ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

釜炒り茶特集 第二回

2021年08月15日 | イベント
地域に根ざした未来志向のお茶作り
宮崎茶房 宮崎亮さん




遥かに山々の眺望を見渡す扇状の茶畑、ここが五ヶ瀬で一番好きな場所と胸を張る宮崎さん。冷涼な風が颯爽と吹き抜ける茶畑では、多くのスタッフが梅雨の貴重な晴れ間の茶摘みに勤しむ。急斜面では大型の機械は使えないので、可搬の摘採機か手摘みで行われる作業。結果、一度で摘める茶葉は限られる。時間との戦いだ。
今年は霜の被害が五ヶ瀬を悩ませた。加えて、3週間も早く梅雨入りした。最も高値で取引される一番茶が霜の被害を受けてしまうと、経営的には大打撃だ。しかし、主軸の釜炒り茶、番茶に加えて、多くの品種と200種類ものお茶を生み出している宮崎さんにとって、被害はごく一部、見事なリスクヘッジだ。
4代目宮崎さん率いる宮崎茶房は昭和初期創業。家業から身を引き公務員になるつもりで進学、宮崎大学農学部で花の開花実験に夢中になっていたところ、「お茶も花が咲くよね・・・」と、家業を継ぐことに。学生時代の経験が花やハーブを使った新しい商品開発にも繋がっている。昭和58年に無農薬、有機栽培のお茶作りに転換、五ヶ瀬では最初期の平成13年に有機JAS認証を取得している。当時は「無農薬のお茶は美味しくない」という評価が一般的だったが、時代のニーズ、そして500メートルから800メートルという標高の高さが幸いし、地域全体が有機・無農薬栽培へと舵を切った。甘味・旨味偏重傾向のお茶と違い、すっきりと香ばしい「釜香」と呼ばれる香りに加え、爽快な味わいが特徴の釜炒り茶の産地だったからこそ可能だった軽やかなシフトチェンジ。結果的に、無農薬のお茶作りが商品価値を高め、海外市場へ道が開かれた。





摘まれた茶葉は畑のすぐ側の工場に運ばれる。宮崎さんの工場は大きく分けて2ライン、主力の釜炒り茶専用ラインと紅茶や烏龍茶等、発酵系のお茶を扱うラインだ。『うるるん滞在記』で見た台湾茶特集がきっかけでスタートした烏龍茶作り。ビギナーズラックでハイレベルの美味しいお茶が出来たのだが、以降思ったようなクオリティーに至らず、試行錯誤の連続。その思い通りにならない悔しさを糧に苦心を重ねた結果、商品化へと繋がり、人気商品へと成長。全体の生産量に占める烏龍茶の割合も年々上昇している。今ではどちらの生産ラインも若手が主力を担っている。




工場を切り盛りする若手。真摯な姿勢がお茶のクオリティーを守っている。

発酵系のラインは勤続10年目の横山陽子さんが中心となって作業にあたる。
「お花畑みたい」というあるスタッフの言葉通り、工場は爽やかな香りで満ちている。釜炒り茶のラインと比べ、見た目、香り、手触り等々、経験値プラスより感覚的なセンスが要求される。作業中は真剣な表情で茶葉の状態の精査に余念のないスタッフ。張詰めた空気にお茶作りへの情熱が窺える。
作業の合間を縫って、ひとときの休息時間。出来立てのお茶を試飲しながら、これから作りたいお茶、イベントの企画など、話題に事欠かない。お茶で繋がる世界はどんどん広がって、汲めども尽きぬ泉のように湧き上がる。自由な発想でチャレンジ出来る環境がスタッフのモチベーションを高めている。ユニークな試みとして、宮崎さんは得意の占いでスタッフの個性や能力を見極め、それぞれが最大限能力を発揮できる職場作りを推進している。その成果がハイクオリティーなお茶作りに反映されている。



美しい茶畑と山並みを見渡せるカフェ、さらに、地域で使われなくなった工場を釜入り茶の博物館にしようという企画も進行中。自社の運営にとどまらない宮崎さんの活動は、就労スタッフの移住推進ための環境整備、若手茶農家が切磋琢磨する烏龍茶研究会への参画、さらには高齢者向けの仕事の開拓と、地域社会へ大きく貢献している。
「これからの時代は競争ではなく共闘。各々が個性とこだわりのあるお茶作りを推進し、足りない部分は補いあって、個と全体が成長していくことで地域そのものが活性化する。そういった社会の一翼を担っていきたいです」
未来の茶業、そして地域社会の在り方を見据えた宮崎さんのお茶作りにこれからも注目したい。


