楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

ポスドク地獄(2)

2007-03-11 02:02:08 | 科学
今日、学会で終日、会議があり、最近の学生の就職問題などが話された。
学会では、力を入れて今後、この問題に取り組むことを確認した。
先にポスドク就職問題を記した。最近は博士課程へ進む時に、その後の進路に関する不透明さが大きな妨げとなり、多くの有能な若者が修士課程で社会へ出て行く現状がどこでも起きていることが話された。特に有能であればあれるほど先を見通す能力があるので出て行く。そして、「残るのは残念ながらーー」、などということを話す人もいる。
「科学のおもしろさ」への夢だけでは「飯は食えない」からである。
現実に迫る生活への恐怖が強いのである。
その彼らを励ますには、未来が見えなくてはならない。

一方で経済の上向きと資源エネルギー業界の好景気を反映して、速攻で使える高度な人材を急速に求めている現状も話された。
昨年から私のところに、いままでになく学位を持っていて、かつある種の能力の有る人材を求める問い合わせが相次いだ。これまでになかったことだ。団塊世代の定年が民間や旧国立研究機関では始まっているからである。これからもっと強まるだろう。

大学では定年が63歳のところが圧倒的に多いので、それらの団塊年齢の定年が一斉に開始されるのは2~3年後である。そこに研究関係のポスト募集の大きな山場が来るだろう。その時に求められる人材は恐らく3種類に分けられる。

1つ目は伝統的な基礎的な教育をしっかりと据えるための人材である。研究の最先端を追うために、基礎的ではあるが欠かすことの出来ない分野が実は置き去りにされてきた。そのことを今、団塊がやめていくにあたって多くのところが気がついたのである。そこが狙い目。
2つ目は、当然、最先端である。これはサイエンスの重点がどこへ向かっているかを見通すことである。今の焦点は誰にでも見える。だからそこではない。見通すべきは5年後、10年後の焦点である。どこでもそれを見通して人材を求める。やっている研究は今が焦点ではなく、ほんとに未来のための科学になっている?

しかし、以上の人材はいわばパーツである。

3つ目。地球科学は総合科学であるから、リーダのための人材には、あらゆる方法を俯瞰でき、総合力によって見通す能力を求められる。そして、リーダーとは人間の集団を引っ張るのであるからその人間性と教育能力は極めて重要だ。独りよがりはリーダ、教育者には向かない。自分を抑制でいない「切れる人」、悪口や愚痴の多すぎる人は敬遠される。パーツに終わる。

経験の少ないポスドクは1、2であろう。そして経験を積んだ研究者(高年齢ポスドクや中堅)に問われるのは3つ目である。

院生諸君には、研究に没頭するとともに、未来への展望は以上の基本的フレームの中で、具体的展望を見据えることが必要であろう。ポスドクで年齢を積み重ねた諸君は3つ目を考え自己を磨くことも大事である。
つづく。

コメント
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