災害時、エコカーを電源に 医療に家電にフル活用
2015年12月6日18時48分
ガソリンが要らないエコカーを、電気が止まった被災地などでの新たなエネルギー源にする試みが広がっている。災害時に不足しがちなガソリンはなるべく移動のために使いつつ、燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)の電気を医療機器や家電に回すなど車をフル活用するアイデアだ。
今秋の東京モーターショー。ホンダは、来年3月からリース販売する新型のFCV「クラリティ フューエル セル」を、開発したばかりの直方体の外部給電器「パワーエクスポーター9000」につなぐ実演をした。
FCVは、水素と空気中の酸素を反応させて電気をつくって走る。FCVで避難所まで向かい、FCVと外部給電器をつなげば暖房機器や照明用の電気を供給できる。1台で供給できる電力量は一般家庭の7日分。「9000」は一般の自家発電機より波形の整った電気を送ることができ、繊細な医療機器なども正確に動かせるという。来春に売り出す。
トヨタ自動車も、昨年末に市販したFCV「ミライ」でつくった電気を、外部給電器を介して家庭の電力として使えるようにした。モーターショーでは、車に蓄えた電気を別のエコカーなどに融通できる試作車「FCVプラス」も公開した。
電線が寸断された被災地では、電力の復旧に平均3日かかるとされる。その間に使われる自家発電機の主な燃料は自動車の燃料と同じガソリンや軽油だが、東日本大震災では製油所の被災も重なり、ガソリンなどの不足が深刻になった。
ガソリン車ではなく、EVで被災地の被害状況を調べる取り組みも始まった。
東北大災害科学国際研究所は、日産自動車から無償貸与されたミニバンEV「e―NV200」2台を、災害が起きたときの被害調査に使う予定だ。
同研究所は11月、地震で電気やガスが途絶え、非常用電源も使えない状況を想定した災害訓練を行った。ミニバンEV2台の電力で、パソコン4台やプロジェクターなどを動かし、被害規模の情報を集めて自治体向けに送るといった作業ができることを確認した。柴山明寛准教授は「震災の教訓を生かしてEVを有効活用したい」と話す。
■ディーゼル車の活用も
FCVやEVを持たないメーカーも工夫を凝らす。
マツダは10月に東京であった見本市「危機管理産業展」に初出展し、ディーゼル車の活用策を提案した。燃料の軽油は、一般車に積んで運ぶ場合、規制が厳しいガソリンより多くの量を一度に輸送できる。被災地以外から大量の軽油を運び込めば、ディーゼル車がガソリン車よりも「長もち」するというわけだ。マツダの小型車「デミオ」の場合、ドラム缶5本の軽油で10台を40日間稼働させられるとアピールした