宮崎茶房で生み出されるお茶はなんと年間200種!圧巻のバイタリティーだ

宮崎茶房
〒882-1202 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内4966
0982-82-0211
http://www.miyazaki-sabou.com/




釜炒り茶特集 第一回

2021年08月13日 | イベント
釜炒り達人、新境地へ
五ヶ瀬緑製茶 興梠洋一さん

農林水産大臣賞16回受賞、海外のアワードでも金賞を獲得され、釜炒り茶の達人としてその名を轟かせている興梠さん。お会いして早々、ご挨拶もそこそこに「まずは一服」とお茶をいただく。心地良いお茶酔いとともに奥深い釜炒り茶の世界の扉が開く。



興梠さんが作るお茶は多彩だが、常に釜炒り茶の技術がベースにある。興梠さん曰く、「自分のスタイルは現代版青柳製釜炒り茶」。昔と違い、大部分の工程が機械化されて、作業的には負担が随分軽くなった。一方で、昔ながらの手作業を熟知した上で機械を使って作るお茶と、全く知らずにただ機械を操作して作るお茶とでは全くの別物。基本のキ、あってこその機械化。結局、人の経験値に基づいた感覚がお茶の風味、仕上がりを左右する。中でも、興梠さんオリジナル、娘さんの名前を冠した『華菜製法(かなせいほう)』は感覚/センスが重要なファクター。摘んできた茶葉は工場の風通しの良い空間でしばし休息させる(萎凋)。そうすることで、お茶の葉に含まれる酵素が活性化し、香り成分が生成され、結果的に花のような香りを纏ったお茶が生まれる。ただ静置させておくだけではなく、時にシートを揺り籠のように優しく揺すって、茶葉の中で眠っている香りを目覚めさせる。五感をフルに活用して行う作業。そして最後の工程で欠かせないのが、青柳製の釜を使った仕上げの火入れ。これで興梠さんのトレードマークである独特の「釜香」が生まれる。ここでもやはり経験値に基づく五感が命。



摘まれた茶葉は風通しの良い場所で萎凋。揺り籠のように優しく茶葉を揺らすことで、より香りを高める。

頂点を極めた興梠さん。その自由かつ遊び心に満ち溢れた発想力はもはや商品としてのお茶に収まり切らなくなってしまった。いまは評価されるためのお茶ではなく、ただ好奇心の赴くままに打ち込める無作為のお茶作りに集中している。計算をこえた仕上がりをもたらすこのお茶作りを興梠さんは「ワイルド」と表現し、テーマとしている。


興梠さんと共に世界を旅した特注の釜。

「品評会の評価は減点法で、結果的に没個性的な顔ぶれになってしまう。お茶の種類によっては甘味・旨味を高めるために化学肥料が不可欠。今、自分が作りたいお茶は、優等生のお茶ではなく、土地に根付き、背景に生活や物語が感じられるようなお茶。品評会では個性や伝統は評価の対象外、むしろ欠点になりかねない」

極めたからこそ出来る、既成の価値に囚われないお茶作り。一言でいえば、潔い。思い立ったらとりあえず、烏龍茶も紅茶も白茶も作ってみる。もちろん、初見のお茶でも一目で大体そのお茶の作り方が掴める経験値あってこそ。トライ&エラーで、どんどん進化していく、羽毛のように軽やかな身振りに学ぶべき事は多い。

そんな興梠さんに、今年4月に摘んだヤマチャの自生地へ連れて行ってもらった。軽トラックで未舗装の急斜面をガタゴト登ったり降ったり、すると山の斜面、日当たりの良い所に、茶の木が散見出来る。群生する場所は、一部伐採されて日照条件が良くなった山肌。光を求めて多くの茶の木が競い合うように枝を伸ばしている。郷土の歴史と現代のお茶作りが結ばれた瞬間に立ち合ったような感動を覚える。
「ヤマチャもだけど、昔はカッポ茶って、切った竹を地面に挿して、そこに水を入れて沸かして、炙った茶の葉をその湯に投じて飲んだりしていた。村のおばあちゃんから伝えられた釜炒り茶は、教科書には書かれていないような製法の日常の飾り気のないお茶。こういったお茶が面白い」




伝統をしっかり踏まえながら、五ヶ瀬への愛情と誇りをベースに大好きなお茶作りの新境地を突き進む興梠さん。昨今の自然環境の変化も「自然相手だから」と受け入れ、「茶の声を聞く」真摯な姿勢で、新たなお茶の価値を創造し続けてくれるだろう。



五ケ瀬緑製茶
宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内4874-1
0982-82-1379
https://gokasemidori.stores.jp/
https://note.com/gokasemidori/n/n7edaf0fe8fd2

釜炒り茶って何?

