「地球温暖化はでっち上げ」か 気候変動繰り返した46億年
6/13(火) 12:41配信 北海道新聞
「地球温暖化はでっち上げ」か 気候変動繰り返した46億年
「予測のつかない気候の不安定さが最も怖い」と語る中川毅教授
■気候変動の経過を振り返ると
「地球温暖化はでっち上げ」と主張してきたトランプ米大統領が、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したことに対し、世界各国から反発の声が上がった。道内でも過去100年で平均気温が1・59度上昇し、21世紀末にはさらに3度上がると見込まれる。対策は待ったなしに思えるが、地球の46億年の歴史には、南極、北極に氷がない暖かな時代も、赤道付近まで氷に覆われていた時代もあった。気候変動の経過を振り返ると、別の地球の姿が見えてくる。
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■10万年単位で十数度上下 現代 例外的に気温安定
立命館大古気候学研究センター(滋賀県草津市)。国内の研究機関で古気候学の看板を掲げるのはここだけだ。センター長の中川毅教授(古気候学)は「地球は10万年単位で暖かくなったり、寒くなったりしている。地球の公転軌道が楕円(だえん)で、時代によって太陽との距離が変わるからだ。気温差は10万年単位で十数度あり、地球は放っておいても気候が変動する」と語る。
2億7千万年前から2億5千万年前は、温暖化と言われる現在より10度近く平均気温が高かった。これは東京がマニラ、モスクワが東京の気温になるのに匹敵する。
グリーンランドでの調査では1万4700年前、数年の間に7度ほど気温が上昇したことが分かっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が21世紀末までの100年で、対策を何も講じなかった場合に最大5度上昇すると予測した数値を上回る。人間の活動による影響はなかったが、海流や風向きの急激な変化で気候変動が起きたとみられる。
「過去を見れば気温の上下変動が激しかったことの方が多く、現代は極めて例外的に気候が安定している」(中川教授)
■二酸化炭素やメタン 「氷期」到来防ぐ?
地球温暖化の原因はこれまで、工業化に伴う二酸化炭素などの排出が大きいとされてきた。ところが、米バージニア大のウィリアム・ラディマン教授(海洋地質学)は2005年、二酸化炭素は8千年前、温室効果が高いメタンガスは5千年前から増加しているとの学説を打ち出した。
二酸化炭素増加はヨーロッパ人が木を大量に伐採したから、メタンガスはアジアで始まった稲作の田んぼが発生源とした。人間の経済活動がなかったら、氷期が到来していたと推測し、学界に波紋を広げた。
中川教授によると、温暖化は植物が成長し、光合成が活発になることで二酸化炭素が吸収され、気温の上昇にブレーキがかかる。ところが、寒冷化は雪氷が太陽エネルギーを反射してはね返すことで、いっそう寒くなり、暴走する傾向がある。
今後1万年は氷は増えないというシミュレーションもあるが、仮にそうなったとしても中川教授は「これを地球温暖化で困ったと考えるか、氷河期がこないでよかったと考えるかは科学ではなく、哲学の問題」と話す。
火山の噴火も気候変動の要因となる。大気中に放出された大量のちりが雲をつくり、太陽光を反射するからだ。記録的低温となり、コメ不足を引き起こした1993年の日本の冷夏は、91年に起きたピナツボ火山(フィリピン)によるものと後に判明した。
■太陽活動低下期へ 不安定さ増す気候
地球の気候は今後、どうなるのか。中川教授は「温室効果ガスは、たとえ今から排出を削減したとしてもしばらく増え続ける。一方、太陽は21世紀、地球を冷やす方向に作用するだろう」と予測する。太陽活動は短期では11年程度、長期では210年程度の間隔で変動しており、今後は低下するとみられている。過去の太陽活動低下期には、現在凍らない英国のテムズ川が凍結し、それを示す絵が残っている。日本でも飢饉(ききん)が頻発した。
「過去100年は太陽と人間が地球を暖めてきたが、今後の100年は活動が低下する太陽と人間の活動との綱引きになる。こういう時代は不安定な気候になる可能性が大きい。最も怖いのは予測のつかない気候の不安定さだ」。中川教授はこう懸念する。
<略歴> なかがわ・たけし 1968年東京都生まれ。京都大理学部卒。英ニューカッスル大教授などを経て、2014年から現職。著書に「人類と気候の10万年史」「時を刻む湖」など。(報道センター編集委員 荻野貴生)
