長野原草津口駅の続きです。10時23分、バスターミナルに上図のJR関東の大型観光バスが停まりました。あれが草津温泉行きの連絡バスだな、と見ているとアナウンスが流れ、駅の休憩ルームから観光客の群れがぞろぞろ出てきてバスに乗り込んでゆきました。
草津温泉行きのバスが走り去った後は、広い駅とバスターミナルに私だけが取り残されました。あれ、今日は祝日(スポーツの日)なのに野反湖へ向かうのは自分だけか、と少し驚きました。人気の観光地だと聞いていたので、もっと人数が居るかな、と思っていたからです。
とりあえず、野反湖行きのバスが出る上図の5番乗り場に行ってみました。
野反湖方面の路線バスの時刻表です。御覧のように1日に4便しかありません。この日は祝日なので、7時55分発の便は運休になります。最終便の17時5分発は花敷温泉までで野反湖へは行きませんので、この日のように土日祝に行く場合、10時57分発と14時3分発の2便しかありません。
前夜に渋川の友人Mと電話で相談した際に「野反湖へのバスは実質2便しかないんだ、帰りも2便だからさ、時刻には絶対に気をつけろ、山の上へ行くんで1時間40分もかかるんで、乗り遅れたら遭難だぞ」と言われ、そんな大袈裟な、と思ったのですが、時刻表を見て決して大袈裟でないことに気付きました。Mはこうも話しました。
「明日行くんだろ?明日は祝日だから午前の1便、午後の1便しかないよ。午前の1便に乗って野反湖をハイキングして午後の1便の折り返しに乗るしかないよ。タクシーも来ないから、午後の1便の折り返しに絶対に乗らないといけんぞ」
「午前に1便しか無いということは、途中で降りて重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の赤岩集落とかを見るってのも無理なのか」
「ああ、残念だが無理だ。本当はさ、星野には赤岩養蚕集落や旧太子駅のほうを見てもらいたいんだけどなあ」
「また機会があればそっちへ行くよ」
Mが言った「午後の1便の折り返し」とは、終点の野反湖バス停を15時39分に出る最終便のことです。これから乗るバスが10時57分発、目的地の野反峠に着くのが12時ジャストですから、瑞浪絵真推しのピザを食べて、野反湖畔を野反湖キャンプ場まで歩いて、キャンプ場を見学して、野反湖ダムを経て野反湖バス停へ行くまでの持ち時間が3時間39分であることを意味します。
そしてこのときの私は、その予定コースを果たして3時間39分で回れるのかどうかが、心配で不安でした。Mは「まあ大丈夫だろ、俺が昔に歩いた時は3時間ぐらいで行けたし」と話していましたが、それは別のコースだったそうですから、参考にはなりませんでした。聖地スポットも探さないといけないし、撮影もやらなきゃいけないし、時間が足りるかなあ、という不安は依然として拭えませんでした。
バスの時間までまだ間があるので、駅前の交差点のところまで行ってみました。草津温泉からの連絡バスがもう1台駅前に着いたのを見て、これは作中と同じ景色が撮れるかな、と気付いて聖地ポイントを探しました。上図のアングルでした。
2分後に草津温泉行きのバスが発車して交差点の信号で停まりました。チャンスは今だ、とデジカメを構えて撮りました。
この作中シーンを撮ったのでした。作中のバスは草津温泉行きではなくて野反湖行きのバスでしたが、同じバスをこのアングルで撮ることは今回は絶対に無理なのでした。
ちなみに、作中では各務原なでしこ達が特急で長野原草津口駅に着いてすぐ、バス停に待機していた野反湖行きのバスに飛び乗っています。それで各務原なでしこが「間に合ったぁ」と話していますが、現実には特急「草津・四万」の到着時刻と野反湖行きバスの出発時刻は繋がっておらず、普通列車からの乗り継ぎでも約40分ほどの待ち時間があります。
念のため、鉄道やバスのダイヤの変更が最近にあったかどうかを駅で問い合わせましたが、ここ数年は変わっていないとの事でしたから、作中での各務原なでしこ達の特急列車からバスへの乗り継ぎの場面は、完全な創作であることが分かります。
