少数派シリーズ/社会の弱者・人権
ジャニー喜多川④事務所タレント「数百人が性的搾取(性被害)」国連人権理は日本政府に救済迫る
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記者会見する「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の石丸志門副代表(右から2人目)。
同3人目は平本淳也代表
■投稿者の文章|日本政府に「人権尊重」の姿勢と対策、メディアは沈黙せず事実を報道すべきだ
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<前号から続く>ジャニーズタレント数百人が、ジャニー喜多川から性被害を受けていたとする国連人権理事会・作業部会の調査報告の詳報だ。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(被害者)メンバーも、記者会見に臨んだ。投稿者の感想は、前号でしっかり申し上げたのでここでは割愛する。下記リンク(前号)参照。一言だけ繰り返せば、ジャニーズ問題に留まらず女性の性被害の撲滅に向けて日本政府に「人権尊重」の姿勢と対策、メディア(特にNHKを始めとするTV局)にはこの問題に沈黙することなく事実を報道すべきだ。
■当事者の会コメント「国連が熱心に私たちの話を聞き気持ちをくみ取ってくれた」
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毎日新聞を活用しました(前号の詳細)/「国連が熱心に私たちの話を聞き、気持ちをくみ取ってくれた。国際的評価がくだったと思っている」。8月4日、ジャニー喜多川氏(2019年死去)の性加害行為を前提に、政府と各企業が担うべき責任と被害者救済の必要性に言及した国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の記者会見を受け、日本記者クラブで記者会見した「ジャニーズ性加害問題当事者の会」メンバーの二本樹顕理さんはそう評価した。被害者の主張が国際的に認められた形で、日本政府も被害救済の対応を厳しく迫られた。当事者の会は6月、「一個人の声では容易にもみ消されてしまう」との懸念から発足。随時加入を受け付けており、現メンバー7人で臨んだ記者会見は約2時間に及んだ。これに先立つ同日の国連作業部会の会見で、専門家は「数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれる、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と明言。「日本政府が主な義務を担う主体として透明性のある捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要がある」と示していた。
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こうした具体的な提言について、当事者の会代表の平本淳也さんは「あそこまで語ってくれると思っていなかったのでびっくりしている。僕たちに勇気をくれた」と歓迎。副代表の石丸志門さんは「一部メディアではまだ疑惑という言葉で報道されていますが、疑惑ではない。現実に起こったことです」と改めて訴え、「日本で人権の尊重ができているのか、国際社会に見られている。報道機関にはそれを深く認識してもらい、まずはこの問題を正確に報じ続けてほしい」と要求した。登壇した中村一也さんも「私が被害を受けたのは21年前。ジャニー氏の性加害行為が裁判で認定されたのは19年前。ここにいるメディアのみなさんが当時集まってくれていたら、被害は続かなかったかもしれない。悔しい思いをしてきました」と改めてメディアの責任を問うた。
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また、ジャニーズグループ「忍者」としてデビューした志賀泰伸さんは、会見を開かないジャニーズ事務所のあり方に疑問を呈し、「本来であれば、藤島ジュリー景子社長ら経営陣が会見すべき問題なのに、所属タレントがテレビ番組で事務所の代弁者のようにコメントしていることに違和感を覚える。タレントを守るどころか、業務を押しつけているのは、一般企業の常識からすると考えられない」と述べた。同時に「告発者への誹謗(ひぼう)中傷がとどまることを知らない。事務所として、沈静化を図るような役目も果たしてほしい」と求めた。仮名で会見に臨んだイズミさんは「自分は芸能界の夢をあきらめたが、これからは夢だけを考えて芸能人になれる社会になってほしい」、ハヤシさんは「今日の国連の会見を聞いて、少しは社会に貢献できているのかなと思えた」と心境を明かした。
■識者「常軌を逸している、日本政府が対策を取らないのは国際的な常識から考えられない」
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国連作業部会の会見では、ジャニーズ事務所が設置した「再発防止特別チーム」の調査が不透明で正当性にも疑念が残ると指摘された。石丸さんは「ジャニーズ事務所から資金提供を受けている組織であり、被害者救済を目的にしていない。何も期待はしていない」との印象を述べた。また、「心のケア相談窓口」も不備が指摘されたが、平本さんによると十分な対応がなされていないという。今後、当事者の会として求めることを問われると、「まずはジャニーズ事務所に加害事実を認めてもらうことが大前提。その上で、謝罪してほしい」(平本さん)、「人間は過去の反省がないと前に進めない。きちんと事実に向き合ってほしい。我々は人類史に残る史上最悪の性加害事件として教訓に残していく必要がある」(二本樹さん)と訴えた。
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識者も国連の声明を評価している。ビジネスと人権の問題に詳しい蔵元左近弁護士は「世界的に見ても、今回の事態は常軌を逸している。それにもかかわらず日本政府が主体的に対策を取ろうとしないのは、国際的な常識からして考えられない。国益に反するとすら思う」と厳しく指摘する。また、ジャニーズ事務所については「現在、テレビなどに出演する『タレントに罪はない』のは事実だろう。彼らの中には、先輩や同期たちからジャニー氏の行為について見聞きしていた人がいるかもしれない。ただ、何らかの声をあげるとしても事務所を辞めるくらいの覚悟がいる。所属タレントを今のような状況に追い込んでいること自体が、企業経営者としての責任を果たしていない」と語った。ジャニーズ問題に詳しいジャーナリストの松谷創一郎さんは「日本はいろいろな分野でコンテンツ大国だが、それが搾取のもとで成立している状況だと認めた意味は大きい」と話した。
次号/ジャニー喜多川⑤スポーツ各紙はジャニーズの広告塔・広告媒体に成り下がった実態
前号/ジャニー喜多川③事務所タレント「数百人が性的搾取(性被害)」と国連人権理の作業部会が発表