2021年08月12日 | イベント


7月、大好評をいただきました宮崎・熊本の和紅茶特集。
ご紹介したのは宮崎県の宮崎茶房と五ケ瀬緑製茶、熊本県の岩永製茶園の3茶園。
みなさん無農薬、有機栽培でお茶作りに取り組んでいらっしゃいます。
今回は紅茶の特集でしたが、みなさんお茶作りのベースは『釜炒り茶』です。
釜炒り茶、知らない方も多いでしょう。
それもそのはず、全国の煎茶生産量に占める釜炒り茶の割合はおよそ1%!
とっても希少なお茶なのです。

お茶作りを簡単に説明すると、
茶畑で摘まれたお茶の葉に含まれる酵素は、しばらく生きています。
その活動を止めるために、熱の力を利用します(=殺青)。
殺青には2通りの方法、蒸すか、炒めるかがあり、それぞれ味わい、香り、色の異なるお茶が出来ます。
日本の場合、多くの緑茶は蒸すことで酵素の働きを失活させます(=蒸製)。
釜炒り茶は、釜で炒ることで酵素を失活させます(=炒製)。
中国の緑茶は、ほとんどが炒製です。。。
と聞いて、ピ〜ンときた方は鋭いです。
そう、中国から伝来した煎茶の製造方法は、炒製です。
しかし、日本の食文化、好みに合わせるように、蒸製のお茶が主流になっていきます。
ということで、炒製のお茶の製造は、実は蒸製よりも歴史が古いのです。
伝来の時期は諸説ありますが、15〜16世紀初頭説が有力です。
ちなみに、蒸し製の煎茶の製造は永谷宗円(永谷園始祖)が18世紀に発見したと言われています。

釜炒り茶はすっきり、爽やかな風味、黄金色の水色(すいしょく、浸出したお茶の色)、釜香(かまか)と呼ばれる香ばしい香りが特徴です。
花のような香りを纏わせるために、摘んでから殺青までの間に「萎凋(いちょう)」と呼ばれる工程を挟むこともあります。
いわゆる甘味、旨味とは違う、颯爽とした味わいが魅力です。

ということで、釜炒り茶について、少し興味を持っていただけたでしょうか?
これから、3回にわけて、今回の特集でフューチャーしたお茶農家さんをご紹介いたします。
数々の受賞歴を持ち、第一線で活躍されている方々がどうやってお茶作りに取り組まれているか。
美しい茶畑の風景と合わせて、お楽しみいただければ幸いです。






8月はお休みです

2021年07月26日 | お知らせ
前回の記事でもお知らせいたしましたが、
8月1日(日)〜9月6日(月)まで、お休みを頂戴いたします
長期に渡りご不便をおかけして大変申し訳ございません。
どうぞよろしくお願いいたします。

台風の進路が心配ですが・・・、
7月31日(土)のお休み前は久々の2人体制での営業です
安心してご来店ください。




7月14日から

2021年07月13日 | お知らせ
久しぶりの営業でドキドキしますが、14日から約2週間ぶりの営業スタートです。
7月12日から8月22日まで、4回目の緊急事態宣言。
通常22時まで営業しておりますが、20時までの短縮営業とさせていただきます。
宣言期間中、アルコールの提供はお休みです

6月後半にエアコンが壊れ、新しいエアコンを設置して準備万端です。
しかし、雨天が続いたお陰で、エントランスのドアが膨張してガッチガチです。
雨の日、開けようとして転びそうになりました・・・。
少し開けておきますので、お怪我のないようにお気を付けください。
(晴天が続けば自然と収縮してスムーズに開閉します)

最早盛夏!なので、パウンドケーキはパイナップルとココナッツ、ディタライチのコンビネーションです。
トロピカルムードをお楽しみください

和紅茶の特別メニューもご用意出来ました
数量超限定ですので、お早めに!

