ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

甲野式身体革命に触れる

2008年06月23日 | Weblog
綾瀬にて、甲野先生の身体論に初めて触れる。驚きの連続だった。
まず、先生の身体は掴み所がない。捕捉不可能、であるが故にスキがない。先生の身体から生み出される動きには無駄がなく、美しい。
印象的だったことを幾つか:
○相手の動きに惑わされない・・・自分のメロディーを保つ
○動きの準備をしない=予測不可能
○二つの動きを瞬時に行う・・・部分ではなく、身体全体で
○膝の力を素早く抜く・・・フライパンでホットケーキをひっくり返す時のような感じ
○手のひらの方向出からだ全体が動く・・・身体の繋がり、一体感
○片足飛び・・・肩から体を倒しながら刀を振るように
○蝙蝠の羽の骨組み、その動きを応用


数寄屋橋次郎

2008年06月21日 | Weblog
昨日は「青空」、今日は「次郎」と銀座の寿司を渡り歩く。

次郎は何と言っても人間国宝(級)の次郎さんに握ってもらえる、それが宝だ。次郎さんの顔を拝見し、その手で握ってもらえる、なんという贅沢な20分(短!)だろう。次郎さんの前に座っていると、自然と背筋が伸びる。次郎さんの姿を見ていると、スッとしていて、キレイで、後光が差しているように感じる。もうここまで来ると信者のようなものだ。でも、自然と居住まいを正したくなるような雰囲気が「次郎」にはあり、私はその緊迫感が好きだ。そしてもちろん寿司も美しく、豊かな味がする。「青空」の寿司は端正、「次郎」は豊か、それが私の両者の印象だ。

和歌山へ

2008年06月16日 | Weblog
和歌山城、紀三井寺へ。

西の丸庭園は紀伊徳川家の威光溢れる大名庭園らしい豪快な意匠。お堀の水と高低差の激しい地形をうまく利用して、まるで山中に踏み入ったかのような奥行きのある構成になっている。
城は・・・、コンクリなのですね。外観はなかなかですが、内部が・・・。折角復元するならばもう少し趣き重視で建造すればよかったのに、とても残念。収められている文化財、資料は一見の価値あり。紀州徳川家の歴史が分かりやすく展示されている。

紀三井寺は紀伊国屋文左衛門ゆかりの寺だそうだ。以下、紀三井寺HPより抜粋:
「江戸時代の豪商・紀ノ国屋文左衛門は、若い頃にはここ紀州に住む、貧しいけれど孝心篤い青年でした。ある日、母を背負って紀三井寺の表坂を登り、観音様にお詣りしておりましたところ、草履の鼻緒が切れてしまいました。困っていた文左衛門を見かけて、鼻緒をすげ替えてくれたのが、和歌浦湾、紀三井寺の真向かいにある玉津島神社の宮司の娘「おかよ」でした。これがきっかけとなって、文左衛門とおかよの間に恋が芽生え、二人は結ばれました。後に、文左衛門は宮司の出資金によって船を仕立て、蜜柑と材木を江戸へ送って大もうけをしたのでした。紀ノ国屋文左衛門の結婚と出世のきっかけとなった紀三井寺の表坂は、それ以来「結縁坂」と呼ばれるようになりました。」
なるほど、「千両みかん」はこうして生まれたのか、とちょっとウキウキしたムードになった。



