-写真の部屋-

奥野和彦

51F

2014-10-06 20:18:25 | 写真


ほぼ50年の生きている間に1度か2度台風の目に入った事がある。
1度ははっきりと覚えていて、台風のさなか、雨風が止んだと思ったら
すっかり晴れて、本当に静かになってセミが鳴き始め
トンボがスイースイーと飛んだ。
15分ぐらいでまた風が吹き始め、雨が降り出した。
「珍しいねえ、台風の目だったんだねえ。」と母が言った。

もう1回ぐらいそんな記憶があったような気がするが
定かでない。

電車の中でそんな記憶を辿っていて、ついでに思い出したのが
3歳まで住んでいた隅田川の沿いのアパートから
一番近くの水路の橋のたもとに防災倉庫があって
そこの倉庫の扉には三つ巴の紋が書いてある。
3歳の記憶だから、あとで「そうだったのだろう」という
憶測も含めての話である。

その倉庫の横っちょに看板が立っている。
あぶない!立ち入り禁止
泳いではいけない!  というようなセリフが書かれて
河童がおぼれて首だけ出してアップアップしている
絵が描いてあった。 カッパも溺れるほど危ないのだ。
カッパよりも「カッパが溺れるほど危ない」事の方が怖くて
なるべくそっち(絵)を見ないようにして
いつもそこは通り過ぎた。
いまでもそんな橋のそばにはカッパの絵の看板が立っているが
そんなもので子供が怖がるかというと
少なくとも私には十分効果があった。
或る子はまた違う怖がり方をしていた。
「あのカッパ、あの扉の中に いるんだぜ…」
オレは震え上がった。 それはいけない。それはヤバい。
当時、そういう事の表現にまだ ヤバい は使わなかったが。

カッパなんているわけない。ウルトラマンだって
怪獣だってみんな背中にYKKのチャックがついていて
そこから中に人が入ってんだ。
でも、やはりその防災倉庫は怖かった。
いつも怖くて想像する。夕暮れの防災倉庫の三つ巴のマークの
扉がガーン!と急に開いて飛び出して来る。
カッパだ!背中にYKKのチャックもついているのに
人が入ってるって分かってるのに怖い!怖いもんは怖い。




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