ウクライナ軍によるロシアへの大規模な反転攻勢に対し、露軍は攻撃ヘリの大量投入や通信妨害といった新しい手法で抵抗している。南部では重層的な防衛線を敷き、ウクライナ軍を阻む狙いだ。米欧はウクライナに防空システムの供与などの支援を表明したが、反転攻勢は長期化する可能性も指摘されている。
■士気低下も
戦況を分析する米政策研究機関「戦争研究所」は15日、東部ドネツク州南西部から南部ザポリージャ州西部に延びる二つの戦線の情勢に関し、「露軍はドクトリンに沿った秩序だった防衛を維持している」との見方を示した。
露軍の防衛で注目されるのが、敵の通信を妨害する「電子戦装置」の積極運用だ。ウクライナの大規模反攻は、工兵なども参加する「諸兵科連合」作戦で、通信が遮断されると部隊間の連携が困難になる。
露軍は通信を妨害しながら、これまで温存してきた対戦車ヘリや自国製の自爆型無人機「ランセット」を使って、ドイツ製戦車レオパルト2や米国のブラッドレー歩兵戦闘車を狙い撃ちした。4月に流出した米政府の機密文書で、ウクライナ軍は前線で使う主要防空システムの弾薬が不足していることが暴露されており、空からの攻撃は弱点を突かれた格好だ。
露軍はウクライナが反攻を仕掛ける地域で、塹壕(ざんごう)を掘り、地雷原を敷くなど防衛線を築いている。南部には精鋭部隊を配置しているとされ、目的地の奪還に100キロ・メートル程度の進軍が必要なウクライナ軍の行く手を阻む形になっている。
米戦略国際問題研究所(CSIS)は、露軍の防衛線に関する分析で、露軍の約1000キロ・メートルに及ぶ防衛線のうち、南部ザポリージャ州が最も重層的で強固だと指摘した。中間地点にあるトクマクには環状に防衛線が張り巡らされているという。
一方、英国防省は露軍の防御に関し、統率が乱れている部隊があると指摘する。露軍はこれまでの戦闘で消耗し、士気が下がっているとの見方もあり、ウクライナ軍が付け入る隙になる可能性がある。
■米欧長期支援
露軍の激しい抵抗に遭うウクライナに対し、欧米諸国の国防相は15~16日、ブリュッセルで軍事支援会合と北大西洋条約機構(NATO)国防相理事会を開催し、長期的にウクライナ軍を支援することを確認した。15日の支援会合には約50か国が参加し、米国、英国、デンマーク、オランダの4か国が共同で、数百発のミサイルを含む防空システムをウクライナに供与することを表明した。
国防相理事会では、ウクライナに供与する弾薬の増産や、反転攻勢で損傷したウクライナ軍の兵器や装備を迅速に修理する具体策が協議され、ウクライナの兵たんを支えていく方針を確認した。16日には、米国の核運用を情報共有する「核計画グループ(NPG)」が開催され、ベラルーシでロシア戦術核の運搬が始まったことへの対応を協議したとみられる。
米国のオースティン国防長官は「戦いは短距離走でなくマラソンだ」と述べ、ウクライナの反転攻勢が長期化するとの見通しを示した。
読売新聞
パレスチナで中国が存在感を高めている。パレスチナ自治政府のマハムード・アッバス議長は15日まで中国を訪問し、協力関係の強化で一致した。自治政府の腐敗を問題視する欧米からの支援が停滞する中、中国の積極的な資金援助が目立っている。(パレスチナ自治区ラマッラ 福島利之)
■中国語授業
自治区ヨルダン川西岸の拠点都市ラマッラ北東のアイン・メシュバフ地区に2021年5月、最新のコンピューターや太陽光発電施設を備えた3階建ての公立小学校校舎が完成した。
中国の資金で建てられたもので、校舎正面には「マドラサ・シーニー」(中国の学校)とアラビア語で大きく書かれている。その脇には、「中国援助」と漢字で書かれた看板が掲げられている。
カリキュラムは、他の学校と同じで、近所のパレスチナ人の小学生の男児約650人が通う。今回のアッバス議長の訪中で自治政府と中国は14日、自治区内で中国語を教えることで合意した。この学校でも、中国語の授業が始まることになりそうだ。
付近には、「中国道路」と呼ばれる中央分離帯に樹木が植えられた近代的な道路やロータリーが21年に完成した。地元記者は「この地区は自治区で最も整備された一角の一つとなった」と指摘する。
■政治的役割
