江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

土佐の狸の怪 4.潮江の狸  「土佐風俗と伝説」 古狸

2023-04-13 17:21:40 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

土佐の狸の怪 4.    潮江の狸

                      2023.4

今は昔、潮江村(今は、高知市の一部)の砂入に、小田原平兵衛と言う武士が住んでいた。
家僕二人を使っていたが、一人は大人で生れ付き足が短かい障害者であって、一人は十四五歳の若者であった。
ある夜、用事があって、若者の僕を使いにやったが、まだ夜になってすぐの頃であったが、天狗橋の南の橋詰めで、その高さ一丈も有るかと思うばかりの大入道
に出くわした。身の毛もよ立つ様におぼえて、走りつつ島屋と言うのに飛び込み、助けを乞うた。
ちょうどその時、平兵衛もそこに来掛っていた。
いきさつを聞いて、それは、どこかの狸のしわざであろうと、笑いながら、狸を罵しった。
小田原平兵衛は、若者を連れ帰った。
夜が更けるに及び、今度は大人の僕が、門を閉めようと、足を引摺りながら行った。
すると、かの狸は、自分の事を悪しざまに言われたのが気にいらないと思ったのであろう。
垣間より踊り出で、その僕の足に噛み付いたので、僕は肝(きも)をつぶして、門も閉めずに逃け帰ったそうである。


「土佐風俗と伝説」 古狸 より


土佐の狸の怪 3.小八木(こやぎ)屋敷の古狸 その(2)

2023-04-13 17:18:36 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

土佐の狸の怪 3.

   小八木(こやぎ)屋敷の古狸 その(2)

                                                                         2023.4

さて、又、先程の小八木屋敷の古榎の下の狸については、以下のような話もある。

ある時、山田某と言う武士が、夜更けて榎の所に行って、小便をした。
すると、たちまちに何であろうか大変大きなものに、体をひた押しに押付けられたような心地がして、全身がすくんだ。
なんとか立ち上がろうとしても、出来なかった。
仕方なくて、しばらく、そのままにしていたが、町巡りの廻番の男が、拍子木を打ちながら来た。
それで、声を掛け、手をひっぱってもらい、この時にやっと立つ事ができた。

しかし、その後は何も変わった事がなかったそうである。

 

「土佐風俗と伝説」 古狸 より

 


土佐の狸の怪 2.         小八木(こやぎ)屋敷の古狸 その(1) 土佐風俗と伝説 

2023-04-13 17:16:24 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

土佐の狸の怪 2. 

       小八木(こやぎ)屋敷の古狸 その(1)

                                                                                     2023.4

今は昔、高知城下中島町に、小八木某と言う大身の侍が住んでいた。
家屋敷も広く、庭の木立ちも深く泉水などもあって、勝れて美しかったが、家の西表に巨大なる榎があった。
その根本に祖先の神を祭っていた。
玉垣など結い廻してあった。
家人も普段はそこには行かなかった。
そこに、いつの頃からか年経た古狸が住んでいた。
この狸の怪しい行ないは、夜更け人が寝静まった頃、畳の縁を打つ様な音を発する事であった。
世間では、小八木の畳叩きと言って、ウワサになっていた。
そうして、その音の怪しく不思議なことには、家内の者には、聞こえず、また極く近隣の者にも聞こえず、却って二三町遠方の人にはよく聞えたそうである。
その頃、城下の或る人々は、小児の泣きやまぬ時に、「そら畳叩きが聞こえるぞ。」と言って脅かすと、泣きやまぬ子供は無かったと言う事が、ある記録にのせられているのを見れば、相当に名高かった話と見えよう。


土佐風俗と伝説 古狸