午後の森でひと休み

蓼科の「カフェ 午後の森」マスターの巣籠もり日記。午後の森から見える信州蓼科・八ヶ岳のすばらしい自然、生活・・・。

雪の蓼科の深夜に見る小津安二郎

2010年01月28日 22時07分42秒 | 日記
深夜、ニュースも終わって、寝ようとNHK-BSにチャンネルを変えると、
原節子、笠智衆が出ている。
小津安二郎監督の「晩春」で舞台は60年前の鎌倉。
昨日の深夜も同じチャンネル行動をしていると
原節子に司葉子、佐分利信、岡田茉莉子、佐田啓二が出ている。
50年前の小津安二郎監督の「秋日和」で、思わず2時半過ぎまで見てしまった。

雪が窓をたたく蓼科の深夜に、
蓼科を愛し、山荘を構えて創作活動の場とした
小津安二郎の映画をみる不思議な繋がり。
特に「秋日和」のシナリオは蓼科で作られた。
その山荘「無藝荘」は蓼科に保存されていて昨年見学したが、
贅肉を削ぎきった緊張感を感じさせる和風山荘だった。
小津の山荘には映画人が集うようになり、
笠智衆、佐田啓二も蓼科に山荘を持つ。
佐田啓二は蓼科から東京に向かう時に交通事故で亡くなるが、
当時の週刊誌に「一番安全な運転手後方の席でなぜ死亡事故にあったのか」との
記事があったのを不思議に覚えている。
また、1月7日の日経文化面に映画・文化史家の田中眞澄氏が
蓼科の小津安二郎について寄稿し、当時の蓼科日記公開に向けて
努力されているのを目にしていた。
茅野では、小津安二郎記念蓼科高原映画祭が毎年開催され、
昨年は佐田啓二の娘の中井貴恵の朗読があったと聞いている。

「秋日和」では、佐分利信が丸の内の大会社の重役という役回りだが、
いつも万年筆でひたすら書類を書いているだけで、
仕事の話は全くせず、
ここまで仕事の匂いを取り除いたビジネスマンの描写は、
新鮮で古き良き時代の余裕を感じることができた。

朝の薄っすらと降った雪が雨になり、
凍らないようにシャーベット状になった雪を
シャベルで除去する。
陽は、山の端に沈む寸前に雲から顔を出し、
森の木々の露を光らせて山の向うに姿を隠した。

写真は、「無藝荘」に掛けられている色紙。
「蓼科の 空気はうまい 水もうまい 酒もうまい ~小津安二郎日記より」
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