園芸セラピーとは、「園芸を手段として心身の状態を改善すること」(英国園芸療法協会の定義)とされ、米国で第二次世界大戦の傷痍軍人をリハビリするために始まりました。
たしかに、窓から植物の見える部屋にいる患者は、壁しか見えない患者に比べて術後の経過がスムースだという報告や、ベトナム戦争で地雷を踏み全身マヒの状態に陥っていた軍人が、小さなガラス瓶の中で育つ植物を見るために、自力で寝返りを打ったという事例があります。不思議なことですが、植物には心を癒し回復させる力があるようです。
日本には90年代に導入され、多くの高齢者施設でリハビリテーションの一環として、園芸作業が取り入れられています。
施設から寄せられた声をまとめると、その効果としては、
- 植物の世話をすることで体を動かし、身体機能の回復に役立つ。
- 季節ごと、時間ごとにも変化する植物の色や形、香りが五感を刺激する。
ことなどが挙げられます。
園芸セラピーと園芸作業の大きな違いは、園芸作業を指導する「セラピスト」がいることです。園芸セラピストは、支援する高齢者の方(患者さん、クライアントさん)ごとに、(1)計画、(2)準備、(3)栽培、(4)収穫(加工)というプログラムを作成し、指導します。
アメリカでは70年代初めに、医学、心理学、植物学、農園学、林業などさまざまな分野の専門家の協力によって、園芸療法協会が設立されました。70年代後半にはイギリス園芸療法協会も設立され、両協会によって園芸セラピストの資格認定が行なわれています。
欧米では園芸セラピスト(Horticultural Therapist)は社会的に職業として認知されており、高齢者の介護施設や病院、リハビリテーションセンター、刑務所、少年院などでセラピストとして活躍しています。また、フリーランスとして各施設や個人と契約するケースもあります。
日本では、日本園芸療法研修会や日本園芸療法士協会、日本園芸療法普及協会などが園芸セラピストの養成を行っています。作業療法士や理学療法士ほどではないにせよ、園芸セラピストの認知度は確実に上がってきているようです。