写真・図版春節を祝う垂れ幕を掲げ、アジアからの観光客を歓迎するターミナル＝５日午前、関西空港、遠藤真梨撮影

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　中国などから観光客が押し寄せる春節シーズンが始まった。関西空港は例年より利用者が増えると見込み、受け入れ態勢を強化した。観光客は大阪市周辺にもあふれ出しており、自治体は「特需」を呼び込もうとＰＲに懸命だ。一方、中国経済が減速する中、業界は「爆買い後」を模索し始めている。

　関空では１年で最も混雑する１０日間が始まった。

　「恭賀新春」の赤い垂れ幕が掲げられた第１ターミナル（Ｔ１）。５日朝、台湾から到着した銀行員の温芳銘さん（５２）は「日本の文化、環境の良さ、食べ物が好き。忍者の博物館を楽しみにしている」と話した。来日は１０回以上。今回は家族４人で三重県や和歌山県などを５日間で巡る。

　ログイン前の続き新関西国際空港会社は５～１４日の国際線旅客を５４万９２００人と見込む。１日あたり５万４９００人は過去最多だった昨年のお盆期間を約１４００人上回る。

　Ｔ１南入国審査場では４日から五つの新ブースが動き始めた。審査官２人が並ぶ従来型から形が変わり、ブース数も１８から２１に。北の審査場も順次増える。担当者は「春節に間に合った。待ち時間を短くしたい」。

　昨年の関空の最長審査待ち時間（平均値）は３８分。成田（１８分）や羽田（２４分）、中部（２６分）に比べて長く、「時短」が急務だった。

　到着客の最初の印象を作るのが入国審査。新型ブースはサクラをイメージしたピンクで、殺風景だった審査場に彩りも添える。

　到着口を出た旅客が水筒を手に列を作る一角があった。新関空会社が設置した給湯器。お湯や温かい茶を好む中華圏の利用者に配慮し、昨秋から７カ所に常設した。また、同社は７日以降、ゴミ回収を１日１５回から２５回に、トイレ清掃を６回から約１２回に増やすなど、クリーン作戦も展開する。

　対岸の大阪府泉佐野市には初めての春節に臨むホテルもある。泉佐野センタービル内の「泉佐野センターホテル」だ。空室が目立っていたオフィスビルを買い取った大阪の不動産会社が大改修し、今年１月、本格オープンさせた。

　旅行会社と提携して中国や台湾のツアー客を受け入れ、満室状態が続く。植田豊社長（５１）は「中国のお客様は口コミを重視するので、質が何より大切。地域活性化にもつなげたい」。フロントには、春節に向けた華やかな飾りを施した。

■兵庫・尼崎にも宿泊

　集客への期待は、郊外の街にも広がっている。

　「大阪で宿が取れない外国人客が流れてきている」。兵庫県尼崎市の担当者は最近、宿泊業者からそう聞くことが増えた。市は、中国語など５言語のガイドブックを阪神電鉄などと共同で１０万部作り、１日に市内の宿や駅に置いた。

　「大阪から７分で出会える本当のニッポン　知られざる下町尼（あま）へ」と誘い、「見てもよし、賭けてもよし　尼崎ドリームを勝ち取ろう」とボートレースを紹介。住宅街の銭湯も載せ、「タオルを湯船につけない」などの入り方も解説している。担当者は「せっかく泊まりに来てくれているので、市内のディープスポットを体験してほしい」。

　大阪府吹田市も、地下鉄御堂筋線・江坂駅周辺のホテルで宿泊客が増える傾向にある。市は昨秋に開業した大型商業施設「ＥＸＰＯＣＩＴＹ（エキスポシティ）」や太陽の塔、ビール工場見学も紹介する４カ国語のパンフレットを作製。東京の出版社が昨年末から海外５０都市で配ったフリーペーパー１５万部に挟み込んだ。

　担当者は「買い物が活発な都心部に対し、体験型の観光をアピールしたい」。ＥＸＰＯＣＩＴＹの運営業者も７～１３日、「外国人客を呼び込もう」と難波からの無料往復バスを１日８便運行する。

　大阪都心部の店の準備は万全だ。道頓堀周辺の２店が全国の売り上げ１、２位のディスカウント店「ドン・キホーテ」。６６６６円～８８８万円の６種類の福袋を１日に発売した。担当者は「まとめ買いしてもらうのが狙い」と話す。

　高島屋大阪店（大阪市中央区）は３日、ハローキティとドラえもんの両方をあしらった文房具やトートバッグなど約４００種類を扱う期間限定ショップを開いた。阪急うめだ本店では７～１３日、免税カウンターを１１席から１４席に増やし、臨時の通訳も置く。「真珠のアクセサリーや鉄瓶など中国人に人気の商品は目立つ展示にしました」（田渕紫織）

■文化も伝えたい

　旅行業者ら（正会員約１１３０社）でつくる日本旅行業協会は２日、外国人旅行客について「次のステージに向けた提言書」をまとめ、観光庁に提出した。リピーターを増やしたり、大都市以外の地域の魅力を増したりする必要がある、と訴える。

　矢嶋敏朗・広報室長（５３）は「買い物の経済効果ばかり注目されるが、重要なのは日本の良さや文化、人の親切さを伝え、『イメージが変わった。また来たい』と思ってもらうことではないか」と話す。（中川竜児）

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　〈春節〉　旧暦の元旦。中国本土や香港、台湾などでは爆竹を鳴らし、盛大に祝う。帰省する人も多く、前後は長期休暇になる。今年は８日が「元日」にあたり、中国の政府機関などは７～１３日が休み。企業の休暇はばらつきがある。