楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

かるがもの遊ぶ北のキャンパス

2007-05-15 02:44:34 | 自然
札幌は冷たい雨の降る日曜日であった。
午後の講演の前に新緑の芽吹き始める北大のキャンパスを歩いた。
正門を入ると、東京では見られない淡いピンクのつつじが目に飛び込んで来た。
久々のこのキャンパスの自然模様に期待が膨らむ。


理学部と工学部の間には、整備された池が広がる。
遠い昔、この池は整備されないままの水たまりであったが、すばらしい場所へと変貌している。
そして、中谷宇吉郎の「人工雪結晶誕生の地」の碑が横にある。
その横にそっと静かに北大のシンボルの花、エンレイソウが咲いている。


こんなにもまじまじと見るのは久しぶりだ。
なんとも素朴で優しい気持ちになる。
なにやら遠くから寮歌が聞こえてきそうだ。

葉とともに花が出る北海道の桜。
しだれ桜もある。
2ヶ月も季節が逆戻りした感ではあるが、何か風景が違う。
桜は、東京のように一斉に「咲くぞ!」とはなっていないのである。
そこに1本、ここに1本とある。しかも新緑と同居する。
北海道の醍醐味はむしろこの一斉新緑だ。
関西は常緑が多すぎて新緑の感動的春がない。
関東はそこそこ新緑はあるが、春の風情は桜に飲み込まれる。
北海道の春は、この新緑こそ最大の売りである。
灰色であった山が、淡い緑となり、瞬く間にうっそうとした濃緑へと飛躍する。
そして短い夏となるのである。

などと思いながら歩いていると、「ぐぁぐぁ」と声が聞こえて来た。
<わ!かもの親子だ!>
さっき生まれたばかりではないかと思うほど小さい。それが
ちょろちょろと親の後をついて回る。


<なんてすばらしいところだ!>
と思わず立ち止まり眺めてしまった。
研究に疲れた時、このような散策・思索の場を持つキャンパスが
大学というものだろう、とつくづく思う。

そして氷雨の降る中を中央ローンへ回った。
この広大なローンはエルムと白樺の屋根ともいえる大木とともにある。
そして、中央の窪地をせせらぎが流れる。
「この流れにも、いにしえの昔、鮭が上って来たものですよ」
と言った、もう30年も前の教授の声が聞こえてくるようであった。

このような大自然に抱かれた北の学生達の心意気は、
「少年よ、大志を抱け!」という、クラークのアジテーションに奮い立ったのだろう。
クラーク像のうしろにある白樺林は、
今は亡き三浦綾子の小説「氷点」に登場した。
私は学生時代<これがこの小説の舞台か!>とここにたたずみ、
ふと主人公『陽子』の幻影を見る思いにひったことを思い出していた。


30年の時の流れが走馬灯である。

農学部へと続く、芝生には一面のタンポポが咲いている。
雨に濡れ一層あでやかである。
人の少ない日曜日、我が世界を謳歌するように咲き誇っている。


忙しさの中の(飲み過ぎなだけ?)一瞬のリフレッシュ。
溢れるおいしい空気を目一杯吸い込んで、講演会場へむかった。

そして、「この科学の未来」というような講演を1時間半、懇親会、2次会、3次会。
深夜3時まで!
ふー!
でも今日もいい出会いがたくさん!なつかしい顔もたくさん。
ありがとう一期一会。
(月曜日/機内にて)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする