弁当箱の試作品を製作することになり、その記録をこのブログで紹介することにします。
数ヶ月前、知人より、弁当箱の試作品の製作依頼を受ける。
その弁当箱とは、昔々、集落行事(おそらく岳参りなどの神事)にて使用していたものだが、
残念ながら、今では、その弁当箱はほとんど現存していないとのこと。
この度、奇跡的に残っていた現物を預かり、まずは試作品として、一つ製作することになった次第です。
今後、この弁当箱を集落行事に活用して、地域を盛り上げていきたいという知人の思いに協力することになりました。
現存していた、一人弁当箱 ↓
正面の蓋を引き上げると ↓
三段の重箱が収納されています。
箸は、正面蓋の裏側に斜めに入れてあったと思われます。
この弁当箱の箸は紛失して残っていませんでした。
外形寸法は、縦横145mm角で、奥行きは110mmと小さいサイズとなっています。
材料の樹種は、屋久島ではよく見かけるセンダンです。
塗装は、柿渋と漆塗りと思われます。
重箱の内側には、赤色系の鮮やかな漆が施されており、
小さいながらも重箱としての風格が漂っています。
また、取っ手をはじめ、角を守る各種金具も取り付けてあり、
格式高い仕上がりとなっています。
さて、この度、この弁当箱をそのまま復活させたいところではありますが、
独学で、個人で細々とやっている家具屋にとっては、なかなか難しいものであります。
そんな事情を察してか、ご依頼主は、全く同じように作らなくても結構とのこと。
材の厚みや寸法などの仕様も変更しても良いとのお言葉を頂きましたので、
出来る範囲で全力を尽くし、頑張って製作していきたいと思います。
とまあ、前置きが長くなりましたが、本題である製作記録を記していきます。
記録といっても、一人で作りながら、一人で撮影していきますので、
仕事に夢中になっている時や、時間的に余裕がない時は、写真を撮り忘れたり、記録がとびとびとなったりしますのでご了承ください。
まずは、既に製材が終わって乾燥しているところです ↓
天気に恵まれましたので、良く乾きました。
乾燥により板に反りや捻じれが出ています。
修正が難しい部分は切り取って、良い部分を残します。
殆どの板材の仕上げ寸法は6mmとなります。
薄いですね。
この薄さでの家具の製作は初めてです。
あまり薄い材を自動カンナへ通す場合は、
このように厚みのある板の上に、削る材を乗せて一緒に機械に通します ↓
この機械にはローラーがついており、その段差は、はがき一枚分くらい厚みのなのですが、
短い材もしくは薄い材を、そのまま機械に通すと、その段差による段差がそのまま板材に反映されてしまい、
段差の分だけ、板材に段がついて仕上がってしまいます。
先ほど、6mmが薄いと言いましたが、正面の蓋の厚みは、更に薄く、
その厚さ、たったの3.5mm ↓
板目では反りやすいので、柾目にしました。
柾目も割れやすいので要注意です。
厚みを揃えた材をペーパーがけしてます ↓
下処理として使うもの ↓
柿渋と、との粉。
この弁当箱で使うセンダンという樹種は、導管が大きく、また、木材表面に小さな穴がいくつも開いていることがありますので、
木地を整えるために、水で薄めた柿渋へ、との粉を入れて、練っておきます ↓
既製品のとの粉の他に、同じ材であるセンダンのとの粉(ペーパーがけで出たもの)も混ぜます。
ウエスを使い、板材へすりこんでいきます ↓
センダンの材は特に水引が大事です。
これを怠ると、塗装した後に、表面が荒れてしまいます。
予め、板材に水分を一度含ませて、圧縮されていた木の繊維を戻してから、再度ペーパーをかけて整えると、きれいに仕上がります。
今回は、柿渋での着色、との粉による木地調整、水引と、一石三鳥となりました。
乾燥の後、再度、ペーパーがけをして、今度は柿渋の原液で塗装して、今日の仕事はおしまいとしました。
この製作記録は、しばらく続く予定です。