昭恵夫人への忖度か?岡山県の農村に「EV車50台」の謎 そこら中で燻る「第二の森友」問題
現代ビジネス 3/23(木) 10:01配信
昭恵夫人への忖度か?岡山県の農村に「EV車50台」の謎 そこら中で燻る「第二の森友」問題
写真:現代ビジネス
なぜこの農村が選ばれたのか?
「こんな田舎の田んぼに、『なんでトヨタが車を寄付してくれたんか』と思うたが、森友学園騒動を見て、なるほど『(安倍晋三首相夫人の)昭恵さんへの配慮か』と、得心が行きました」
こう感想を漏らすのは、岡山県北東部に位置する美作市の市議会関係者である。
美作市は、約2万7000人と県内で最も人口の少ない市であり、農業、林業が主な産業。1000年以上の歴史がある上山地区の棚田は8300枚もあり、日本を代表する田園風景だったが、多くが耕作放棄され、荒れ果てていた。
その棚田を、地域の産業復興、自然環境保全の観点から、都市からの移住者と地域住民と行政が協力し合って再生させようという試みが07年から始まり、NPO法人「英田上山棚田団」が活動を始めた。
山口県下関市に「昭恵農場」を持ち、田植えや稲刈りなど農作業を行っている昭恵夫人は、この運動に共感、2013年2月、初めて上山を訪れて、地域農業復活の為に一緒に活動することになった。棚田団の名誉顧問にも就き、15年3月には、上山地区の活性化や美作市の知名度向上に尽力したということで、美作市から功労表彰された。
その首相夫人が支援する棚田に、現在、1人乗りで小回りが利くトヨタグループの超小型EV(電気自動車)車の「コムス」が導入され、走り回っている。助成しているのは、モビリティ社会の実現とモビリティ格差の解消に貢献することを目的に設置されたトヨタ・モビリティ基金(TM基金)である。
TM基金は、14年8月の設立以来、タイやベトナムで交通渋滞緩和に関するプロジェクトに助成、15年12月、国内では初めて美作市の「上山集楽みんなのモビリティプロジェクト」に助成することになった。
助成先は棚田団とみんなの集落研究所。助成期間は約4年間で助成金額は2億2000万円。中山間地域の移動の仕組みを構築し、最大で50台のコムスを導入、カーシェアリングの要領で、住民が日常生活、農作業の「足」として利用する。
棚田の再生、農村の再構築、それを実現するための住民・農民の「足」の確保――。誰も反対することはない「良いプロジェクト」であり「望ましい助成」である。ただ、それがなぜ美作市上山地区だったのか。
TM基金は、「広くヒヤリングを行い、助成テーマを探すなかで、みんなの集落研究所の紹介を受け、上山地区の棚田の復活に取り組む英田上山棚田団の活動支援に至った」と、答えるものの、全国に数ある「過疎の村の再生事業」のなかで、なぜ上山地区か、という疑問を解消するに至らない。
冒頭の市議会関係者が続ける。
「結局、首相夫人の名前が有効だったん違うか。昭恵さんが、トヨタに頼んだかどうかは知らん。ただ、そんなことはせんでも、『首相夫人が力を入れているんやから』と、配慮するもんでしょう。森友学園で国有地が格安で払い下げられたり、小学校に認可が下りたりしたんと同じ理屈じゃないかと思う」
TM基金は否定する。私は質問書を送り、「棚田団への選考過程で、政治家や官僚からの推薦、支援、口利きはなかったか」、及び「安倍昭恵夫人が名誉顧問を務めていることに関し、なんらかの配慮はなかったか」という二点を質したが、「一切ございませんでした」と答えた。
棚田団も同様で、助成に関しては「07年から続けてきた棚田再生の活動が世間に認められた」ことを強調、「TM基金への申請に関して安倍昭恵さんのお名前は一切だしておりません」と、付け加えた。
おそらく、ここに森友学園騒動を巡る問題の根が潜んでいる。
「最強の私人」であるがゆえに
森友学園は、籠池泰典理事長夫妻の強烈なキャラクターに加え、財務省や大阪府の官僚の不可解な対応、8億円の国有地値引き、三つの工事金額、補助金不正受給などが絡み、事件化は確実な情勢で、「のどかな過疎地の移動手段の助成」とは、一見、比較にならない。
しかし、安倍首相の一強政治が続く間に、行政の官僚は、首相夫妻に関するものなら、私事に至るまで「配慮」や「忖度」を働かせてきた、ということだろう。昭恵夫人は、フェイスブックで16年2月、石破茂地方創生担当大臣が美作市を訪れ、コムスに乗っている写真をアップしている。そうした夫人の持つ“政治力”が、助成につながったという想像が生まれるのも無理からぬところだ。
また、昭恵夫人のホームページには、農業、福祉、教育、原発、災害復興などでの様々な活動が紹介されており、「名誉校長」「名誉顧問」など、選考過程に組織決定が要らず、互いの了解だけで名乗ることが許される「名誉」がつくものが数十に及ぶという。
その活動の基準は、昭恵夫人にとって「正しい」ものである。スピリチュアル界の有名人である故・江本勝氏の影響を受けたという昭恵夫人は、物質欲に縁のない高い精神性を持つものに傾倒。だから農業は有機農業であり、絆を大切にする農村の秩序を重んじ、反原発、反防潮堤、医療用大麻に理解を示す。
そこに思想性があるわけではない。そのため、森友学園の園児たちが、教育勅語をそらんじ、礼儀正しく挨拶し、「安倍首相バンザイ」と両手を挙げる光景が微笑ましく、名誉校長を引き受けてしまった。
その天衣無縫の振る舞いが、「家庭内野党」として安倍政権の人気を底支えしてきたのだから、今回の騒動は、「私人」として放置してきた安倍首相の責任でもある。
「命じられてやる」のは良い役人ではない。察知して先回りし、作為と取られない形で忖度し、有力政治家の意を満たすのが、優秀な良い役人である。今回の森友学園はそうした忖度が生んだ事件といっていい。
そして、「最強の私人」である昭恵夫人が、あまりに活発に活動するので、規模の大小、質の善し悪しを問わなければ、「第二の森友学園」を疑わせる事例は、いくつでも転がっているのだ。
現代ビジネス 3/23(木) 10:01配信
昭恵夫人への忖度か?岡山県の農村に「EV車50台」の謎 そこら中で燻る「第二の森友」問題
写真:現代ビジネス
なぜこの農村が選ばれたのか?
「こんな田舎の田んぼに、『なんでトヨタが車を寄付してくれたんか』と思うたが、森友学園騒動を見て、なるほど『(安倍晋三首相夫人の)昭恵さんへの配慮か』と、得心が行きました」
こう感想を漏らすのは、岡山県北東部に位置する美作市の市議会関係者である。
美作市は、約2万7000人と県内で最も人口の少ない市であり、農業、林業が主な産業。1000年以上の歴史がある上山地区の棚田は8300枚もあり、日本を代表する田園風景だったが、多くが耕作放棄され、荒れ果てていた。
その棚田を、地域の産業復興、自然環境保全の観点から、都市からの移住者と地域住民と行政が協力し合って再生させようという試みが07年から始まり、NPO法人「英田上山棚田団」が活動を始めた。
山口県下関市に「昭恵農場」を持ち、田植えや稲刈りなど農作業を行っている昭恵夫人は、この運動に共感、2013年2月、初めて上山を訪れて、地域農業復活の為に一緒に活動することになった。棚田団の名誉顧問にも就き、15年3月には、上山地区の活性化や美作市の知名度向上に尽力したということで、美作市から功労表彰された。
その首相夫人が支援する棚田に、現在、1人乗りで小回りが利くトヨタグループの超小型EV(電気自動車)車の「コムス」が導入され、走り回っている。助成しているのは、モビリティ社会の実現とモビリティ格差の解消に貢献することを目的に設置されたトヨタ・モビリティ基金(TM基金)である。
TM基金は、14年8月の設立以来、タイやベトナムで交通渋滞緩和に関するプロジェクトに助成、15年12月、国内では初めて美作市の「上山集楽みんなのモビリティプロジェクト」に助成することになった。
