突然の災害への備えは何か?
2011年の3月11日は特別な日となることでしょう。被災されたみなさまに深く哀悼の意を表します。
宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の大地震と、それにつづく東北から関東にかけての太平洋岸に押し寄せた潮位15メートルに達する津波は、推定2万人を飲み込み、その多くの尊い生命を奪う大災害となりました。
自宅を失い、親を亡くし、子を早世させた被害者総数は50万人。緊急避難所となった小中学校などの体育館に身を置く被災者は、死と隣り合わせの恐怖体験の後、生き残った者固有の深い心の傷を負い、日々の生活をしのいでいます。
この原稿を書いているのは新幹線のぞみ車中。昨夜の緊急テレビ生出演の記憶も生々しい3月19日。あの地震から1週間が過ぎたほかほかと暖かい春の日差しが漂う午前。富士山の残雪を照らす光景を窓超しにみながらキーを打っています。
昨夜のBSフジ「プライムニュース」は、避難所生活が一週間を過ぎた今、被災者へのケアが必要であることをアピールする主旨で企画されました。3日前に出演交渉を受け、前日にラフ台本をメールで受けとっただけで出演。八重洲口を出てすぐハイヤーでお台場のフジテレビに到着。控え室で担当プロデューサーやディレクタと挨拶する間にメイクさんが顔のテカリをとる化粧。
小宮山厚生労働副大臣が到着。「ずっと副大臣室のソファーで寝ているのよ」と少しハイテンションの挨拶のあと、子どもへのケアをきっちりやりますよと持論を展開。災害ボランティア担当政務官の辻本清美氏は現地から戻れず、代わりに避難所の取材を続けていたイケメンの橋本記者から現地の様子を聞く。こちらも被災地取材が始めてなのでハイテンション。
8時スタートの番組は、管総理大臣の緊急記者会見の予定が入ったので、原発事故がらみかとプロデューサーや司会者はその場で台本を修正。番組スタート直後に管総理の記者会見。「国民みんながんばってください」という長説教に出演者らはイライラ。大事なプログラムの1つが短縮された憤りとは違う、微妙な空気が漂いました。番組中に流れた避難所の生中継では、子ども達がVサインを作り、にこにこ笑いながら駆け回っている姿が印象的でした。
私は、震災の後、時間経過につれて現れる心身の症状について、テロップをつかって解説。子どもへの特別な配慮の必要性を、阪神淡路大震災後のケアの経験をもとに訴えました。今は元気そうな避難所の子ども達は、実は何が起こっているのか全く理解できていないのです。地震や津波が原因で住む家を失い、体育館で段ボールを壁にして生活するはめになったことなどわかるはずはありません。親切な大人たちや、カメラを抱えた取材陣が、自分たちに働きかけてくれるのを、無垢な感覚で応じ、はしゃぐことによってその場をつくろっているのです。
そういえば、阪神淡路大震災の一週間後、西宮や神戸の小学校に取材陣が入り込み、困窮する生活に疲れた被災者をテレビカメラの前に立たせて政府の無策を訴える材料としていました。混乱した生活の原因は直下型の地震でした。1週間後の避難所生活は、辛いものがありました。これからどうしようという不安、どうしようもないと塞ぎ込む鬱症状、整理できない精神的混乱状態からくる怒りなどが最大級にふくれあがるこの時期。マスメディアは過剰な不安をかこち、怒りの矛先を政府の対応の不備・行政の滞りと無策に帰属させていました。同じ事がまた繰り返されようとしています。
被災者へのケアは次の4段階でなされるべきでしょう。
1 震災から3日間 生命確保、生存者救出、不明者捜索、外傷の治療
2 震災から3-1週間 避難所生活への適応支援、物資配給、病者への医療確保
3 震災から1週間ー1ヶ月 個別対応、メンタルヘルス対応、脆弱者(子ども、高齢者)対応
4 震災から1ヶ月以降 通常の生活への復帰支援、通常の生活の場でのストレスマネジメント教育介入
被災者のために何かしてあげたいという暖かい気持ちをもった多くの人は、テレビでみた被災者の惨状を見て、すぐさま現地にかけつけて心のケアをしてあげたいと思うことでしょう。
震災から1週間を経た今、メンタルヘルスへの対応がスタートします。
心のケア専門家が、被災者に個別対応していては賄いきれません。
精神科医を日本中からかき集めてさえ、37万人の被災者の心のケアには対応不可能です。
他人の心の問題に対応するには相応の訓練が必要です。医師や看護師でも不可能です。被災者に対してもよい結果は生まれませんし、当人の心の健康が危ぶまれる事態にもなります。
災害はいつも突然訪れます。突然の災害への備えとは、こうした非常事態に対応できる「心のケア専門家」を育成することでしょう。心理士の国家資格が今こそ必要だとおもいました。