8月はもしかすると自宅の引っ越しやドローン資格試験(!)等々でお休みするかもしれません。
詳細につきましては改めてお知らせいたします

7月14日から再開です

2021年07月10日 | お知らせ
現在お休み中のカフェ分福ですが、7月14日(水)から営業再開いたします。
4度目の緊急事態宣言が7月12日に発令されましたので、8月22日まで短縮営業とさせていただきます。
具体的には

(火)〜(土)11:30〜19:00ラストオーダー、20:00クローズ
(日・祝)11:30〜18:00ラストオーダー、18:30クローズ
<ただし、お食事はラストオーダーの30分前まで>
☆アルコールの提供はお休みです

再開に合わせて、宮崎・熊本の品評会受賞茶農家さんのシングルオリジン和紅茶を特集します。
個性豊かな5種類の紅茶、数量に限りがございますのでお見かけの際は是非!



6月28日からしばしお休みです

2021年06月27日 | お知らせ
短い6月の営業が終わり、
6月28日(月)〜7月13日(火)
上記期間中、お休みを頂戴いたします

今年度は、このような形でお休みを長く頂戴する予定です。
期間についてはブログにてご案内いたしますので、ご来店前にご確認いただけましたら幸いです。
ご不便をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします



まん防発令

2021年06月18日 | お知らせ
まん延防止等重点措置発令に従い、引き続きではありますが以下の通り営業時間を短縮いたします。
また、6月21日〜7月11日の期間中、酒類の提供も停止させていただきます。

通常営業11:30〜22:00ラストオーダー、22:30クローズのところ、
まん延防止等重点措置発令中
火曜日〜土曜日11:30〜19:00ラストオーダー、20:00クローズ
日・祝日11:30〜18:00ラストオーダー、18:30クローズ
<ただし、お食事はラストオーダーの30分前まで>

今年になって、ほぼ通常営業は出来ておりませんが・・・。
どうぞお間違いのございませんように!
お元気でお過ごしください。




6月14日(火)からスタートします

2021年06月13日 | お知らせ
今月はお休み続きでしたが、14日(火)から再開いたします。
20日(日)まで営業し、
21日(月)〜25日(金)までお休み、
26日(土)・27日(日)営業いたします。
自分でも混乱するヤヤコシサです。
ごめんなさい・・・

今月の営業は以上となります。

その後、
6月28日(月)〜7月13日(火)お休みです。

7月については、長期のお休みは上記のみの予定です。
変更があった場合は、ナルハヤでブログにてお知らせいたします。

コロナの影響で、私が通っているお店も時短だったり臨時休業だったり・・・。
事前の確認が必須項目となりつつあります。
ご来店の前に、心配だなと思われたら、お気軽に03-3312-4885までお電話ください(営業時間中にお願いいたします)。
お休みの際は、留守電にはならず呼び出し音が続きます。
とはいえ、たま〜に電話に出られない場合もございます。
そういった時は、5分ほど置いて改めてお電話ください。

ご不便、ご面倒をおかけいたしますが、どうぞ宜しくお願いいたします





6月の営業日について・・・変更あります

2021年05月30日 | お知らせ
なんとか無事5月も乗り切りました。
今日の高円寺は結構な人出で、分福もお待たせしてしまったり入店していただけなかったり、入店していただいてもお待たせしてしまったり・・・。
何かと不手際があったかと思われます。
何卒ご容赦ください。

さて!
6月の営業についてお知らせいたします。
改めてカレンダーを見てみると・・・結構少ないです
下記、お休みの日程です。

1日(月)〜14日(月)
21日(月)〜25日(金)
28日(月)〜7月5日or13日<検討中>

むしろ営業している日をお知らせした方が良いような・・・(以下、ご参照ください)。
6月
15日(火)〜20日(日)、26(土)・27日(日)だけ

ただし、6月1日〜20日まで緊急事態宣言発令ということで、引き続き短縮営業、アルコール提供無しとさせていただきます。

(火)〜(土)11:30〜19:00ラストオーダー、20:00クローズ
(日)11:30〜18:00ラストオーダー、18:30クローズ
<ただし、お食事はラストオーダーの30分前まで>

どうぞお間違いございませんように!
そして皆様のご健康をお祈りしております