化学系エンジニアの独り言

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世界の石油会社の勢力地図

2006-07-20 | 石油
国際石油会社・メジャーとは、原油の開発、生産、精製、販売といういわゆる上流から下流まで一環操業を行なう企業です。かつては、エクソン、モービル、テキサコ、ソーカル、ガルフ、シェル、BPがセブンシスターズと呼ばれ(何でブラザーズではないのか分かりませんが)た時代があった。しかし90年代の原油価格低迷期に大型合併があり、現在はエクソンモービル、シェブロン、シェル、BP、トタールの5社になり、スーパーメジャーと呼ばれている。さらにかつては独立系と呼ばれていたコノコフィリップスなどもメジャーと呼んでもよい位の規模になっている。

産油国いわゆるOPECとこのメジャーが原油価格の主導権を争うという図式がしばらく続いていたが、ここにきて国営石油会社という新たな勢力が台頭してきており、石油会社の勢力地図は大きく変化している。特に中国やインドなどのアジアの国営石油は積極的にM&Aを仕掛けており、中国のCNOOCがアメリカ・ユノカルをシェブロンと争ったのは記憶に新しい。結局国防上の理由から議会の反対に合い、CNOOCのもくろみは達成されなかった。しかしその後CNOOCはペトロカナダの持っていたシリアの利権を買い取るなど、積極政策に変更は無い。

中国の国営石油にはSinopec、CNPC、CNOOCがあるが、いずれも中長期的なエネルギー確保という中国共産党の政策要求に答えるため、積極的な買収を継続しているのであろう。

国営石油は政府という強いバックアップを受けて、国際石油市場で大きな影響力を持つようになってきている。ロシアのガスプロムが天然ガス価格交渉でガス供給停止という強硬手段をいともたやすく使ってきたのも、国営石油会社ならではである。もっとも、ロシア政府の意向によりガスプロムが動いたと考えるのが普通ではあるが。

国営石油会社の資産買収に当たっては、政府のエネルギー安全保障・確保という政策に沿って、買収価格が高かろうと経済性を抜きにして進めている、したがって国際石油会社はその割を食って、石油資源・資産価格が上がってしまっている、という指摘がある。

Wood Mackenzie社のアナリストはこの意見を否定している。確かに油田資源資産の買収価格は2004年当初は22ドル/バーレルであり、2006年初では40ドル近くまで高騰はしている。しかし、国際石油会社と国営石油の買収価格を比較すると、むしろ国際石油会社のほうが買収価格は高くなっている。というわけで、国営石油会社がなりふり構わず石油資源を買いあさっているという言い方は、妥当では無いだろう。

とはいえ国営石油の勢力が台頭していることには間違い無い。このような中にあって、日本の会社は世界の中の石油資源確保という競争に伍していけるだろうか、という問題提起がある。脱石油、石油代替エネルギー開発と確保は待ったなしの状況ではあり、進めていかなければならないが、これはあくまで中長期的な課題であって、この冬の灯油の確保も怠ってはならない。