第三世代の学問―「地球学」の提唱 (1977年)竹内 均,上山 春平中央公論社このアイテムの詳細を見る |
この本は、先日歯医者に行った時、その横の古本屋の店先で100円で売っていたので手にした。すでに30年前の本である。
中身はほとんどが上山春平氏の演説。「地球学」とのことばはあちこちで聞くがこのあたりが原点か?ただ、竹内氏の著作はいいことをいっているのであるが、少々「俺が俺が」がつよいので差し引かねばならないのであるが。
彼が果たした地球科学の普及には絶大なものがあったのは間違いない。
地球の歴史の研究の主舞台は地質学であったと思っていたが、それも地球物理学であるといっていってのけていることは驚きであるが、当時の学界事情を理解する者には、そういいたいことも分かる気はする。が、もっと虚心で地球科学の歴史は眺めたいものである。
最後に対談の終わったあとの、帰納と演繹を巡る往復書簡による議論は、どちらにも私は賛成できない。
仮説に対する位置づけがまずい。今西錦司京都学派に肩入れしすぎる上山氏の思いに引きずられている。
帰納と演繹を転がす科学理論で十分である。往復書簡に見る混乱がそのことを示している。
それよりも、この本のすぐれた点は、30年前、地球環境もまだ深刻になっていない時代に、分野を超えて地球を理解することがこれから大きな課題だ、生命に関わることが大きく浮上するという予見である。