助成先は棚田団とみんなの集落研究所。助成期間は約4年間で助成金額は2億2000万円。中山間地域の移動の仕組みを構築し、最大で50台のコムスを導入、カーシェアリングの要領で、住民が日常生活、農作業の「足」として利用する。
棚田の再生、農村の再構築、それを実現するための住民・農民の「足」の確保――。誰も反対することはない「良いプロジェクト」であり「望ましい助成」である。ただ、それがなぜ美作市上山地区だったのか。
TM基金は、「広くヒヤリングを行い、助成テーマを探すなかで、みんなの集落研究所の紹介を受け、上山地区の棚田の復活に取り組む英田上山棚田団の活動支援に至った」と、答えるものの、全国に数ある「過疎の村の再生事業」のなかで、なぜ上山地区か、という疑問を解消するに至らない。
冒頭の市議会関係者が続ける。
「結局、首相夫人の名前が有効だったん違うか。昭恵さんが、トヨタに頼んだかどうかは知らん。ただ、そんなことはせんでも、『首相夫人が力を入れているんやから』と、配慮するもんでしょう。森友学園で国有地が格安で払い下げられたり、小学校に認可が下りたりしたんと同じ理屈じゃないかと思う」
TM基金は否定する。私は質問書を送り、「棚田団への選考過程で、政治家や官僚からの推薦、支援、口利きはなかったか」、及び「安倍昭恵夫人が名誉顧問を務めていることに関し、なんらかの配慮はなかったか」という二点を質したが、「一切ございませんでした」と答えた。
棚田団も同様で、助成に関しては「07年から続けてきた棚田再生の活動が世間に認められた」ことを強調、「TM基金への申請に関して安倍昭恵さんのお名前は一切だしておりません」と、付け加えた。
おそらく、ここに森友学園騒動を巡る問題の根が潜んでいる。
「最強の私人」であるがゆえに
森友学園は、籠池泰典理事長夫妻の強烈なキャラクターに加え、財務省や大阪府の官僚の不可解な対応、8億円の国有地値引き、三つの工事金額、補助金不正受給などが絡み、事件化は確実な情勢で、「のどかな過疎地の移動手段の助成」とは、一見、比較にならない。
しかし、安倍首相の一強政治が続く間に、行政の官僚は、首相夫妻に関するものなら、私事に至るまで「配慮」や「忖度」を働かせてきた、ということだろう。昭恵夫人は、フェイスブックで16年2月、石破茂地方創生担当大臣が美作市を訪れ、コムスに乗っている写真をアップしている。そうした夫人の持つ“政治力”が、助成につながったという想像が生まれるのも無理からぬところだ。
また、昭恵夫人のホームページには、農業、福祉、教育、原発、災害復興などでの様々な活動が紹介されており、「名誉校長」「名誉顧問」など、選考過程に組織決定が要らず、互いの了解だけで名乗ることが許される「名誉」がつくものが数十に及ぶという。
その活動の基準は、昭恵夫人にとって「正しい」ものである。スピリチュアル界の有名人である故・江本勝氏の影響を受けたという昭恵夫人は、物質欲に縁のない高い精神性を持つものに傾倒。だから農業は有機農業であり、絆を大切にする農村の秩序を重んじ、反原発、反防潮堤、医療用大麻に理解を示す。
そこに思想性があるわけではない。そのため、森友学園の園児たちが、教育勅語をそらんじ、礼儀正しく挨拶し、「安倍首相バンザイ」と両手を挙げる光景が微笑ましく、名誉校長を引き受けてしまった。
その天衣無縫の振る舞いが、「家庭内野党」として安倍政権の人気を底支えしてきたのだから、今回の騒動は、「私人」として放置してきた安倍首相の責任でもある。
「命じられてやる」のは良い役人ではない。察知して先回りし、作為と取られない形で忖度し、有力政治家の意を満たすのが、優秀な良い役人である。今回の森友学園はそうした忖度が生んだ事件といっていい。
そして、「最強の私人」である昭恵夫人が、あまりに活発に活動するので、規模の大小、質の善し悪しを問わなければ、「第二の森友学園」を疑わせる事例は、いくつでも転がっているのだ。