ベンチのフレームを仮組みしているところです ↓
私が普段作る家具に使用する材種のほとんどは地元屋久島産の杉です。
屋久杉ではありませんが、内地の杉と比べると若干硬くて重量感があります。
とは言いましてもやはり杉ですので、一般的な家具に使われる材種(広葉樹など)に比べますと
柔らかくて傷つきやすいという特徴があります。
何故、杉かといいますと、それは単純に入手性が良いということにつきます。
また、日曜大工から始めた独学木工ですので、家具は広葉樹で作るのが一般的という
概念がないのも理由のひとつです(プロの木工家から見ますとオイオイと突っ込まれそうですが)。
それと、高級・工芸品を作るわけでなく、普段使いの馴染みやすい家具づくりをしているのも杉は都合が良いです。
更にもう一つ加えるならば、あの優しく柔らかい感触がいいですねー。
杉以外での家具製作の経験は、今のところセンダン、クスノキ、ヒメユズリハ、山桜、ダブノキくらいでしょうか。
いずれも屋久島産の樹種ばかりです。
まあ、ようは屋久島産以外の材種を取り寄せてまで家具を作ったことが無いということになります。
前置きが長くなりましたが、家具製作の工程の一つに仮組みをしています。
これの必要性は、実際に組み立て前にホゾがホゾ穴に間違いなく入るかどうかの確認です。
昔は、部材に接着剤をつけて、気合を入れて、組み始めたのはいいのだけれども、
加工精度が悪かったり、加工寸法そのものが間違っていたりで、
いざ本番に組み立てが進まないなんてハプニングもあったりして、
こうなると慌てて取り外しますが、何せボンドが効いていたりするものですから簡単には外れません。
やっと外せたのはいいけれど、そのボンドを取り除き、水で拭いてきれいにして、
乾燥させてからやっと加工しなおしてと大変な時間のロスになります。
最悪の場合は部材そのものが再利用できなくなり、一から作り直しなんてこともありました。
こんな時はなかなか冷静ではいられなく、自己嫌悪に陥ったものです。
そんなこんなで少々手間はかかりますが、今では仮組みをするようにしています。
この辺は恐らく広葉樹での家具製作でも同じだと思うのですが、
杉で作る場合、仮組みの必要性がもう一つ。
何度も言いますが、杉は柔らかいです。
強い圧力を加えれば容易に凹みます。
つまり、ホゾ(凸)とホゾ穴(凹)を同じ寸法で加工して組んだ場合、
特に椅子など荷重が加わる家具ですと使っているうちにホゾが緩んでくることがあります。
杉の場合はてき面に緩むのが早いです。
ですので、予め凹み(収縮)分を想定して、ホゾ穴に対してホゾを縦方向へ幾分か大きく加工しておきます。
余談ですが、縦でなく幅に対して寸法を大きくした場合、木の繊維方向(縦)に対して直交しますので、
ホゾ穴の部材は縦に裂けてしまうことがあるので要注意となります。
どのくらい大きくするかはその材によりますが、大体、縦30~50mmくらいのホゾ穴に対して、
ホゾをプラス1~1.5mmくらい大きく作っています。
常識で考えれば、これでは普通に組み立てようと思ってもホゾ穴にホゾは入りません。
組む前には凸側の角を玄翁で叩いて木殺し(潰す・凹ます)、もしくはノミなど刃物で角を落としておきます。
この状態では先の部分しか入らないので、位置を合わせたらクランプで締めこんでいきます。
ここが杉ならではと思いますが、
これはホゾを潰し(変形)ながらホゾ穴へ押し入れていきます。
ですので一度ホゾ穴へ入れた材を引き抜きますと、縦寸法が1mm前後小さくなっています。
杉の場合、柔らかい分、加圧された反面、元へ戻ろうとする力があると思われ、
そこへ木工ボンドの水分が木に吸収され膨張する力も加わる作用により、
がっちりと組むことが出来ると勝手に考えています。
更に、要の箇所には念のため、木工ビスによる緩み止めの補強をしています。
まあ、相手は千差万別の木ですから100%ではありませんが、
柔らかい材を使う以上、できる範囲での配慮をしているこということです。
ちなみに四方胴付きホゾの場合の仮組みは、最後まで入れずに半分くらいのところで止めておきます。
つまり、半分くらいホゾを凹ませ、馴染ませて置くのがみそという訳です。
これは実際に組む時に、ホゾ穴への負担を減らすためにしています。
この辺のさじ加減は勘(思い込み?)ですが。
試行錯誤はいつまでも続きます。