さらに、前述したように野反湖へ土日祝に行く場合、10時57分発と14時3分発の2便しかありません。作中では各務原なでしこ達もGWの連休中に行っていますから、今回の私と同じバスのダイヤだった筈です。3人は高崎駅を昼過ぎに出て長野原草津口駅に着いていますから、バスは午後の14時3分発しかありません。それに乗って野反湖を望む高台の野反峠まで行っているわけですが、今回の聖地巡礼の時点でCOMIC FUZでの原作の連載の最新話は97話で、その描写では長野原草津口駅からずっとバスに乗っているような感じでした。
それで、今回は私も野反峠まで乗る積りでいたのですが、そのときは、まさか98話で3人が途中の旧太子駅跡に立ち寄った際の写真が描かれるとは思いもしませんでした。
しかし、現実のバスのダイヤでは、途中で降りてどこかへ立ち寄る事は不可能であり、旧太子駅跡に行きたくても無理なのでした。それで旧太子駅跡は次回の機会に回したわけですが、いずれにせよ、作中での3人の行動をそのまま同じ条件下で追体験することは不可能です。このあたりにも、原作者のあfろ氏がかなりの創作をまじえてストーリーを作っていることが伺えます。
聖地スポットを撮った後は駅へ引き返し、上図の時計台を撮りました。
記念の自撮り。時計台の左向こうに見える高い連絡橋は、駅の北の高台の集落と駅とを結んでいるそうです。
バスターミナルの5番乗り場に戻って待つこと7分、10時42分にバスがやってきました。このアングルも作中に出ていますので忘れずに撮りました。
このシーンですね。バスの車輌も全く同じでした。この野反湖への路線は正式には「六合(くに)地区路線」といい、地元の中之条町が業者に運行委託しているバス路線で、請負事業者はローズクイーン交通さんでした。
バスの背面に路線の案内表示が付いています。野反湖行きのバスだと分かります。
この時乗ったのは私だけでしたので、運転手さんが「野反湖ですか?」と訊いてきました。そうだと答えましたら、上図の野反湖案内ガイドをくださいました。
「野反湖のどちらまで乗られますか?」
「野反峠までです」
「お帰りは?」
「終点の野反湖から乗ります。15時39分発ですよね?」
「ええ、そうです」
野反湖案内ガイドを開くと、上図のハイキングマップがありました。野反湖周辺の登山道やハイキングコースの全てが網羅され、所要時間まで明記されているのが、私にとっては大変に有り難いことでした。
親切な運転手さんが「ハイキングされるのでしたら、湖畔の西側を回るコースがおすすめですよ」とそのルートを指でなぞって示して下さいました。そのルートが、まさに私の予定していたルートでしたので、思わず「その全部を歩いたらどのくらいの時間がかかりますかね?」と訊き返しました。運転手さんは少し考えて、答えました。
「地図では1時間40分とありますがね、少なくとも2時間はかかりますかね」
「2時間で行けますか」
やった、と思いました。予定ルートのほぼ9割を2時間で行けるのであれば、あとの1時間39分を見学や撮影や休憩に回せる、余裕かもしれん、と考えて、先ほどまでの不安が薄らぎました。私の歩速は一般の方よりは速いし、山道は歩き慣れていますから、地図に示される1時間40分でもいけるかもしれないな、と前向きに考えました。
野反湖案内ガイドには、上図のように野反峠(富士見峠)にある「野反湖休憩舎」の案内もありました。これから向かうのがこの「野反湖休憩舎」で、瑞浪絵真推しの名物ピザもそこでいただけます。
運転手さんに営業日を訊いたら「ああ、今日はやってますよ」と言いましたので、再び、やった、と思いました。作中の瑞浪絵真と同じように「本日休業」にショックを受けることは無くなったわけでした。
さらに、終点の「野反湖」バス停の横にある「野反湖展望台案内所」の案内もありました。時間があれば立ち寄ろう、と思いつつ、運転手さんに営業しているかどうかを訊ねたところ、「ああ、そこはちょっと前に閉鎖になってしまいましてね、案内所のほうもキャンプ場のビジターセンターのほうに移されたんですよ」と教えられました。
それで現在は展望所のみが残っているということでした。
そうなると、これから行く野反湖でのハイキングにて休憩地点を探すとしたら、「野反湖休憩舎」、各務原なでしこが散歩に行ったキャンプサイトのベンチ、キャンプ場のビジターセンターの3ヶ所、ということになるか、と考えました。計画表を取り出して赤ボールペンで休憩予定の地点をその3ヶ所に設定してマーキングしておきました。 (続く)