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アルバータ・オイルサンドの増産

2006-10-19 | 石油
アルバータ州はオイルサンドの生産量が今後10年間で3倍になると発表しています。EUB(Alberta Energy and Utilities Board)は5月に発表したレポートで今後の見通しの詳細に言及しています。現在のオイルサンド(正確にはビチューメン)の生産量は1.06 million b/dですが、2015年には2.90 million b/dまで増産するというものです。

アルバータ州には北部のFort McMurrayを中心とするAthabasca、その西側のPeace River、Edmontonに近くCold Riverの三つの鉱区があります。これらをあわせた原始埋蔵量は1.69 trillionバレル、確認埋蔵量は173 billionバレルといいます。

現在開発中の鉱区では10.2 billionバレルの総生産が期待されています。ちなみにこれまでに5.0 billionバレルを累積で生産してきました。オイルサンド生産で最大のSyncrude社のHPをみるとトップページに操業開始以来の生産量(約1.69 billionバレル)の数値が表示されます。秒を刻むようにその数字が増加しており、この数値の増加具合が彼らの誇りだと良く分かります。

オイルサンドの生産方法にはsurface miningとin situ法とがあります。Surface mining
は地表からオイルサンドを掘りだし、これよりスチームや溶剤を使ってビチューメンを抽出します。回収率は80%と高くなりますが、土を掘り起こして、また埋め戻すという手間がかかります。

これに対してin situ法は地中(深度10-15m)に水平方向に上下に2本の管を配置し、上方管よりスチームを土中に挿入します。周囲のビチューメンは粘度が下がり下方に移動してきますので、下方管よりそれを吸い上げる方式です。土を掘るのに比べてランニングコストは小さくできますが、土中のビチューメンを完全に回収することはできず、回収率は20-50%と低くなります。

EUBは2015年にminingで1.8 million b/d、in situで1.1 million b/dを生産すると予想しています。MiningではSyncrude, Suncor, Albianといった会社が、in situではPetro-Canadaが主なプレーヤです。現在、 in situ法では8,000本のwellが稼動しており、一本あたりの平均生産量は56b/dだそうです。

ビチューメンは超重質油ですから、そのままでは既存の製油所で処理することができません。そこで、水素化分解や熱分解により低粘度で水素分の多い人造原油に転換します。

North American社では2016年までに16万b/dの人造原油プラントを建設予定ですが、その中核になるのがコーカーとガス化プラントです。コーカーによりビチューメンを熱分化し、生成したコークスをガス化してスチームや電力を得ます。最終的に排出されるCO2は原油回収(EOR)に利用することもできるとしています。

またin situ法で大規模な開発を進めているPetro-Canadaもエドモントン郊外に人造原油プラント(32万b/d)を2014年に完成させるとしています。同社はオイルサンド開発の老舗であるSyncrudeに出資しているのでSyncrudeの技術と経験を導入できる点が優位です。Petro-Canada社のオイルサンド生産コストは6ドル/バレルだそうで、同時に1 Mcfの天然ガスが生産できるそうです。足元の原油価格から見て十分に採算が取れ、それゆえ多くの石油会社などがこぞってオイルサンド開発を加速していることが理解できます。

アルバータ州は人口320万ですが、そこでこれだけの化石燃料資源が生産されることはうらやましい限りです。