7月27日衆議院厚生労働委員会、参考人児玉龍彦(東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)氏、意見陳述。
3月21日に東京で雨が降り、0.2μシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思っています。今回の福島原発の事故というのは、100km圏で5μシーベルト、200km圏で0.5μシーベルト、さらにそれを超えて足柄から静岡のお茶にまで及んでいます。
私どもアイソトープセンターの試算によりますと、熱量換算で広島原爆の29.6個分、ウラン換算で20個分のものが漏出していると考えております。さらに放射線の残存量は1年経って原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は10分の1程度にしかなりません。つまり、今回の福島原発の問題は、
原爆数十個分に相当する量と原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したという事が、まず考える前提になります。
総量が少ない場合にはある人にかかる濃度だけを診ればいいのです。しかしながら、総量が非常に膨大になりますと、これは粒子です。核燃料というのは要するに砂粒みたいなものが合成樹脂みたいな物の中に埋め込まれています。これがメルトダウンして放出するとなると、細かい粒子が沢山放出されるようになります。これは決して同心円状にはなりません。どこでどういうふうに落ちているかは、その時の天候、それから、その物質がたとえば水を吸い上げたかどうかなどによります。
東大のアイソトープセンター、現在まで7回の除染をやっておりますが、我々が何をやらなければいけないかというとまず、汚染地で徹底した測定が出来るようにするという事を保証しなくてはいけません。ゲルマニウムカウンターというものではなしに、今日ではもっと、イメージングベースの測定器というのが遥かに沢山、半導体で開発されています。何故政府はそれを全面的に応用してやろうとして全国に作るためにお金を使わないのか。3か月経ってそのような事が全く行われていない事に、私は満身の怒りを表明します。
内部被曝というものの一番大きな問題は癌です。癌がなぜ起こるかというとDNAの切断を行います。ただし、ご存じのとおりDNAというのは二重らせんですから、二重らせんの時は非常に安定的です。これが、細胞分裂をする時には二重らせんが一本になって、2倍になり4本になります。この過程のところがものすごく危険です。そのために、妊婦の胎児、それから幼い子ども、さらに大人においても増殖が盛んな細胞、たとえば放射性物質を与えると髪の毛、それから貧血、それから腸管上皮のこれらはいずれも増殖分裂が盛んな細胞でして、そういうところが放射線障害のイロハになります。一つの遺伝子の変異では癌は起こりません。最初の放射線のヒットが起こった後のもう一つ別の要因で癌の変異が起こります。α線はもっとも危険であります。トロトラスト肝障害を惹き起こします。
内部被曝というのは一般的に何ミリシーベルトという形で言われていますが、そういうものは全く意味がありません。ヨウ素131は甲状腺に集まります。トロトラストは肝臓に集まります。セシウムは尿管上皮、膀胱に集まります。これらの
体内の集積点をみなければ、全身をいくらホールボディースキャンやっても全く意味がありません。
トロトラスト、α線核種なんですが、α線は近隣の細胞を阻害します。その時に一番やられるのはP53という遺伝子です。人の遺伝子、配列、一人の人間と別の
人間は大体300万箇所違います。ですから人間同じとしてやるような処理は今日では全く意味がありません。どの遺伝子がやられて、どういう風な変化が起こっているかという事をみるということが、原則的な考え方として大事です。トロトラストの場合は第一段階ではP53の遺伝子がやられて、それに次ぐ
第二第三の変異が起こるのが20~30年かかり、そこで肝臓がんや白血病が起こってくるという事が証明されております。
我々アイソトープ総合センターでは、大体一回4人づつの所員を派遣しまして南相馬市の除染に協力しております。南相馬でも、20k、30kという分け方は全然意味がなくて、その幼稚園ごとに細かく測っていかないと全然ダメです。南相馬の中心地区は海側で学校の7割で比較的線量は低いです。ところが30k地点の飯館村に近い方の学校にスクールバスで毎日100万円かけて、子どもが強制的に移動させられています。このような事態は一刻も早く辞めさせてください。
緊急避難的除染と恒久的除染をはっきり分けて考えてください。緊急避難的除染を我々もかなりやっております。たとえば滑り台の下。滑り台の下は小さい子が手をつくところですが、この滑り台に雨水がザーッと流れてきますと毎回濃縮します。右側と左側とズレがあって、片側に集まっていますと、平均線量1μのところだと10μ以上の線量が出てきます。それで、こういうところの除染は緊急にどんどんやらなくてはいけません。それからさまざまな苔が生えているような雨どいの下。ここも実際に子どもが手をついたりしているところなのですが、そういうところは、たとえば高圧洗浄機を持って行って苔を払うと、2μシーベルトが0.5μシーベルトまでになります。だけれども、0.5μシーベルト以下にするのは非常に難しいです。それは、建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていますと、空間線量として1か所だけ洗っても全体をやる事は非常に難しいです。
食品、土壌、水を、日本が持っている最新鋭のイメージングなどを用いた機器を用いて、もう、半導体のイメージ化は簡単です。イメージ化にして流れ作業にしてシャットしていってやるということの最新鋭の危機を投入して、抜本的に改善して下さい。これは
今の日本の科学技術力で全く可能です。
緊急に子どもの被ばくを減少させるために新しい法律を制定して下さい。私の現在やっているのはすべて法律違反です。現在の障害防止法では各施設で扱える放射線量、核種等は決められています。東大の27のいろんなセンターを動員して現在南相馬の支援を行っていますが、多くの施設はセシウムの使用権限など得ておりません。車で運搬するのも違反です。しかしながら、お母さんや先生方に高線量の物を渡してくる訳にもいきませんから、今の東大の除染ではすべてのものをドラム缶に詰めて東京に持って帰ってきております。受け入れも法律違反、全て法律違反です。このような状態を放置しているのは国会の責任であります。全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところは沢山あります。そういうところが手足を縛られたままでどうやって、国民の総力を挙げて子どもが守れるのでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります。
土壌汚染を除染する技術を民間の力を結集して下さい。これは、たとえば東レだとかクリタだとかさまざまな化学メーカー、千代田テクノとかアトックスというような放射線除去メーカー、それから竹中工務店とか様々なところは、
放射線の除染などに対してさまざまなノウハウを持っています。こういうものを結集して現地に直ちに除染研究センターを作って…どうやって除染を本当にやるか、7万人の人が自宅を離れてさまよっている時に 国会は一体何をやっているのですか。