長江哀歌byジャ・ジャンクー

2008年06月08日 | Weblog
2006年ベネチア国際映画賞で金獅子賞グランプリを獲得したジャ・ジャンクー監督の「長江哀歌(エレジー)」を恵比寿写真美術館で観る。
冒頭、船上の人々の姿を移動撮影でとらえたカットでいきなり気持ちを揺さぶられる。1970年生まれの若い映画作家の作品とは信じがたい重厚な画面。確かに、全体に漲る重厚なトーンはアンゲロプロスを彷彿とさせる。ダムの底へと沈みゆく2000年の歴史を紡いできた町。破壊される町と人々の荒んだ生活を淡々と描きつつ、逃げられた嫁と娘を探す男と、二年間音沙汰のない夫を探す女、何の変哲もない二人の主人公それぞれが相手を探し歩く物語。特別な事件は起きないが、ダム底へと滅びゆく町に充満する寂寞とした負の力が画面を通して伝わってきて、目が離せない。そんな負の力が為せる技なのか、至極真面目なストーリーが展開する中で、非常に異質な、度肝を抜く要素に我が目を疑う。脈絡のない二人の主人公を結びスムーズなストーリー転換をせしめたUFO出現のシーンは見事だが、不気味な存在感を誇示していたコンクリの高層ビルが手前に洗濯物がはためくカットの奥で噴煙を上げて空へ飛び立つシーンは一体何?そんな疑問は宙に浮いたまま二人の主人公はお互いの尋ね人を見つけ、彼らなりの決着をつけ、それぞれの人生を再び歩み始める。絶え間なく流れていた河の流れ、しかし堰き止められてしまった水の淀みは三峡という町を負の力で圧迫し、人々の生活も濁り、停滞する。まるでそのような磁場が解決策の見えない闘争を人々に課し、やたらと水を飲む女はその淀みに抗おうとしているかのようだ。食事中に四川の地に帰ることを切り出す男と仕事仲間のカット、半裸の男たちが薄明かりの中で円座になり大皿に盛られた料理を箸で突き合う姿は映画的感動を呼び起こす。

ラ・グラップでお茶をして、夜は成城にあるとんかつ屋「椿」へ。

勢いづいて下高井戸シネマへ。レイトショーでイオセリアーニの「田園詩」が上映されているはずだったのだが、なんと12日からだった!しかも14日までのごく限られた上映。しぶしぶ帰宅。

談春独演会@にぎわい座

2008年06月07日 | Weblog
前座はあがらずいきなり談春登場。「赤めだか」出版ツアーと生志真打ち昇進披露の興奮冷めやらぬといった雰囲気で、フワフワとした状態のまま落語に突入、「お花半七」と「素人義太夫」。
中入り後は与話情浮名横櫛「稲荷堀」。悪党になりきれない与三郎と胆の座った冷徹なお富の対照が際立つ演出。

There will be blood

2008年06月01日 | Weblog
雨が降りしきる中、太宰府へ。市内からタクシーでちょうど5000円。お参りしてからお目当ての光明禅寺へ。九州唯一の枯山水庭園、らしい。方丈前庭は東西に長細い敷地に白砂と石のみで構成された庭。北は白砂を大海に見立てた苔と石の庭。モミジが多く、紅葉の頃はきっと素晴らしい色彩で彩られるだろう。広々とした庭は滴るような緑で覆われ、酸素の密度が高く感じる。禅の庭とはいえ厳しさはあまり感じられずむしろ柔らかいおおらかな雰囲気。眺めているだけで癒されるような庭。
参道の「小野筑紫堂」でツツジの刈込の庭を眺めながらくず湯と共に名物「梅ヶ枝餅」を食べる。焼きたての餅の香ばしい香りと自家製餡の控えめな甘さが見事にマッチしていて1つではおさまりつかず、おかわりを注文。

福岡へ戻り、地鶏鍋を食べる。風情のある純和風民家を改造したお店。梁が剥き出しの高い屋根、土壁、年季の入ったアメ色の床が日本人DNAに響く。付き出しのキャベツと味噌がおいしい。鳥刺盛り合わせ、地鳥鍋など。

第80回アカデミー賞受賞作品、ポール・トーマス・アンダーソン監督、ダニエル・デイ=ルイス主演「There Will Be Blood」を見る(@シネテリア天神)。昨今のハリウッド映画には珍しいような、スイートなシーンが徹底的に排除された、シンプルで古典的なストーリーは黄金期ハリウッドを彷彿とさせる。カット、被写体との距離が絶妙で非常に抑制が効いていて、空気が伝わってくる。画面もさることながらダニエル・デイ=ルイスの演技が素晴らしい。終始途切れることのない緊張感で、2時間35分という長さは全く感じられなかった。REDIOHEADギタリストの音楽も全編に漂う不吉な雰囲気を見事に醸し出している。