星が、飛ぶ様な、天変地異や、不吉なことが起きる。
鐘鼓喧國中。 鐘鼓(しょうこ)國中に喧(かまび)し。
鐘や太鼓の音が、国中に届いて、うるさい。
鐘や太鼓をたたいて、戦乱、内乱、騒動がおき、国中が乱れる。
青丘與赤土。 青丘(せいきゅう)と赤土(せきど)と。
東方の地区・国と南方の地区・国。この句は、次の句と一体であろう。
青丘は、古代中国では、東方をさす。従って、この青丘には、いくつかの解釈が可能となる。中国領域での東は、山東省あたり。もう一つは、日本。また、朝鮮では、自国を青丘と呼ぶこともある。しかし、朝鮮を青丘と自称した1000年以上も前の文献は、存在しない。
赤土は、南方の土の色。南方の土は、、一般的に赤いので、単に南方もしくは南方の国であろう。
古い時代には、赤土国というのがあるが、東南アジアのどこかにあった国である。
茫茫遂爲空。 茫々(ぼうぼう)として遂に空(くう)となる。
ぼうぼうとして、遂に空しくなる。滅びる。
以上の解釈に、適当な、固有名詞(国名、地名、人名、官職など)を充てれば、様々な解釈が成り立つであろう。