化学系エンジニアの独り言

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石油ピーク説と新技術による埋蔵量拡大

2005-11-10 | 石油
WTIが$70/bblをヒットしてから、にわかに石油ピーク説が台頭してきたように思います。朝日新聞にも「原油高」というコラムありました。記事の内容も含めて、まとめておきます。

現在の世界の原油需要は8,000万BDであり、このうちOPECからの供給量は2,800万BDとなっています。オイルショック以降、その影響力を低下させていたOPECは需要増加を背景としたこの原油高でその支配力を回復してきたとも言われていますが、増産余力がすでにあまりない、との観測もあり必ずしも影響力復活とはいえないようです。
しかしながら、BP統計によれば世界の確認埋蔵量1兆2000億bblのうち、75%が中東地区にあることを考えれば、まったく影響力がなくなるということは考えにくいものです。

付け加えてこの手の話になるとBPという一民間会社の統計や発表に頼らざるを得ないところにも、危うさがあると考えるべきである。

元Shellのキャンベル氏は2010年にも原油の生産量は頭打ちとなり、その間にも需要は伸び続けるだろうから、可採年数が減少していくことになると主張している。米国や北海ではすでにピーク時の1-3割生産量が減少していること、サウジのガワール油田(世界最大級の油田)でも自噴しなくなり、水圧法に切り替わっていることなどを、背景にこう主張している。

果たしてそうだろうか。一方、技術の進歩により原油生産量が増加したり、新たな油田の発見が今後も続くとの見解もある。油田開発には大規模な投資が必要だが、90年代の原油価格低迷期にそのような投資が行われなかったため、近年の油田発見量(確認埋蔵量の増加)が少ないだけの話である、との主張がある。事実出光興産や大阪ガスの北海油田の鉱区ではこの15年間で可採埋蔵量が1.5倍になっているとのこと。
サウジ石油相も今後開発投資をすればサウジの確認埋蔵量は1.7倍になると野見解をあらわしている。

今後の技術の進歩によるのだから、数値として確約できない部分もあろうが、地球上に存在する油田はすでに発見され尽くしており、後はそれを食いつぶすのみという考え方はおかしいでしょう。

確かに自噴しなくなった井戸もあろうが、別の採掘方法をとれば今まで以上に原油を生産することも可能である。現状は埋蔵量の3割程度を掘ったらそれでその井戸出の生産を終了しているという話である。残りの7割を取り出すにはお金がかかるのでそれ以上は掘らないということであろう。ということは、技術の進歩により採算が取れるようになれば残りの7割を採掘できることになる。

結局のところ、石油ピークがいつか来るのは間違いないが、それが2010年という確証はどこにもなく、もっと大分先と考えるのが妥当と思う。