武士道とは何か?その④
その③に続き、新渡戸稲造と「武士道」について
「武士道と日本人の心」 山本博文[監修] 青春出版社 より抜粋
第二章 武士道の精神
礼 其の一 他人を思いやる心から生まれる「愛」のかたち
◇新渡戸が強調した礼という徳目の本質
慈悲の心である仁から生じるのが、「礼」という徳目である。
新渡戸は、礼の根底には他人の感情を尊重することから生まれる謙譲や
丁重の心があると説く。
日本人は丁重で上品な物腰であり、礼儀正しいと外国人から一般に見られている。
しかし、その作法は非常に細かい。たとえば他人に挨拶する時の頭の下げ方、
歩き方、座り方などである。
外国人の中には、それを馬鹿げた行為だと批判する者もいると新渡戸は触れる。
たしかに、礼儀作法の中には不必要な細かい点があると新渡戸も同意する。
一方で、これに対しての反論も述べている。
そもそも礼とは、他人の気持ちを思いやる心の表れである。
それは、つまるところ愛だ。
品のよさを損ないたくがないために礼に適った振る舞いをするのではない。
礼とは、社会的地位に対して、相応の敬意を払うことなのである。
つまり、主君の仁に対して、臣下の礼があるということだ。
そして、日本人は礼儀を厳しく遵守することで、他者への思いやりを学んでいくのだと
新渡戸は強調する。
とはいえ、新渡戸は礼を称揚はするものの、決して徳の第一位に置くものではないとした。
そもそも徳とは、どれも個別に成立するものではなく、それぞれの徳と相互関係のもとに
あるからである。
○現代の礼儀作法
(お辞儀の作法)
会釈 15℃ 他人の近くを通る、知り合いにすれ違うなどの時に使う。
敬礼 30℃ 目上の人、来客の対する挨拶などの時に使う。
最敬礼 45℃ 深い感謝、謝罪を示す時に使う。
(席次の作法)
応接室 出入り口からもっとも遠い①が上座
和室 床の間に近い①が上座。出入り口に近い④が下座。
新渡戸は、「礼が社交に不可欠な要件にまで高められたとき、礼儀作法の詳細な体系が
流行するのは当然だ」と述べている。
それは現代においても変わらず、他者と接するときは、礼の作法が重んじられる。