化学系エンジニアの独り言

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GTL軽油

2006-07-24 | ガス
GTLは石油代替エネルギーの一つです。天然ガスから液体燃料、特に軽油を合成するので、非化石燃料ではありませんが、一次エネルギーの石油依存度を下げることには貢献します。

石油依存度を直接下げるために天然ガス自動車の導入が考えられますが、車の改造に費用がかかる、天然ガススタンドが少ない、連続走行距離が短いなどの理由で、日本での普及率はなかなか向上しないのが現実です。

そこで、自動車の改造をしなくてすむように、天然ガスを自動車でそのまま利用できる液体燃料に変えるのがGTL技術です。日本ではいまだ、商業プラントは稼動していませんが、世界では確実に増えていくようです。

GTL軽油を使ったモーターレースの話題が二つあります。
一つ目は先月行なわれたルマン24時間レースです。アウディスポーツが優勝しましたが、燃料はシェルのビンツルプラント(マレーシア)で製造されたGTL軽油をブレンドしたものです。耐久レースでディーゼル車がガソリン車に勝ったのは初めてだそうです。

二つ目はOryx GTLプラントの落成式イベントです。南アフリカのサゾールブルグからドーハまで10,000kmを6週間かけてトヨタハイラックスで走破したものですが、燃料はサゾールのGTL軽油でした。

Oryx GTLプラントは330MMcfdのカタール・リーンガスから34,000BDの超低硫黄軽油と24,000BDの一般軽油と9,00BDのナフサと1,000BDのLPGを生産します。これはカタール石油とサゾールの合弁ですが、2010年までに100,000BDへの拡張計画があります。

他に2010年にはシェルとカタール石油の合弁GTLプラント、2011年には能力145,000BDのカタール石油とエクソンモービルの合弁プラントが計画されています。カタール当局者は2010年までにカタールのGTL能力は800,000BDに達すると予想しています。

ヨーロッパの車はディーゼルがメインですが、米国はガソリン車がメインです。そこで米国でのGTL軽油の普及はスクールバスに代表されるような大型車になるものと考えられます。

ガスを液体燃料にすることで輸送や貯蔵の利便性が向上し、エネルギー密度が大きくなるので自動車にも使えるという利点のあるGTL技術ですが、課題は以下の二つです。

一つはコストです。GTLプラント建設コストは$25,000から$45,000/BDといわれており、これは通常の製油所建設コストの3倍近くになっています。昨今の原油高によりこの建設コストが賄えるかどうかが課題です。

二つ目はエネルギー効率です。GTL軽油の製造エネルギー効率が低すぎると、実質の自動車からのCO2排出量が減らないことになります。以上の二つのポイントを検証することが大事です。