大蛇退治 尾張名所図会前編五
2024.7
牛巻潭 うしまきのふち
同じ村(高田村:愛知県名古屋市瑞穂区高田町か?)に有。
昔、この淵に巨蛇(うわばみ、蟒蛇)が棲んでいて人民を悩まし、牛馬をも水中に巻き込んだ。
弘治二年 、大原真人武継(おおはらまひとたけつぐ)という者が、熱田参宮から帰る途中で、東の方を見るに、一筋の黒雲が、下ってきて、淵のほとりに怪しい光が見えた。
これは、かねて聞き及んでいた巨蛇(うわばみ)であろう、と思って、
家に帰り、弓矢をたずさえて、再びここに戻ってきた。
案の如く巨蛇(うわばみ、蟒蛇)が現れて見えたので、もとより強い弓(つよゆみ)の達者であって、
身をかためて、矢を放った。
すると、手応えがして、何度も矢つぎばやに射って、遂に退治したことが、言い伝えられている。
傍らに、その蟒蛇を埋めた跡がある。蛇塚(じゃつか)と呼んでいる。
訳者注:名所図会は、各地の名所旧跡などを絵画とともに紹介した書物です。そのうちには、面白い話もあります。
江戸時代には、多くの地区の名所図会が刊行されましたが、これは「尾張名所図会 前編」より。