6/13(火) 12:41配信 北海道新聞
「地球温暖化はでっち上げ」か 気候変動繰り返した46億年
「予測のつかない気候の不安定さが最も怖い」と語る中川毅教授
■気候変動の経過を振り返ると
「地球温暖化はでっち上げ」と主張してきたトランプ米大統領が、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したことに対し、世界各国から反発の声が上がった。道内でも過去100年で平均気温が1・59度上昇し、21世紀末にはさらに3度上がると見込まれる。対策は待ったなしに思えるが、地球の46億年の歴史には、南極、北極に氷がない暖かな時代も、赤道付近まで氷に覆われていた時代もあった。気候変動の経過を振り返ると、別の地球の姿が見えてくる。
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■10万年単位で十数度上下 現代 例外的に気温安定
立命館大古気候学研究センター(滋賀県草津市)。国内の研究機関で古気候学の看板を掲げるのはここだけだ。センター長の中川毅教授(古気候学)は「地球は10万年単位で暖かくなったり、寒くなったりしている。地球の公転軌道が楕円(だえん)で、時代によって太陽との距離が変わるからだ。気温差は10万年単位で十数度あり、地球は放っておいても気候が変動する」と語る。
2億7千万年前から2億5千万年前は、温暖化と言われる現在より10度近く平均気温が高かった。これは東京がマニラ、モスクワが東京の気温になるのに匹敵する。
グリーンランドでの調査では1万4700年前、数年の間に7度ほど気温が上昇したことが分かっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が21世紀末までの100年で、対策を何も講じなかった場合に最大5度上昇すると予測した数値を上回る。人間の活動による影響はなかったが、海流や風向きの急激な変化で気候変動が起きたとみられる。
「過去を見れば気温の上下変動が激しかったことの方が多く、現代は極めて例外的に気候が安定している」(中川教授)
■二酸化炭素やメタン 「氷期」到来防ぐ?
地球温暖化の原因はこれまで、工業化に伴う二酸化炭素などの排出が大きいとされてきた。ところが、米バージニア大のウィリアム・ラディマン教授(海洋地質学)は2005年、二酸化炭素は8千年前、温室効果が高いメタンガスは5千年前から増加しているとの学説を打ち出した。
二酸化炭素増加はヨーロッパ人が木を大量に伐採したから、メタンガスはアジアで始まった稲作の田んぼが発生源とした。人間の経済活動がなかったら、氷期が到来していたと推測し、学界に波紋を広げた。
中川教授によると、温暖化は植物が成長し、光合成が活発になることで二酸化炭素が吸収され、気温の上昇にブレーキがかかる。ところが、寒冷化は雪氷が太陽エネルギーを反射してはね返すことで、いっそう寒くなり、暴走する傾向がある。
今後1万年は氷は増えないというシミュレーションもあるが、仮にそうなったとしても中川教授は「これを地球温暖化で困ったと考えるか、氷河期がこないでよかったと考えるかは科学ではなく、哲学の問題」と話す。
火山の噴火も気候変動の要因となる。大気中に放出された大量のちりが雲をつくり、太陽光を反射するからだ。記録的低温となり、コメ不足を引き起こした1993年の日本の冷夏は、91年に起きたピナツボ火山(フィリピン)によるものと後に判明した。
■太陽活動低下期へ 不安定さ増す気候
地球の気候は今後、どうなるのか。中川教授は「温室効果ガスは、たとえ今から排出を削減したとしてもしばらく増え続ける。一方、太陽は21世紀、地球を冷やす方向に作用するだろう」と予測する。太陽活動は短期では11年程度、長期では210年程度の間隔で変動しており、今後は低下するとみられている。過去の太陽活動低下期には、現在凍らない英国のテムズ川が凍結し、それを示す絵が残っている。日本でも飢饉(ききん)が頻発した。
「過去100年は太陽と人間が地球を暖めてきたが、今後の100年は活動が低下する太陽と人間の活動との綱引きになる。こういう時代は不安定な気候になる可能性が大きい。最も怖いのは予測のつかない気候の不安定さだ」。中川教授はこう懸念する。
<略歴> なかがわ・たけし 1968年東京都生まれ。京都大理学部卒。英ニューカッスル大教授などを経て、2014年から現職。著書に「人類と気候の10万年史」「時を刻む湖」など。(報道センター編集委員 荻野貴生)