卵巣チョコレート嚢胞核出術後の再発については、文献によってかなり差がある。その上、術後治療について検討した場合にも結果は大きく異なっている。その気になれば、自分の主張に都合のいい内容だけ集めて考察できるだろう。
術後治療がない群と低用量ピル(OC)を投与した群が差がないとする論文の多くは、術後にOCを6ヶ月間だけ投与して、その後は投薬なしで経過観察したものが多い。GnRHa投与と比較するために作成された研究デザインであろう。
GnRHaの投与は骨塩量減少や卵巣機能欠落症状などの副作用により6ヶ月までとされている。一方、OCは長期間の投与が可能である。GnRHaとOCは、全く違った目的で使用されるべきである。
そういう論文で、GnRHaの効果について考察しているのはわからないではないが、OCについてコメントしているのは奇妙に感じる。長期投与が可能な薬剤を6ヶ月間だけ投与して、その有用性を論じることが科学的といえるだろうか?
子宮内膜移植説からは卵巣表面の子宮内膜症が卵巣内に陥入してチョコレート嚢胞を形成していく(cortical invagination)とされているが、卵胞がそのままチョコレート嚢胞に変化するといっている論文もある。チョコレート嚢胞に黄体が存在していることはしばしば観察されるので、卵胞がチョコレート嚢胞になっていくというのもあるのだろう。(化成?それとも排卵時の破裂孔から子宮内膜症が侵入?)
Vercelliniは、卵巣チョコレート嚢胞の再発を予防するための策は排卵を止めることであると考えている。一度チョコができてしまう症例だから、排卵を止めないかぎり再発しやすいのもしれない。
再発したチョコレート嚢胞については、取り扱いは慎重でなければならない。妊娠するべき時期までOCで排卵を止めて、チョコレート嚢胞の再発を最小限にしておくことが賢明ではないだろうか?