「イスラム国」勢いに衰え…シリア要衝から撤退
【キリス(トルコ南部)=酒井圭吾】シリア・イラクの要衝から26日、イスラム過激派組織「イスラム国」が撤退したことが明らかになり、同組織を空爆する米国などの「有志連合」からは、イスラム国の勢いの衰えを指摘する声が出ている。
イスラム国が同日、アフガニスタンやパキスタンの過激派への「秋波」とも受け取れる声明を公表したのも、反転攻勢への活路を見いだすためのようだ。
「2日前までにアイン・アラブから砲弾の音が消えた。今、代わりに聞こえるのは祝いの花火だよ」
アイン・アラブ周辺の町に住む飲食店従業員シャムスさん(32)は26日夜、本紙の電話取材にそう語った。フェイスブック上には、アイン・アラブの住民が踊ったり歌ったりする写真が多数、投稿されている。4か月間に及ぶ激戦の末に勝利し、喜びに酔いしれているようだ。
戦闘は有志連合の後方支援もあり、クルド人勢力が戦況を徐々に好転させた。一方のイスラム国は「宣伝戦」と位置付けた戦いに敗れ、大きな痛手を受けた。米国は「完全掌握ではない」との見方を示す一方、米国防総省のウォレン報道部長は26日、記者団に対し、「イスラム国が衰えている証拠だ。(クルド人勢力に)勢いがある」と優勢な状況を強調した。
イスラム国が支配するイラクやシリアの領域に対し、有志連合はほぼ連日、空爆を実施。ケリー米国務長官は22日、「イスラム国の指揮官の半数と戦闘員数千人を殺害した」と表明した。原油価格低下で収入も減少し、シリアの反体制武装勢力イスラム戦線のメンバー(27)は、「破竹の勢いが止まった。焦りがあるはずだ」と指摘する。