ローマで映画監督として成功したサルバトーレが、幼い頃慕っていた映画技師アルフレードの訃報を聞き、30年ぶりに故郷に帰ってくる。シチリアの小さな村にある映画館<パラダイス>には、トトと呼ばれていた少年時代、青年時代の思い出が詰まっていた。そして、サルバトーレが受け取ったアルフレードの形見には映画への溢れるような愛が詰まっていた……。
初恋の女性エレナと30年ぶりに再会して、二人はアルフレードのウソによって重なり合わない人生をたどったことに気づきます。サルバトーレは「アルフレードのヤツ!」と腹を立てますが、二人の子を持つエレナは、「私と一緒になっていたら、あなたは映画作りができなかった」(映画界での成功はなかったのよ)「アルフレードはあなたの一番の理解者よ」(憎んじゃあだめよ)と諭します。しかし、数々の映画賞を獲得し、映画界に名を知らしめてきたにも関わらず、アルフレードには、エレナの言葉は虚ろに響くだけでした。
ローマに帰った傷心のサルバトーレは、一人映写室でアルフレードの形見であるフィルムを見始めました。スクリーンに映し出されたのは、アルフレードが昔、カトリック神父の検閲を受けてカットしてきたキスシーンや熱い抱擁シーンの連続でした。クーパーやチャップリン、フリン、ゲーブル、ギャバン達の素晴らしいキスシーンのオンパレード。サルバトーレはいつの間にか身を乗り出して見入っているうちに、瞳から涙がこぼれ落ちました。その輝くような涙は、人生の虚しさを受けとめる青春への惜別の涙であり、アルフレードからの愛のメッセージを受け取った証でもありました……。