2011/03/19・記
2011年の3月11日は特別な日となることでしょう。被災されたみなさまに深く哀悼の意を表します。
宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の大地震と、それにつづく東北から関東にかけての太平洋岸に押し寄せた潮位15メートルに達する津波は、推定2万人を飲み込み、その多くの尊い生命を奪う大災害となりました。
自宅を失い、親を亡くし、子を早世させた被害者総数は50万人。緊急避難所となった小中学校などの体育館に身を置く被災者は、死と隣り合わせの恐怖体験の後、生き残った者固有の深い心の傷を負い、日々の生活をしのいでいます。
この原稿を書いているのは新幹線のぞみ車中。昨夜の緊急テレビ生出演の記憶も生々しい3月19日。あの地震から1週間が過ぎたほかほかと暖かい春の日差しが漂う午前。富士山の残雪を照らす光景を窓超しにみながらキーを打っています。
昨夜のBSフジ「プライムニュース」は、避難所生活が一週間を過ぎた今、被災者へのケアが必要であることをアピールする主旨で企画されました。3日前に出演交渉を受け、前日にラフ台本をメールで受けとっただけで出演。八重洲口を出てすぐハイヤーでお台場のフジテレビに到着。控え室で担当プロデューサーやディレクタと挨拶する間にメイクさんが顔のテカリをとる化粧。
小宮山厚生労働副大臣が到着。「ずっと副大臣室のソファーで寝ているのよ」と少しハイテンションの挨拶のあと、子どもへのケアをきっちりやりますよと持論を展開。災害ボランティア担当政務官の辻本清美氏は現地から戻れず、代わりに避難所の取材を続けていたイケメンの橋本記者から現地の様子を聞く。こちらも被災地取材が始めてなのでハイテンション。
8時スタートの番組は、管総理大臣の緊急記者会見の予定が入ったので、原発事故がらみかとプロデューサーや司会者はその場で台本を修正。番組スタート直後に管総理の記者会見。「国民みんながんばってください」という長説教に出演者らはイライラ。大事なプログラムの1つが短縮された憤りとは違う、微妙な空気が漂いました。番組中に流れた避難所の生中継では、子ども達がVサインを作り、にこにこ笑いながら駆け回っている姿が印象的でした。
私は、震災の後、時間経過につれて現れる心身の症状について、テロップをつかって解説。子どもへの特別な配慮の必要性を、阪神淡路大震災後のケアの経験をもとに訴えました。今は元気そうな避難所の子ども達は、実は何が起こっているのか全く理解できていないのです。地震や津波が原因で住む家を失い、体育館で段ボールを壁にして生活するはめになったことなどわかるはずはありません。親切な大人たちや、カメラを抱えた取材陣が、自分たちに働きかけてくれるのを、無垢な感覚で応じ、はしゃぐことによってその場をつくろっているのです。
そういえば、阪神淡路大震災の一週間後、西宮や神戸の小学校に取材陣が入り込み、困窮する生活に疲れた被災者をテレビカメラの前に立たせて政府の無策を訴える材料としていました。混乱した生活の原因は直下型の地震でした。1週間後の避難所生活は、辛いものがありました。これからどうしようという不安、どうしようもないと塞ぎ込む鬱症状、整理できない精神的混乱状態からくる怒りなどが最大級にふくれあがるこの時期。マスメディアは過剰な不安をかこち、怒りの矛先を政府の対応の不備・行政の滞りと無策に帰属させていました。同じ事がまた繰り返されようとしています。
被災者へのケアは次の4段階でなされるべきでしょう。
1 震災から3日間 生命確保、生存者救出、不明者捜索、外傷の治療
2 震災から3-1週間 避難所生活への適応支援、物資配給、病者への医療確保
3 震災から1週間ー1ヶ月 個別対応、メンタルヘルス対応、脆弱者(子ども、高齢者)対応
4 震災から1ヶ月以降 通常の生活への復帰支援、通常の生活の場でのストレスマネジメント教育介入
被災者のために何かしてあげたいという暖かい気持ちをもった多くの人は、テレビでみた被災者の惨状を見て、すぐさま現地にかけつけて心のケアをしてあげたいと思うことでしょう。
震災から1週間を経た今、メンタルヘルスへの対応がスタートします。
心のケア専門家が、被災者に個別対応していては賄いきれません。
精神科医を日本中からかき集めてさえ、37万人の被災者の心のケアには対応不可能です。
他人の心の問題に対応するには相応の訓練が必要です。医師や看護師でも不可能です。被災者に対してもよい結果は生まれませんし、当人の心の健康が危ぶまれる事態にもなります。
災害はいつも突然訪れます。突然の災害への備えとは、こうした非常事態に対応できる「心のケア専門家」を育成することでしょう。心理士の国家資格が今こそ必要だとおもいました。
2011/03/19・記