江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「信濃奇談」でのカッパ、カワタロウの記述

2024-11-15 01:01:57 | カッパ

「信濃奇談」でのカッパ、カワタロウの記述

                                       2024.11

羽場村(長野県辰野町)に、天正(1573~1593年)の頃、柴河内と言う人が住んでいた。
或る時、馬を野飼にして天竜川のあたりに放しておいた。
それを、河童と言うものが、この馬を取ろうと手綱をつかんで引きずろうとしたが、
思うように引けなくて、馬は、あちらこちらへと動くので、かの河童は、繩を自分の腰に巻きつけて、川へ引き入れようとした。しかし、馬は、引きづられまいと、抵抗した。河童は、このままでは、かなわないと思ったのであろう。かの手繩をだんだんに自分の身にまとい付けて、力のあらんかぎり、争い、引きあった。もう少しで、川の水の中へ引き入れたら、いかに大きな馬であっても、とってしまえるであろう、と争いつづけた。そのうちに、時うつり日がくれた。
小(かっぱ)は大(馬)には、かないがたく、終に馬は、走り出して、自分の家へ走り帰った、
河童は、繩をいく重も身に巻き付けていたので、解くいとまなくて、ひかれて来た。その様子を、人々は、走って見に来て、「あなめづらし希有の事哉」、と集まってきて、河童を厳しくしばり繋いで、厩(うまや)の柱にくくりつけた。
その家の主は、仁心ある人であったので、無益に河童を殺すも、さすがに憐れんで、縄を解いて、放してやった。

その後、その恩を返そうとしたのであろうか、川魚などを、その家の戸ロにおいてあることが、度々あった、と小平物語に見える。
今も猶、里老は、語り伝えている。

近頃でも、河童が、小児などを取ることが多くある。
河童と書いてカッパと呼ぶのは、カワッパの略である。

「本草綱目」の渓鬼蟲の附録に、水虎と言うのがあるが、この類であろうか、と貝原翁(貝原益軒)は言っている。
私が推察するに、これは、水獺(かわうそ)の老いたるものでは、なかろうか?
貝原翁、又言う、淮南子(えなんじ)に魍魎(もうりょう)状、三歳の小児の如し。赤黒色・赤目・長耳・美髯。
左伝注疏に、魍魎は川沢の神なりと見えるが、河童に似ている、云々。
 
「信濃奇談」広文庫より        

 



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