野口裕之の軍事情勢
平成26年の改正国民投票法成立に際し、学校での憲法教育につき、衆院憲法審査会が《充実を図る》、参院憲法審査会にいたっては《充実及び深化を図る》とする附帯決議を実施した、動かしがたい事実だ、しかし、《充実・深化》は果たして行われているのか? 行われているなら、「正しい」方向に向かっているのか? 少なくとも、後者の答えは「ノー」だ、小欄は過去「国家の生存・存立は憲法に優先する」と、繰り返し主張してきた。「国家の生存・存立は憲法以前の問題」であり、「憲法守って国滅ぶ」の愚を犯してはならぬのだ。出自の怪しい憲法の制定史も、まともに教えない中学校の公民教科書の多くに「政治的悪臭」が漂う、臭いの元は、学習指導要領の“悪用”だ。校外でも、悪臭が鼻を突く。早くも参院選前、学校の門前で、わが国の国防を弱体化させる主張を、子供たちに押し付ける大人が続出した。18歳以上の参政権付与で、学校は「内憂外患」にさらされている、中学校に向けた現行の学習指導要領・社会科の〔公民的分野〕にはこうある、《日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本的原則としていることについての理解を深め…》、《日本国憲法の平和主義について理解を深め、我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせるとともに、核兵器などの脅威に着目させ、戦争を防止し、世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育てる》、「ある種の人々」の“読解力”にかかると、以上の学習指導要領は以下のトーンに変換されて、頭に跳ね返り、蓄積されていく、《日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び無抵抗平和主義を唯一絶対的な原則としていることについての洗脳を深め…》、日本国憲法の無抵抗平和主義について洗脳を深め、我が国の安全と防衛及び国際貢献について思考停止させるとともに、憲法第9条さえ有れば、核兵器などの脅威や戦争の防止、世界平和確立は達成できるとの思想を育てる》、ある種の人々」が、上流の教科書会社関係者なのか、中流の教師なのか定かではないし、両者の期せずしての“連携”かどうかも不明だ。いずれにしても、下流で憲法教育授業を受ける生徒は、紛れ込んでいる「異物」に汚染されている。投票所に足を運ぶ18~19歳も現行の学習指導要領に基づき、「教育」された世代だ
「いわゆる平和主義」路線はまた、多くの教科書が触れる自衛隊違憲論と表裏一体の関係を構成する。参院選公示以前に「自衛隊は憲法違反なのは明瞭だ」と、既に公言した共産党の志位和夫委員長の思想ともピタリと合致する
反面、中国や北朝鮮、旧ソ連→ロシアの軍事膨張&侵略的傾向に備え、自衛隊=違憲を回避せんと、歴代保守系政権は法的解釈を積み重ねてきた。何よりも、国内外の大災害の復旧・人道支援活動や国連のPKO(平和維持活動)など瞠目すべき活躍に、サヨクに毒されていない平均的国民が目覚め、自衛隊を「国家的財産」として歓迎している、日本国憲法第9条に《戦争放棄》や《戦力の不保持》を認める。憲法前文も《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》と唱える。が、自衛目的の攻撃力保有にまで反発する拡大解釈された《戦争放棄》や《戦力の不保持》こそが、日本周辺の敵性軍事独裁国家の歓迎するところ。スキあらば攻めてこよう。日本国憲法は、キナ臭いアジアはじめ国際の情勢をおよそ無視している。
参院選公示前、日本記者クラブの党首討論会で志位委員長は、集団的自衛権を限定的に容認する「安全保障関連法によって(日米同盟は)『血の同盟』になったのではないか」と、法案成立を主導した安倍晋三首相(自民党総裁)を批判したが、集団的自衛権の本質を理解しているとお見受けした
志位委員長が、安保関連法への「レッテル貼り」をしたか否かは承知せぬが、仰せの通り「軍事同盟」とは「血を流す覚悟」を締結の最低条件とする。日米同盟も、わが国が直面する危機の規模・性質次第で『血の同盟』と化さねば力を発揮できない。