中国は、1950年代からゲリラ闘争を支援するなどパレスチナと良好な関係を保ち、パレスチナ解放機構(PLO)が88年に「国家独立」を宣言すると、5日後に承認した。最近は中東での米国の影響力低下に伴い、パレスチナ和平案を示すなどの政治的役割も前面に打ち出している。
欧米諸国は、自治政府の腐敗や人権問題を取り上げて支援を停止することが多い。自治政府の財政は困窮しており、条件を付けない中国からの支援が拡大している。
パレスチナの政治アナリスト、ムハンマド・ダラーハメ氏は、中国の影響力について「米国の保護下にあるイスラエルが中国を仲介役として容認しないことは自治政府も分かっている」と述べた。その上で、「自治政府が中国に最も期待するのは資金提供だ」と指摘した。
読売新聞
16日午後6時ごろ、神戸市東灘区の無職女性(76)が「携帯の利用料金が未納と言われ、現金125万円を振り込んでしまった」と同区内の交番に届け出た。兵庫県警東灘署は特殊詐欺事件として調べる。 署によると同日、女性のスマートフォンに「ご利用料金についてお話したいことがある」というショートメールが届いた。指定された番号に電話をかけると、通信会社の社員を名乗る男から「料金未納により裁判沙汰になる。訴訟を取り下げるためにはお金を振り込んでもらう必要があり、弁護士費用も必要」と言われた。 女性は指示に従い、同区内のATMから5回に分けて計125万円を振り込んだ。金融機関から「詐欺に遭っていませんか」との電話を受け、被害に気づいたという。 神戸新聞
茨城県つくば市の国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」の研究データ漏洩(ろうえい)事件では、海外への先端技術流出を防止する難しさが浮き彫りとなった。海外からの優秀な人材は日本の技術発展のために欠かせないが、情報管理の基準が甘かったことは否めない。国益を大きく損ないかねず、経済安全保障の観点からも重要な問題だけに、スパイ行為自体を取り締まる法律がない中、政府や警察当局の対策強化と、機密情報の取り扱いを厳格化する制度の導入などが急がれる。 不正競争防止法違反容疑で警視庁公安部に逮捕された産業技術総合研究所の上級主任研究員、権恒道容疑者(59)は、平成14年4月から産総研で働くかたわら、18(2006)年に北京理工大の教授に就任。同大と権容疑者の出身校の南京理工大は、中国人民解放軍と関係があるとされる「国防7校」と呼ばれる
産経新聞
長野県中野市で住民女性と警察官計4人が殺害された事件で、県警は16日、玉井良樹警視(46)=2階級特進=を刃物で刺し殺害したとして、殺人容疑で青木政憲容疑者(31)を再逮捕した。県警捜査1課によると、「覚えていない」と容疑を否認しているという。 一方、長野地検は同日、池内卓夫警部(61)=同=への殺人容疑について処分保留とした。責任能力を調べるため、鑑定留置を検討しているもようだ。 再逮捕容疑は、5月25日午後4時40分ごろ、中野市江部で玉井警視の胸を刃物で刺し、殺害した疑い。 捜査関係者によると、青木容疑者は通報で駆け付けたパトカーに向けてハーフライフル銃を発砲し、運転席にいた池内警部が胸を撃たれて死亡。助手席の玉井警視は腕に被弾し車外に逃れようとした際、「ボウイナイフ」と呼ばれる刃渡り約30センチのナイフで襲われた。複数回刺され、腕から心臓に達する刺し傷が致命傷となり亡くなった。 時事通信
北朝鮮のミサイルが、兵庫県の漁船近くに落下したことを受け、斎藤元彦知事(右)に対応を申し入れる県漁協連合会の田沼政男会長(中央)=神戸市中央区
北朝鮮が15日に日本海へ2発の弾道ミサイルを発射したことをめぐり、兵庫県は16日、ミサイルが日本海で操業していた浜坂漁協(同県新温泉町)所属の漁船の近くの海域に落下したと推定されると発表した。 県や同漁協によると、漁船は15日夜、日本海の好漁場・大和堆で甘エビ漁を行っていたが、約50キロ北の海域にミサイルが着弾したとみられるという。船長以下12人の乗員にけがはなかった。 県漁協連合会の田沼政男会長や浜坂漁協の川越一男組合長らは16日、県庁を訪れ、漁業者の安全確保などを国に要請するよう斎藤元彦知事に求めた。川越組合長は「日本海が北朝鮮のミサイルの墓場となってしまっている。日本の漁船の安全の担保に、国が責任を持ってほしい」と語った。
産経新聞