-写真の部屋-

奥野和彦

レンズ考5

2021-02-05 01:31:00 | 写真


レンズ考5「写真家」

私は芸術的な自分の創作だけで勝負する写真家には
ならなかった。
なれなかった、と言ってもいいけど
そもそも写真家という言葉が小っ恥ずかしい。
カメラマンであるか、暗室マンではあった。

24歳で入った写真の仕事をする会社で
たまたま出会った人とのつながりの中で
海外の写真家が日本でする写真展のために
暗室作業もさせてもらったし
2大広告代理店から来る、新聞広告用の商品撮影の
写真のプリントを日々眠れずにした事もあった。
その中で写真家や広告カメラマンが求める
この撮影に使ったこの「レンズ」の味を出して欲しいのだとか
白バックだけど
悲しい表情の白にしてくれだとか
引き伸ばし機に使うレンズを変えられないかとか
今日、ポスター用の写真撮るから
現場に来て、全部を見て
その雰囲気のまま現像プリントしてくれ、とか
そういう注文に応えているうちに
ザラザラの自分の写真とは違う
様々なトーンを教えてもらったし
何より鍛えられたし、感謝の言葉も頂いた。
別に、無理やりそうであろうとする気はないが
でも最近思うのだ。
これを「写真家」と言わずして何を写真家と呼ぶか。

写真家と自分が名乗れば、成れるようになって
まあ、どうぞご自由に とは思うけれど
取材現場でYoutuber兼写真家です、と名刺を渡される。
そして今日初めて使うんです、と言って
私に「フラッシュ」の使い方を聞く。