中国・北京市は8日、深刻な大気汚染に備えて初めて出した最高レベルの「赤色警報」に基づき、約半数の車の走行を禁じたり、学校を休校にしたりする大規模な対策を講じた。微小粒子状物質PM2・5問題が市民生活に直接、大きな影響を与える局面は今後も続きそうだ。

 8日朝、北京市中心部では白い霧にかすむ高層ビルの下を、マスク姿の人々が足早に職場を目指した。いつも渋滞する幹線道路はスムーズに流れ、マイカー通勤者が使う駐車場はガラガラ。普段は見送りの保護者でごった返す小学校も閑散としていた。

 7日夕、市政府は8日から10日正午まで深刻な大気汚染が続くとして、初の「赤色警報」を出した。8日夕まで、市内のPM2・5の1立方メートル当たりの平均濃度は日本の基準値の約7倍の250マイクログラム前後を推移した。

 ログイン前の続き市内全域で車両のナンバー規制が敷かれ、8日は末尾が偶数の車しか走れなくなった。市教委は小中学校や幼稚園に休校・休園するよう通知。400人余りの児童・生徒が通う北京日本人学校も8~10日を臨時休校にした。

 汚染の原因ガスを出す北京市や周辺の工場は操業停止になったほか、屋外の工事もすべて止められた。

 3歳の娘を持つ会社員、張蕊さん(32)は「娘の幼稚園は希望する家庭の園児を受け入れてくれたので助かったが、娘を祖母といっしょに地方に避難させようかと思っている」と話した。

 路線バスや地下鉄が増便されたり、日系を含む一部企業が在宅勤務を認めたりしたことで目立った混乱はなかったものの、14~16日も再び汚染がひどくなるとの予報があり、今後、市民への制約が繰り返される懸念もある。

 北京市が3月に定めた現行の「応急対策」に基づき、赤色警報は市の定める指標で3日以上、深刻な汚染が続く場合に出される。濃度だけでなく、汚染の持続時間が重視される仕組みだ。

 先週、北京はPM2・5の濃度が600マイクログラムを超え、一部地域で千マイクログラムに近づいたが2番目の警報レベルにとどまり、市民から疑問の声が相次いだ。政府は環境対策が進んでいない千以上の工場を操業停止にするなど国を挙げて対策を進めているが、汚染の原因を巡っても専門家の間で議論が続いているのが実情だ。未曽有の事態に、対策は後手に回っている。